Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

森本祐司,松平直之,植村信保『経済価値ベースの保険ERMの本質』きんざい

キャピタスコンサルティングの御三方による新刊です。

経済価値ベースの保険ERMの本質

経済価値ベースの保険ERMの本質

 
保険ERM(Enterprise Risk Management)のエッセンスをわかりやすく解説。会計の論理では、目に見えない「リスク」を商品とする保険会社の支払能力、収益力を正しく評価することはできない。しかも、そのリスクはしばしば長期にわたり、対価の受取りとは異なるタイミングで発現する。ここに保険会社経営において、ERMの重要性が強調される理由がある。著者は、いち早く経済価値ベースで保険会社の経営をとらえることの重要性を強調してきた日本の第一人者。本書の内容を踏まえずして、保険会社の経営を語ることはできない。

「本書の内容」が「ERM」だとしたら,それを踏まえずして保険会社の経営を語ることはできない,ってのは,そりゃそうだって感じですが……。

ざっと眺めて面白かったのは,「第1章 経済価値ベースのERM:この10年の振り返り」と「第5章 経済価値ベースのERMの意義をあらためて考える」です。経済価値ベースのERM・ソルベンシー基準が導入されるに至った経緯や,過去15年間の市場環境と保険会社の動向などは,読み物として面白い。あと,「第3章 経済価値ベースのERMの考え方(準備編)」で,金利とかディスカウントとかを丁寧に解説していのは印象的でした。

ほかに目についたのは,経済価値ベースと財務会計との関係性みたいな話で,短期的にはギャップがあるかもしれないし,経済価値ベースは変動が大きいから財務会計に注目するインセンティブがある,でも長期的にはそのふたつは収斂するし,だから短期的に財務会計だけに注目するのは将来の財務会計をないがしろにするのに等しい云々,という観点です。

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