Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

尹雄大『体の知性を取り戻す』講談社(講談社現代新書)

本書を最初に開いたときに,ページの濃度の薄さ――つまりスカスカした感じ――が気になった。一読して,その〈スカスカ〉は内容もそうだったことが分かった。

いった自分は何を読まされたのだろう? 小学校において〈小さく前へならえ〉を強制されたときの違和感。工事現場で自分よりも小柄な男が重い者を軽々と持ち上げたというエピソード。筋トレに対する猜疑心。甲野善紀との出会い,そこで目覚めた身体感覚。どれも既視感のある話だ。だいたいが個人的感覚と個人的経験。

まぁ別にいいんですよ。これがブログ記事のひとつだったら,SNSでシェアされてバズるかもしれない。しかしこれが新書,しかも講談社現代新書となると,本当にこのフォーマットとして世に出る必要があったのかと思わざるをえない。

〈あとがき〉はこう始まっている。

体に関する教科書を書こう。それも正しい答えや理想のモデルなどを一切抜きにした,自分で感じ,考えるためのきっかけになるようなものを。そう思いついたのは,東日本大震災が起きてしばらくしてからのことだ。

ダメ押しで眩暈がする思いがした。特に〈教科書〉という単語に。

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体の知性を取り戻す (講談社): 2014|書誌詳細|国立国会図書館サーチ