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尾身茂『WHOをゆく:感染症との闘いを超えて』医学書院

WHOをゆく: 感染症との闘いを超えて

WHOをゆく: 感染症との闘いを超えて

  • 作者:尾身 茂
  • 発売日: 2011/10/21
  • メディア: 単行本

尾身さんというと「西太平洋地域からポリオを根絶した人」と言われるんだけど,そのポリオ根絶の話は29ページまでで終わってしまった.しかしそのあとも,WHO西太平洋地域事務局長選挙の話から,RDとしての結核対策,SARS制圧,鳥インフルエンザ対策,日本における新型インフルエンザ対策と話が続いて,なんともまぁ,穏やかそうな外見とは裏腹に,ものすごい仕事を次から次へとエネルギッシュにこなされたことがよく分かる.

そのSARSのとき,中国広東省地域で最初に発生したときも,中国はWHO調査チームの受け入れを拒否したとのことで.なんとも歴史は繰り返すというか....そしてそのSARS制圧のところで,「第一波・第二波」とか「診断基準の感度(Sensitivity)と特異度(Specificity)」とか「接触者の追跡調査と発症者の病院での厳重な管理」とかいう言葉がでてきて,いやーこれほんと既視感あるわ.(そもそもSARSはコロナウイルスによるものであり,新型コロナウィルスも「SARS-CoV-2」という名前がついているぐらいだから,既視感あって当然なんだけど).

SARS対策を振り返るインタビューの中で尾身さんが,「まさか感染症が,こんなに大きな問題を引き起こすとは,誰も想像していなかったと思います.〔...〕しかし,今回のSARSのような新興感染症は,今後も必ずやってきます.」と言ってるの.そしてその尾見さんが今,日本で新型コロナウィルス対策をリードしている.なんて言ったらいいんだろうこれ.

というか,僕が2011年に出されたこの本を今読んでいるのも,新型コロナのせいだからであって,そういう意味では,人間が歴史から学ぶというのは,言うのは簡単だけど実際にやるのは難しいものだな,と改めて思う.

ワクチンについても「日本はワクチン後進国」と題して,「従来わが国においてはワクチンの効果は十分認識されず,稀に発生する副反応だけに国民的関心が向く傾向にあった」と書かれていて,いやーほんと日本人は成長してないわ.

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