Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

ダニ・ロドリック『グローバリゼーション・パラドクス:世界経済の未来を決める三つの道』白水社

〈訳者あとがき〉に内容がサマライズされていて,それを読んだら「もういいかな」って気分になった。いわく,

本書の核となるアイデアは,市場は統治なしには機能しない,というものだ。昨今の新自由主義的な風潮の中で,市場と政府は対立関係にあると考えられることも多いが,本書はそれを明確に間違いであると指摘している。市場がよりよく機能するには,金融,労働,社会保護などの分野で一連の制度が発達していなければならず,政府による再分配やマクロ経済管理が適切に行われていなければならない。〔中略〕市場と統治という視点に立つと,グローバル経済が抱える根本的な問題が見えてくる。グローバル市場では,その働きを円滑にするための制度がまだ発達していない。全体を管理するグローバルな政府も存在していない。一刻レベルでは一致している市場と統治が,グローバルなレベルでは乖離しているのだ。貿易や金融は国境を越えて拡大していくが,統治の範囲は国家単位にとどまっている。ここにグローバル経済の抱える最大の「逆説」がある,というのが著者の問題提起である。

で,その〈市場と統治の乖離〉を埋めるための方法をさぐるために,本書では「この問題の解決が過去にどのように行われたのか,歴史をさかのぼって検討していく」,そこに本書の面白さがあると訳者代表・柴山桂太は述べる。まぁ〈面白さ〉ってよりは〈ユニークさ〉という方が妥当だと思う。だって読んでて全体的にそれほど〈面白い〉とは感じないからーーちゃんと書かれてはいるものの。

で,著者は「世界経済の政治的トリレンマ」という概念を持ち出す。ふたたび〈訳者あとがき〉から引用する。

グローバリゼーションのさらなる拡大(ハイパーグローバリゼーション),国家主権,民主主義の三つのうち二つしか取ることができない,とする本書の「トリレンマ」に従うなら,今後の世界には三つの道がある。①グローバリゼーションと国家主権を取って民主主義を犠牲にするか,②グローバリゼーションと民主主義を取って国家主権を捨て去るか,③あるいは国家主権と民主主義を取ってグローバリゼーションに制約を加えるか,である。/新自由主義に共鳴し国内改革とグローバル化の推進を唱える経済学者は①を,欧州統合の実験に代表される二十一世紀のグローバル・ガバナンスに期待を寄せる政治学者は②を選ぶのは想像に難くない。〔中略〕だが,政治学,経済学,そして歴史をクロスオーバーさせる著者が期待を寄せるのは,③の道だ。自由貿易のもたらす便益を認めつつも,グローバリゼーションを「薄く」とどめることで,世界経済に安定を取り戻そうというのである。

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グローバリゼーション・パラドクス : 世界経済の未来を決める三つの道 (白水社): 2014|書誌詳細|国立国会図書館サーチ