Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

デイヴィッド・J・ハンド『「偶然」の統計学』早川書房(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

「偶然」の統計学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫〈数理を愉しむ〉シリーズ)

「偶然」の統計学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫〈数理を愉しむ〉シリーズ)

 
内容紹介
「ありえない」はずの出来事が、なぜ次々と起こるのか?

ロトで2回連続まったく同じ当選番号が出現。
生涯で7回も落雷にあい、墓石にまで雷が落ちる。
10万年に一度しか起こらないはずの金融危機に何度も見舞われる。

一見ありそうにない出来事が、実は頻繁に起きている。
それなのになぜ私たちの目には奇跡のように映るのか?
統計リテラシーを高め、「偶然」に惑わされないようにするには?

統計学者がギャンブルから人間原理まで豊富な具体例を挙げながら、
5つの法則からなる「ありえなさの原理」を解き明かす。

この手の本って,興味はあるけど読んでも満足できないことを経験則で知っているので買う気にならず,でも今回はついつい買ってしまいました。というのも,第1章の冒頭にあったエピソードが面白そうだったからです。

1972年の夏,ジョージ・ファイファーの小説『ペトロフカの少女』で助演を務めたアンソニー・ホプキンスが,原作を買いにロンドンへ出かけた。だが,市内のどの大きな本屋へ行ってもあいにく一冊もなかった。それが買える途中,地下鉄のレスタースクエア駅で電車を待っていたとき,隣の椅子に本が捨てて置かれているのに気がついた。それが『ペトロフカの少女』だった。

これだけではまだ偶然には当たらないとばかりに,この話には続きがある。後日,原作者と対面したおりにホプキンスがkの奇妙な成り行きの話をしたところ,ファイファーが関心を示した。というのも,1971年の11月,ファイファーは『ペトロフカの少女』を一冊人に貸した――その一冊はアメリカ版の刊行に向けてイギリス英語をアメリカ英語に直すための書き込みが入っていた唯一の本だった――のだが,友人がそれをロンドンのベイズウォーターでなくしていたのだ。ホプキンスがさっそく書き込みを確かめてみると,手持ちの本はファイファーの友人がどこかに置き忘れたまさにその本だったのだ。

で,そういう確率ってどれぐらいなの? こういう,起こりそうもないことが起こるのってどうしてなの? というのが,この本の中心テーマで,それに関連して,古い人達はこういった偶然に関する事象をどう扱ってきたか(「迷信」だったり「予言」だったりユリ・ゲラー的な「超常現象」だったり),という話などが紹介されるわけですが,そのホプキンスのエピソードに関していえば,結論としては,「超大数の法則」すなわち「十分に大きな数の機会があれば,どれほどとっぴな物事も起こっておかしくない」で説明される,と。

ということで,数々の「ありえない」出来事は,確率の問題であると同時に,人間の認知の問題でもあるという,結局はそういう話でございまして…。まぁでも再読しないかといえばそうでもなくて,たまに本棚から取り出して,適当にページをめくって適当に読むぶんには面白い本だと思いますよ。