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日本アクチュアリー会「グループ内再保険取引」,『会報別冊』第268号

本会報別冊は、国際アクチュアリー会(IAA)の保険監督委員会再保険小委員会が作成し、保険監督委員会が承認した文書である ”Intra-Group Reinsurance Transactions” を、保険監督部会のメンバーが訳したものです。

 

本文書は、保険グループ内での再保険の利用に関し、その目的や種類を示すとともに、再保険取引を行うに際してガバナンスや契約締結判断の上から留意すべき論点等について考察を行ったものです。グループ内再保険の一形態としてのプーリングシステムや特定目的事業体(SPV)を活用するスキームについても触れています。

ということだそうです。

抜粋
  • 読みやすさを考慮して,グループ内再保険取引は以下「IGR」(Intra-Group Reinsurance Transactions)と言う。
  • 再保険は資本の代替形態であると言える。
  • 再保険を利用することにより出再者の必要資本を減らすことが可能となるのが通常であり,その結果,ソルベンシー比率やその他自己資本関連の比率が改善する。
  • ある会社が,バランスシートから生じるリスクに対して十分な資本を有していたとしても,その会社の他のリスクと比較してバランスが悪い1つまたはいくつかの最大リスクを保有しているケースでは,非効率な資本活用になり得る。
  • SPV(特定目的事業体)は,リスクを資本市場へ出再する手段としてグループが利用するケールが多い。各グループ会社がIGRを利用して特定のリスクをSPVへ出再し,そしてSPVがそれらリスクをパッケージにしたうえで投資家へ移転する。
  • アドバース・ディベロップメント再保険は,保険会社の準備金が悪化することから会社を守り,当該リスクに対して必要とされる資本を低く抑える。(…)この再保険は,アスベストや環境リスク,労働者災害補償,自動車損害賠償といった賠償責任保険など,大きなロングテールを抱えている保険会社のあいだで最も利用されている。
  • グループ全体にとっては利益であるが,地域会社の観点から見ると不利益である(IGR)取引は,基本的には却下すべきである。
  • 多くのIGR,特に規制要件や税制度が異なる国際取引の場合には,料率決定と交渉はアームズレングスの原則に基づいて行うべきである。出再者およびう受再者の両方が,あたかもグループ外の取引先と取引を行っているかのように契約交渉を進めるべきである。
  • 移転価格の観点からは,当該保険会社が事業を行っている市場で観察しうる範囲の取引価格であると明確に証明できなければならない。
  • IGRの使用は,同じグループに属する会社間の相互関連性を高める。したがって,あるグループ会社における問題が他のグループ会社にも波及する可能性が高まるため,結果,システミックリスクも高まると考えられる。
  • グループ自身が責任を持ってストレスシナリオを検証し,一つのグループ会社の倒産時にリスクがどのようにグループ全体に波及するかを確認しなければならない。
ソース

https://www.actuaries.jp/member/fileview.php?file=/lib_file/5820.pdf
日本アクチュアリー会会員専用サイト「ライブラリー > 会報別冊」より

原文はこちら

International Actuarial Association, "Intra-Group Reinsurance Transactions", October 2013
http://www.actuaries.org/LIBRARY/Papers/Intra_Group_Reinsurance_Paper.pdf