Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

日本再建イニシアチブ『民主党政権失敗の検証:日本政治は何を活かすか』中央公論社(中公新書)

『現代日本の地政学』に続いて,日本再建イニシアチブの書いたものを読んでみました。

この本が出版されたのが2013年9月。そこから民主党は民進党へと名前を変え,そして希望の党や立憲民主党などへと分裂し,本気で政権交代を目指す気がないかのような「国会対策」だけに終始している昨今,

日本に複数の政権交代能力のある政党があるのが望ましい。それでこそ,日本に政党デモクラシーをしっかりと根づかせることができる。野党第一党の民主党はとりわけ大きな責任を負っている。その責任を放棄することは,三年三ヵ月の政権党としての失敗以上に大きな罪を犯すことになるだろう

という,日本再建イニシアチブ理事長・船橋洋一の「はじめに」での言葉が虚しく響くだけなのですが,かといってこの本の今日的な価値がないかといえば,そうではない。なぜなら本書は,

過去の検証だけではなく,日本の議会制民主主義の将来のために活かすべき教訓は何か,という視点を大切に(p.10)

して書かれているからであります。しかし,

いま求められているのは,民主党の政治主導への挑戦と失敗を笑うことではない。謙虚にその失敗を分析し,次の政治に活かすことこそ求められる。(p.85)

とせっかく書かれているのにも関わらず,肝心の旧民主党系の議員たちにその「謙虚さ」が見られないような現状は,なんと不毛で非建設的で皮肉なことであろうか……。

さて,民主党政権の「失敗の本質」。それは簡単にいえば「高い理想と,それに見合わない経験不足とプアな政府・党運営」ということになろうかと思うのですが,

「そもそも明確な論理や解答がない問題だからこそ政治の場へ持ち込まれているわけで,明確な論拠があって判断できるものであれば政治問題にはならない。なのに,民主党の議員は朝の四時までも徹底的に議論すれば答えが出ると思い込んでいる」(逢坂誠二)

「自民党の場合,総務会で反対を叫んでいた議員が,最後に決めるときはいなくなるという不思議な大人の文化がある。しかし民主党の場合は,最後まで残っている人って反対している人なんですね」(野田佳彦)

こんなところも「頭でっかち」あるいは「幼さ」を感じるところであって,しかしこれって民主党に限らず日本人によくある光景なんじゃないかと思うと,薄ら寒い感じがするわけです。

さて,次の政権交代はいつ起こるのか,そして日本にちゃんとした二大政党制あるいは民主主義は根付くのでしょうか(いま左側の人たちが叫んでいるような意味での「民主主義の危機」という意味ではなく)……。