Dribs and Drabs

ランダムな読書歴と音楽にまつわる備忘録

片山洋次郎『整体 楽になる技術』筑摩書房(ちくま新書)

この本が最初に出たのが2001年11月か.当時はこの本にものすごくハマって(「他の誰も知らないようなことを僕は手に入れた!」みたいな),むさぼるように読んだ記憶があるんだけど,いま再読してみたらそれほどの興奮は得られなかった.

まぁ今読んでも,「身体観(と言っていいのかしらんけど)とカルチャーとの関連性」みたいなところはやっぱり面白いというか示唆的で,そもそもサザンオールスターズの「胸騒ぎの腰つき」の話から始まって,あるいはRedioheadの「Kid A」の浮遊感の話,かつてはロックンロールの「ビート」が若者に受けたけど,今の若者はただでさえ外部から興奮を強いられている状態なので音楽はむしろそこから開放されるようなものを好む,みたいな.

そういうのは面白いんだけど,一方で本書の大半を占める著者独自の身体観の開示は,どこまでが事実でどこまでが推測なのか,それが読み手には判読しにくく,それが不満の一因かなぁと.

今も昔もそしてこれからも,身体が終の棲家であることには変わりなく,そこが一番の安息の地である.それが当たり前にできないのは,身体が常に,他者,そして外部環境との間の相互作用の中で生きているからであり,その中で身体を外側から見る意識を持ってしまう人間のメディア特性によるものであった.そのために自己の意識が身体の外側をさまようのは宿命でもあり,それが不安の根源でもある.

いや,まぁ,独特な本ではある.類書を知らないからよくわからないけど.

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