Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

赤瀬達三『駅をデザインする』筑摩書房(ちくま新書)

使い慣れていると「こんなもんか」と思ってしまいがちですが,こうやって読んでみると,日本の鉄道駅がなぜ不快で不便なのか,そしてなぜ改善されないばかりか改悪の方向に向かっているのか,おぼろげに分かってきますね。 

駅をデザインする (ちくま新書)

駅をデザインする (ちくま新書)

 

著者いわく,「日本の駅づくりの根本的な欠陥は,土木部門が構造を考え,建築部門が内装を仕上げるという,総合的な人間環境のイメージを欠いた検討体制にある。第5章で紹介したように,東急東横線渋谷駅が悲惨な状況になっているのは,そのことに遠因があり,またそのことと闘わなかった建築家に社会的な責任放棄の過ちがある」と,バッサリ。

そのことに限らないんですが,よく「欧米は個人主義,日本は集団主義」なんていわれたりしますが,欧米の方が街や駅の設計にしろ,あるいは個人の行動にしろ,「公共(パブリック)」という観点が意識されて,日本人の方がよっぽど個人主義・利己的に見えることはよくあります(優先席が,それが必要な人に優先されていないのはその最たる例)。

この本の中では,国内外のさまざまな事例(良い例も悪い例も)が多々紹介されていますが,僕にとって身近なのは東京メトロ(営団地下鉄)。営団時代は,乗り換えの案内も白地に路線カラーを用いた路線シンボルですっきり表示されていたし,改札出口付近の地図も分かりやすいかたちであったのにも関わらず,東京メトロにかわって,そのイメージカラーである紺色を使うようにお達しがなされて各種の案内サインは見づらくなり,また地図も広告収入の場所となったおかげで利用者の利便性が損なわれるかたちで改悪された,というのも,この本の中で見比べて一目瞭然でした。

(この「紺色」の件が本当にナンセンスだなと思うのは,そもそも東京メトロのイメージカラーが紺色だということを僕は知らなかったし,ほぼ毎日目にしているはずのその駅構内の「紺色」も,気にもとめなかった。東京メトロのコーポレート・アイデンティティは,何よりも快適で便利で安全な地下鉄の運行サービスであるべきで,その「快適さと便利さ」を損ねる「紺色」の前面押し出しは,東京メトロが何も考えていないか考えていたとしてもその方向性がまったく間違っているかの現われだからです)

この本の中には書かれていないのですが,「駅」に関して個人的にいちばん不快に感じているのは,都営線のホームで流れる鳥の鳴き声的な音。鳥の鳴き声は,そういう環境に身を置くこと自体が快適なのであって,地下の人工的な環境の中であの音だけを聞かされてもそれはただのノイズなので,本当にやめていただきたい。

あともうひとつ。以前Twitterで見かけた誰かの意見なんですが,どうしてわれわれはこの時代にもなって,いまだに券売機の上にある路線図を見て運賃を確認して,それに対応する切符を券売機で買わなければいけないのか。券売機で駅名を選択するかたちにすればいいじゃん,という。

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