Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

西野智彦『ドキュメント日銀漂流:試練と苦悩の四半世紀』岩波書店

著者紹介:1958年長崎県生まれ。慶應義塾大学卒業。時事通信社で編集局、TBSテレビで報道局に所属した。著書に「検証経済迷走」「検証経済暗雲」「平成金融史」など。

政治と官僚と中央銀行とのあれやこれやを描く,という点で『リーマンショック・コンフィデンシャル』との類似点を感じたんだけど,そちらに比べて迫力が弱いのはまぁしょうがないかな。描くネタが小さいのだから。

政治に翻弄され,日銀法改正に翻弄される日銀で,やはり総裁のカラーというのは大きなもののようですね。時代についていけなかった速水優,力はあるが脇が甘かった福井俊彦,優秀だが力が弱い白川方明,そしてバズーカを放つが結局は政治に翻弄されただけの黒田東彦と,それぞれに特徴がある。

著者の見立てでは「呆れるほどの成長志向の政治家と,驚くほど警戒的なセントラルバンカーが相互理解できるはずも」ないのだが,そんな中で(本書内で)唯一まともに見える政治家が,麻生太郎。苦境に陥る同郷の白川をかばい,金融緩和でデフレから脱却というシナリオには懐疑的で,政府と日銀とのアコードにこだわる安倍には

「総理,アコードなんて,そんなホンダの車みたいな名前は駄目ですよ。紛らわしくて話にならない。日本語にしてください」

とかます。完璧な人ではないけれど,やはり頼れるところもあるんだなぁ,麻生は。

338.3

参考:西野智彦『ドキュメント日銀漂流 試練と苦悩の四半世紀』 - ラスカルの備忘録