Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

社会科学 Social sciences

ジョセフ・S・ナイ・ジュニア, デイヴィッド・A・ウェルチ『国際紛争:理論と歴史』有斐閣

国際紛争 -- 理論と歴史 原書第10版作者:ジョセフ・S.ナイ ジュニア,デイヴィッド・A. ウェルチ有斐閣Amazon 今だから言えますが、1章、5章、10章の下訳をしたのは私です。7章には関わっておりませんが。 https://t.co/2yWaOeFKu1— Tetsuo Kotani / 小谷哲男…

ローレンス・ライト『倒壊する巨塔:アルカイダと「9.11」への道 下』白水社

倒壊する巨塔〈下〉―アルカイダと「9・11」への道作者:ローレンス ライト白水社Amazon 下巻になってアメリカ側が出てくる。その中心はジョン・オニール*1。FBI捜査官で,対テロ作戦部長で,早くからビンラディンに注目しており,しかしFBIをやめたあとはワー…

ローレンス・ライト『倒壊する巨塔:アルカイダと「9.11」への道 上』白水社

倒壊する巨塔〈上〉―アルカイダと「9・11」への道作者:ローレンス ライト白水社Amazon とりあえず上巻だけ。 ものすごい本である。「講釈師,見てきたような嘘をつき」というフレーズがあるけれど,この著者はまさに〈見てきたような〉臨場感とリアリティー…

ジェームズ・スロウィッキー『群衆の智慧』KADOKAWA(角川EPUB選書)

群衆の智慧 (角川EPUB選書)作者:ジェームズ・スロウィッキー,小高 尚子KADOKAWAAmazon 『「みんなの意見」は案外正しい』角川文庫(2009)の改題,修正。 「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)作者:ジェームズ・スロウィッキーKADOKAWAAmazon 原タイ…

原丈人『「公益」資本主義:英米型資本主義の終焉』文藝春秋(文春新書)

「公益」資本主義 (文春新書)作者:原 丈人文藝春秋Amazon 岸田首相の「新しい資本主義」のブレーンだといわれる*1原丈人による本書。もっともらしいことを述べておりつつも議論が乱暴――たとえば「経済格差が広がったからテロが増えている」みたいな主張――で…

北村滋『情報と国家:憲政史上最長の政権を支えたインテリジェンスの原点』中央公論新社

情報と国家-憲政史上最長の政権を支えたインテリジェンスの原点 (単行本)作者:北村 滋中央公論新社Amazon 「北村滋」といわれてもピンとこないけど,「北村前国家安全保障局長」という字面には多くの人が見覚えがあるはず。「九年半以上もの間,内閣情報官及…

マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』日経BP社(Nikkei BP classics)

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (日経BPクラシックス)作者:マックス・ウェーバー日経BPAmazon 他の古典――たとえば『種の起源』とか――に比べれば遥かに「読める」。のだけれど,ウェーバーの記述は冗長であり洗練されているとはいいがたく,全体…

トクヴィル『アメリカにおけるデモクラシーについて』中央公論新社(中公クラシックス)

アメリカにおけるデモクラシーについて (中公クラシックス)作者:トクヴィル中央公論新社Amazon 本書を開いて初めて分かったけれど,これはトクヴィルの原書の一部――「序」および第二部の第六章から第九章まで――を訳したにすぎないんだな。全訳は岩波文庫から…

君塚直隆『立憲君主制の現在:日本人は「象徴天皇」を維持できるか』新潮社(新潮選書)

立憲君主制の現在: 日本人は「象徴天皇」を維持できるか (新潮選書)作者:君塚 直隆新潮社Amazon 『社会はどう進化するのか』*1の訳者あとがきで訳者がこの本を紹介していた。「棚から牡丹餅」な良書だった。 本書は「イギリスで徐々に立憲君主制が形作られて…

ジェフリー・フェファー『人材を活かす企業:「人材」と「利益」の方程式』翔泳社(Harvard business school press)

人材を活かす企業 (Harvard Business School Press)作者:ジェフリー・フェファー翔泳社Amazon 「従業員を大事にする企業は成長する」ということを,さまざまなデータやケースを用いて示していく。真面目な学術書であり,遊びの要素はない。 具体的な話として…

春名幹男『ロッキード疑獄:角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』KADOKAWA

ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス (角川書店単行本)作者:春名 幹男KADOKAWAAmazon 力作。長期間に及ぶ丹念な取材・資料の読みこみによって,ロッキード事件の「真相」に近いところをできるだけ解き明かしていく。惜しいのは,改行の多い文章と,たまに挟…

デイヴィッド・スローン・ウィルソン『社会はどう進化するのか:進化生物学が拓く新しい世界観』亜紀書房

社会はどう進化するのか——進化生物学が拓く新しい世界観作者:デイヴィッド・スローン・ウィルソン亜紀書房Amazon 非常に示唆的な本であった。 ざっくり言えば,マルチレベル選択――グループ内では利己的行動が生存戦略的に有利だが,グループ間では利他的行動…

宇野重規『民主主義とは何か』講談社(講談社現代新書)

民主主義とは何か (講談社現代新書)作者:宇野重規講談社Amazon (この書影の中の帯,ひでぇな) Twitterで見かけたので読んでみた。著者が「おわりに」でこう述べてる。 民主主義について過不足のない本を書いてみたい,そう思ってこの本を執筆しました。何…

牧野雅彦『精読アレント『全体主義の起源』』講談社(講談社選書メチエ)

精読 アレント『全体主義の起源』 (講談社選書メチエ)作者:牧野 雅彦講談社Amazon アレントの本を読む前にこちらで準備しておこうと思ったが,まったく頭に入ってこない。エキサイティングな感じがしない。アレントの本に問題があるのか,この本に問題がある…

橘玲『(日本人)』幻冬舎

(日本人)作者:橘玲幻冬舎Amazon 誰かの勉強ノートを見せられているようだ――橘玲が最近書いているものはだいたいそうだけど。「こういう本がある,ここではこんなことが書かれいる,実は人間/日本人というのは〇〇だ,果たして将来はどうなるのだろうか?…

フランク・H・ナイト『リスク、不確実性、利潤』筑摩書房

リスク、不確実性、利潤 (単行本)作者:フランク・H・ナイト筑摩書房Amazon 読みにくい。ナイト本人が本書を「従来の経済的教義の根本原理をより正確に提示し,その含意をより明確に示そうとする試みを表した」と言っているわりには,訳者には「ナイトの議論…

松浦大悟『LGBTの不都合な真実:活動家の言葉を100%妄信するマスコミ報道は公共的か』秀和システム

LGBTの不都合な真実 活動家の言葉を100%妄信するマスコミ報道は公共的か作者:松浦大悟秀和システムAmazon 書影内の帯にある「左翼運動の変形としてのLGBT運動では社会変革はできません」というのが本書で著者が伝えたいことの本質で,必要なのは〈対話〉〈議…

藤沢晃治『「分かりやすい表現」の技術 : 意図を正しく伝えるための16のルール』講談社(ブルーバックス)

「分かりやすい表現」の技術―意図を正しく伝えるための16のルール (ブルーバックス)作者:藤沢 晃治講談社Amazon 道路標識や案内,看板,広告などで,分かりにくい実例を挙げて改善例を提案している。分かりにくい例を「違反」と称しているのはどうかと思うが…

マット・リドレー『人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する』ニューズピックス

人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する (NewsPicksパブリッシング)作者:マット・リドレーニューズピックスAmazon 本書の要旨としては,イノベーションっていうと「すごい人がなんかドカンとアイデアを生みだした」みたいに思われがちだ…

読書猿『独学大全:絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』ダイヤモンド社

独学大全――絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法作者:読書猿ダイヤモンド社Amazon 読書猿の本もこれで3冊目だが,あいかわらず「知識のひけらかし」というか「技法の羅列」としか感じられないほど,自分には刺さらない。おまけに今度は…

内田貴『総則・物権総論』東京大学出版会(民法, 1)

民法I 第4版: 総則・物権総論作者:内田 貴東京大学出版会Amazon いわゆる「内田の民法」の第1巻。 以前読んだ瀧本哲史の本*1で,瀧本が東大で内田のもとで学んでいたというのを知って,ページを開いてみた。 最初の概念的なところは面白く読めたんだけど,そ…

羅芝賢『番号を創る権力:日本における番号制度の成立と展開』東京大学出版会

番号を創る権力: 日本における番号制度の成立と展開作者:羅 芝賢東京大学出版会Amazon 交換留学生として韓国から日本に2005年に初めてやってきたという著者の博士学位取得論文に加筆訂正を行なったものという本書。「あとがき」には,2013年に区役所で転入届…

ニコラス・レマン『マイケル・ジェンセンとアメリカ中産階級の解体:エージェンシー理論の光と影』日経BP

マイケル・ジェンセンとアメリカ中産階級の解体――エージェンシー理論の光と影作者:ニコラス・レマン(Nicholas Lemann)日経BPAmazon なんだろう,邦題(の不適切さ)が気になるのと,最終章「利益者集団による多元主義」に大事なことが書かれていそうなのに,…

ロン・チャーナウ『モルガン家:金融帝国の盛衰』日本経済新聞社(日経ビジネス人文庫)

モルガン家(上) 金融帝国の盛衰 (日経ビジネス人文庫)作者:ロン・チャーナウ日本経済新聞出版Amazon モルガン家(下) 金融帝国の盛衰 (日経ビジネス人文庫)作者:ロン・チャーナウ日本経済新聞出版Amazon Amazonの購入履歴によれば,2008年に買って読んでいた…

バーバラ・ミント『考える技術・書く技術 : 問題解決力を伸ばすピラミッド原則』ダイヤモンド社

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則作者:バーバラ ミントダイヤモンド社Amazon この本の存在は知っていたけど,読むのは初めてかも。 「すらすら楽しく,時を忘れて読み進めた」という類の本では決してなくて,なぜなら,この本を読んだ…

菊池良和『吃音のことがよくわかる本』講談社

吃音のことがよくわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)講談社Amazon 吃音の子供をもつ親には,この本が救いになると思う。子供とのコミュニケーションにおいて気を付ける点など具体的なアドバイスが豊富。 378.5 吃音のことがよくわかる本 : イラスト版 (…

フクチマミ, 村瀬幸浩『おうち性教育はじめます:一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』KADOKAWA

おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方 (コミックエッセイ)作者:フクチ マミ,村瀬 幸浩KADOKAWAAmazon 図書館で大人気。予約してから借りるまでに9か月かかったけど,人気の理由がよく分かった。 性教育は子供の自己肯定感を高めるも…

山内恒人『生命保険数学の基礎:アクチュアリー数学入門』東京大学出版会

生命保険数学の基礎 第3版: アクチュアリー数学入門作者:恒人, 山内東京大学出版会Amazon アクチュアリー試験に向けて生保数理を勉強するならこれだよね……って今は他にもいいのが出てるかもしれないけれど,自分の場合はこのおかげで合格できた。 339.1 生命…

中出哲, 嶋寺基『企業損害保険の理論と実務』成文堂

企業損害保険の理論と実務作者:中出 哲,嶋寺 基成文堂Amazon 企業損害保険の中でもプロパティとBI(本書内では「利益保険」)とライアビリティにフォーカスしたもの。企業保険に限っているのはユニークだと思ったけど,「理論と実務」というわりには「理論」…

ハワード・スティーヴン・フリードマン『命に〈価格〉をつけられるのか』慶應義塾大学出版会

命に〈価格〉をつけられるのか作者:ハワード・スティーヴン・フリードマン,Howard Steven Friedman慶應義塾大学出版会Amazon 私たちの多くは,常に自分の命に価格がつけられていることに気づかずに暮らしている。私たちの重要な決定の多くが,命の価値の計算…