この本を手にしたわけ
『数学ガール』の結城浩さんの本で,しかも文章作法について。大学で数学を勉強してそのあと雑誌の編集者をやってた自分としては,興味のど真ん中にある本です。
抜粋
- あなたが文章を書くときの大きな目的は,あなたの考えを読者に伝えることです。
- 読者のことを考える。これが文章を書くときに最も大切なことです。
- 文章を書くときには「読者は何を知っているか」を意識する必要があるのです。
- 読者は基本的に飽きっぽく,浮気性であり,あなたの文章を読むのをいつでも止める権利を有しています。
- 読者に伝えたい内容が大切なものであるほど,形式をきちんと整えなければなりません。欠けたカップで出されたら,いくら美味しいコーヒーでも台無しでしょう?
- 接続詞・副詞・指示語は,ひらがなで書いた方が読みやすくなります。
- 「とき・こと・もの」を形式的に表現するときも,以下のようにひらがなを使いましょう。
- ~する時 → ~するとき
- ~する事 → ~すること
- ~する物 → ~するもの
- nで置き換えられるものはアラビア数字で書くと考えればいいです。
- 任意の自然数は入らず,一,二,三などに限って使う表現や慣用句の場合には,漢数字を使います。
- カギカッコ(「 」)は短い引用や発現に使います。二重カギカッコ(『 』)は書名に使います。
- 列挙の順序を入れ替えてもかまわないときには,列挙の区切りにナカグロ(・)を使います。順序を入れ替えないときには,読点(、)やカンマ(,)を使います。
- 「量xが増えたら,量yが増える」というだけでは,数学的には比例とはいいません。
- 主張の内容がはっきりわかるなら良い文で,そうでなければ悪い文です。
- 逆説ではない「が」には特に注意しましょう。
- 引用は以下に示すルールを守って注意深く行なわなければなりません。
- 出典を明記すること。
- 引用範囲を明記すること。
- 一字一句そのまま写し,改変しないこと。
- 主従関係に注意すること。
- 文章は,読者が既に知っていること(既知のこと)を先に書き,読者が未だ知らないこと(未知のこと)を後に書くのが自然です。
- 順序がない箇条書きは,項目の順序を入れ替えてもかまわないものです。
- 別行立ての数式とは,数式を文中に埋め込むのではなく独立した段落として提示さいた数式のことです。ディスプレイ数式ともいいます。(…)なお,読者を誤解させる危険があるので,誤りを別行立てで書いてはいけません。
- 数式まじりの文章は,たとえ数式を「ほげほげ」と書き換えても読めるようになっていなくてはなりません。つまり,数式を塗りつぶしても文章の構造は正しくなっていなければならないということです。
- 例は,概念を読者の心に描きます。(…)適切な例を挙げるのは,読者の心に概念の姿を正確に描く助けとなるのです。
- 例は読者の理解を助けるものであって,著者が読者に自分の知識をひけらかすためのものではありません。
- 良い例は良い理解から生まれます。もしも良い例が作れないなら,自分の理解を疑いましょう。
- 解答を書かないのは著者の自由ですが,読者,特に独学している読者にとっては非常につらいことです。
- 問いかけ型のタイトルを付けた場合,著者はその問いかけにきちんと答える文章を書かなければなりません。
- 良い目次を作ろうとすることは良い見出しを作ることであり,良い見出しを作ろうとすることは良い文章を作ることにつながります。
余談
この本を含めて,ちくま学芸文庫は数学系の良書をたくさん出版されているけど,Kindle化されていないのが非常に残念。
参考文献

- 作者: Donald E. Knuth,Tracy Larrabee,Paul M. Roberts,有沢誠
- 出版社/メーカー: 共立出版
- 発売日: 1989/12/25
- メディア: 単行本
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Mathematical Writing (Mathematical Association of America Notes)
- 作者: Donald E. Knuth
,Tracy Larrabee,Paul M. Roberts - 出版社/メーカー: The Mathematical Association of America
- 発売日: 1996/09/05
- メディア: ペーパーバック
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