Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

津川友介『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』東洋経済新報社

何をもって「科学的」かと言ってると,著者によれば,

医学研究では,大きく分けて①ランダム化比較試験と②観察研究の2つに分けられる。そして,一般的に,ランダム化比較試験から得られた研究結果の方が,エビデンスのレベルが高いとされる。(pp.34-35)

さらに,

ランダム化比較試験の方が,観察研究よりも強いエビデンスであるば,実はそれよりも強い,「最強のエビデンス」が存在する。その最強のエビデンスとは,メタアナリシスという研究手法によって導き出された結果である。メタアナリシスとは,複数の研究結果をとりまとめた研究手法である。(p.36)

ここで「最強の」などという陳腐な形容をするあたり(「天下一武道会」かよ),せっかくの知的な雰囲気を壊しかけていると思うのですが,それはともかく,

メタアナリシスの中でも,複数のランダム化比較試験をまとめたメタアナリシスこそが,「最強のエビデンス」と言えるのである。(p.37)

で,

筆者は医療政策学者で医師でもある。普段は食事や栄養の研究をしているわけではないが,膨大な研究論文から科学的根拠を読み解く教育をハーバード大学で受け,自身でも科学的根拠を明らかにする研究を日々行なっている。(pp.12-13)

らしいんですが,ここでなぜ著者が「ハーバード大学」という固有名詞を出したのか,ハーバード大学で受けた教育は確たるものだという「エビデンス」はあるのか,と突っ込みたくなるところですが,それは置いといて,要するに,そういう人がこういう手法でもってまとめた知識を,ここでは「科学的に証明された食事」と呼んでいるわけです。

それって結局何なの,というと,「魚」「野菜と果物」「茶色い炭水化物」「オリーブオイル」「ナッツ類」。逆に,健康に悪いと考えられているのは,「赤い肉」「白い炭水化物」「バターなどの飽和脂肪酸」。

ところで,この本の内容を検討した人がいるようでして,

津川友介氏『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』のダイエットに関するコラムの検討 - manpukuichiro

ということらしいんですが,このリンク先の最後の方で書かれている「参考文献をすべて明示してあることを感謝いたします。おかげで検証ができました。」というところ,これこそが「科学的」のキモであって,「ランダム化なんちゃら」とか「メタアナリシス」とかそいういう手法自体よりも大事なことだと思います。

で,内容はいいんだから,タイトルの「世界一シンプル」とか「究極の」みたいな安っぽい形容って,避けたほうがいいと思うんだけどなぁ。(「世界一」と「究極」であることを証明するエビデンスくださーい)

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