Dribs and Drabs

The author hereby agrees to cover each and every topic that caught his attention.

スイス再保険「海上保険およびエアライン保険における最近の動向を探る 」,『シグマ』2013/4

「最新の動向を探る」というタイトルながら,なかなか馴染みの薄いMAT(Marine, Aviation, and other Transit: 海上,航空およびその他運輸)保険についての基礎知識を概観できるのが嬉しいです。

【日本語版 】 「海上保険およびエアライン保険における最近の動向を探る 」
http://media.swissre.com/documents/sigma4_2013_jp.pdf

【英語版 】「Navigating recent developments in marine and airline insurance 」
http://media.swissre.com/documents/sigma+4_2013_en.pdf

抜粋
  • 2012年における海上と航空の保険料は合わせて約440億ドル。それは10年前のおよそ2倍の水準だが,世界の損害保険料の2.2%にすぎない。(海上保険で380億ドル,航空保険で60億ドル)
  • ロイズマーケットおよびロンドンに拠点を置く国際的な保険会社で,世界の海上および航空保険料の約20%を引き受けていると推測される。
  • シンガポールはアジアにおける海上保険の主要拠点として浮上中。
  • 大規模保険事故の頻度は減少。しかしマーケットのソフト化などにより,MAT保険の基本的な収益性は低いまま。
  • 一般的に輸送保険会社は,輸送する乗客・乗務員および貨物にかかわる事業あるいは専門会社に対してリスク補償を提供する商業用保険証券と,輸送手段の個人的使用から発生する損害に対して個人または企業を付保するレクリエーショナル保険を区別している。
  • 一般的な輸送カバーには,Hull(船舶・機体),Cargo(貨物),およびLiability(賠償責任)の3種類がある。
  • 通常,航空の機体保険および賠償責任保険契約は「オールリスク」保険の形式をとっている。同様に,最新の海上保険契約では,列挙危険ベースではなく「オールリスク」で引受けられるのが一般的である。
  • 一般的な海上保険のタイプとして,航海保険および期間保険(voyage and time policies),評価済(協定価額)保険および評価未済保険(valued and unvalued policies),包括予定保険およびオープン・カバー(floating policies and open cover)がある。
  • 貿易は信用状によって資金調達されることが多いが,無保険の貨物に融資しようとする金融業者はほぼ存在しない。
  • 最近になって,シンガポールインドネシアといった幾つかの市場における輸送保険の出再率が低下し,国内保険会社によるこの種のリスクに対する保有意欲の増加を示唆している。
  • プールとP&I組合は依然として重要。しかし,民間営利保険会社のリスク選好意欲が発達するにつれて,航空保険プールの重要性は減退。
  • 1980年代後半における海上保険の船舶損害率は,1つには船舶フリートの高齢化と質の低い操作基準に関連してクレームが上昇するという経緯があって急騰した。
  • 損害額の減少は,輸送機器防止装置の改善を軌を一にしている。
    • フライト100万回当りの死亡事故は,1996年には約3.0件だったのが,2012年には1.0件未満になるまで,減少を続けている。
    • 船舶の全損割合は,1996年には0.4%だったのが,2012年には0.15%未満になるまで,減少を続けている。
  • 長期間の損害実績と事業費を平均すると,海上保険とエアライン保険は依然として引受ベースで極めて僅かな収益しか生んでいない。
  • 航空事業においても,慢性貧血症のような収益性が,航空会社のリスク・マネージャーを一段と手強い交渉人に仕立てあげた。
  • 米国テロリズム危険防止法(TRIA)は,大きなエロ攻撃事件が発生した場合に連邦政府および保険業界が損害を分担することができるような官民リスク分担パートナーシップを確立させた。
  • 輸送手段における最新の進歩は,潜在的損害の評価と適切な保険料率の設定を一段と複雑なものにした。
  • 様々なリスクがますます相互に依存するようになり,同一事件から発生する大規模な集積損害に保険会社をさらす可能性がある。近頃のように損害事故頻度の減少が続くにしても,集積リスクの理解が乏しければ,想定外に多額な損害に遭遇する可能性がある。
  • 輸送保険における集積リスクには,以下のようなものがある。価値の集中(value concentrations),地理的な集中(geographical concentrations),保険契約者の集中(policyholder concentrations)。
  • 自然災害のエクスポージャーは輸送システムにおいて極めて重大であり,その理由は,特に暴風のエクスポージャーが主要港湾の近くで最も高くなることが多いからである。
  • ハリケーン・サンディは,5,000便以上の欠航を引き起こして世界の航空能力の9%に影響を及ぼした。2010年に発生したアイスランドエイヤフィヤトラヨークトル火山の噴火後に立ち上った火山灰雲によって,100,000便が欠航し乗客1,000万人に影響が及んだ。
  • 欧州大陸の多くの大手保険会社は,海上保険を顧客に対する重要なサービスであり,他の商品の販売促進に役立つと見ている。
  • MATリスクはほかの事業種目と無相関である傾向があり,海上保険の船舶損害率と世界の損害保険損害率との相関係数は0.1未満と推定され,航空機体・賠償責任保険損害率と世界の損害保険損害率との相関係数は0.3未満である。さらには,この分散効果が欧州の新しいソルベンシーIIの自己資本規制にしっかりと盛り込まれている。
  • 一部の海上保険会社は,海賊行為の脅威が増したことを契機に,海賊関連損害向けの新しい保険商品を提供している。
  • 輸送セクターは,サイバー・リスク,すなわち情報技術インフラの機能停止の可能性や誤作動,悪用に特に脆い可能性がある。
  • 商品イノベーションの可能性が豊富に存在するのは,再生可能エネルギーの利用に関する分野である。
  • 一部の再/保険会社は,ますます複雑化し相互依存するリスクをより正確に理解するために,公式のモデルを開発している。
  • 保険会社は,テール・リスク・エクスポージャーの評価のために,ロイズ市場で日常的に使用されている現実災害シナリオ(Realistic Disater Scenarios)のような一段と伝統的な手法で補完している。
  • より正確かつ安全なデータ追跡システムの設計が,テクノロジー企業と連携して進められている(例えば,CargoNet)。
    • CargoNetは,米国ベースのデータベース・情報共有システムであり,貨物の盗難防止と回収率向上を目的としている。
  • 自然大災害エクスポージャーの重要性を考えれば,精緻なモデル作成能力を有する再保険会社は輸送リスクの評価と引受けにおいて重要な役割を果たす。
  • 歴史が示しているのは,大規模な予想外の損害が単独の根本原因によってもたらされることはまれであり,むしろ,複数のしばしば関係のない諸要素の組み合わせによる結果であり,この結合が壊滅的な打撃を生み出すということである。
  • 重要なことは,保険会社がソフトウェアとデータ分析をさらに活用して,熟達したアンダーライターの専門知識を活用することである。経験の浅いアンダーライターが業界団体に参入し,重要な損害事故に関する業界の知識も薄れていることから,これが特に重要になってくるだろう。
  • 新興市場の発展は一次産品価格の上昇に寄与している。一次産品価格の上昇はまた,貨物の金額だけでなく船舶と航空機の修理コスト,製造コストも押し上げており,保険会社のエクスポージャーにも影響を与えている。
  • 新興国の都市化も,所得増加と相まって輸送需要を増大させている。都市化の程度は旅客空輸と高い相関関係にある。