Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

社会 Society

クラウディア・ゴールディン『なぜ男女の賃金に格差があるのか:女性の生き方の経済学』慶應義塾大学出版会

なぜ男女の賃金に格差があるのか:女性の生き方の経済学作者:クラウディア・ゴールディン慶應義塾大学出版会Amazon 第1章 キャリアと家庭の両立はなぜ難しいか――新しい「名前のない問題」 職場での男女平等がようやく私たちの手に入ったように見え、かつてな…

デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ:クソどうでもいい仕事の理論』岩波書店

ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論作者:デヴィッド グレーバー岩波書店Amazon 図書館で人気のようだったので借りてみたけど,これそんなに多くの人にハマる本か? この本自体がブルシットだとは言わないし,刺激的なタイトルはたしかにキャッチ…

アダム・グラント『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』三笠書房

GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代 三笠書房 電子書籍作者:アダム・グラント三笠書房Amazon 冒頭に監訳者の解説みたいな長文が載っていて,フラグ立ってるなって感じ。訳者や解説が本文より目立つ本って碌なのがない。 といいつつ,本書は割…

大鹿靖明『金融庁戦記:企業監視官・佐々木清隆の事件簿』講談社

金融庁戦記 企業監視官・佐々木清隆の事件簿作者:大鹿靖明講談社Amazon まぁこういうお話は〈痛快〉ですよね。〈金融庁戦記〉っていうメインのタイトルはあとづけで,本質は〈佐々木清隆の事件簿〉。この異色の人物に焦点を当てているのだが,著者があとがき…

アマルティア・セン『アイデンティティと暴力:運命は幻想である』勁草書房

アイデンティティと暴力: 運命は幻想である作者:アマルティア・セン勁草書房Amazon 期待感を抱かせるタイトルなんだけど,本書の主張はそれに尽きる。つまり「単一のアイデンティティに人間を押し込めること(=人間の矮小化)が,国家間とか宗教観の紛争に…

仲正昌樹『東京80年代から考えるサブカル:ストリート・音楽・ファッション・宗教・現代思想』図書新聞

東京80年代から考えるサブカル―ストリート・音楽・ファッション・宗教・現代思想作者:米原 康正図書新聞Amazon 良くも悪くも〈素人くさい作り〉の本である。 良い意味での〈素人くささ〉,それは内容の雑多さ――サブタイトルに象徴されるように――と,それによ…

キャロライン・クリアド=ペレス『存在しない女たち:男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く』河出書房新社

存在しない女たち 男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く作者:キャロライン・クリアド=ペレス河出書房新社Amazon 『多様性の科学』で引用されていた本。カテゴライズするなら〈ジェンダー論〉とか〈フェミニズム〉ということになるんだろうけど,…

ジェームズ・スロウィッキー『群衆の智慧』KADOKAWA(角川EPUB選書)

群衆の智慧 (角川EPUB選書)作者:ジェームズ・スロウィッキー,小高 尚子KADOKAWAAmazon 『「みんなの意見」は案外正しい』角川文庫(2009)の改題,修正。 「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)作者:ジェームズ・スロウィッキーKADOKAWAAmazon 原タイ…

デイヴィッド・スローン・ウィルソン『社会はどう進化するのか:進化生物学が拓く新しい世界観』亜紀書房

社会はどう進化するのか——進化生物学が拓く新しい世界観作者:デイヴィッド・スローン・ウィルソン亜紀書房Amazon 非常に示唆的な本であった。 ざっくり言えば,マルチレベル選択――グループ内では利己的行動が生存戦略的に有利だが,グループ間では利他的行動…

橘玲『(日本人)』幻冬舎

(日本人)作者:橘玲幻冬舎Amazon 誰かの勉強ノートを見せられているようだ――橘玲が最近書いているものはだいたいそうだけど。「こういう本がある,ここではこんなことが書かれいる,実は人間/日本人というのは〇〇だ,果たして将来はどうなるのだろうか?…

松浦大悟『LGBTの不都合な真実:活動家の言葉を100%妄信するマスコミ報道は公共的か』秀和システム

LGBTの不都合な真実 活動家の言葉を100%妄信するマスコミ報道は公共的か作者:松浦大悟秀和システムAmazon 書影内の帯にある「左翼運動の変形としてのLGBT運動では社会変革はできません」というのが本書で著者が伝えたいことの本質で,必要なのは〈対話〉〈議…

フクチマミ, 村瀬幸浩『おうち性教育はじめます:一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』KADOKAWA

おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方 (コミックエッセイ)作者:フクチ マミ,村瀬 幸浩KADOKAWAAmazon 図書館で大人気。予約してから借りるまでに9か月かかったけど,人気の理由がよく分かった。 性教育は子供の自己肯定感を高めるも…

ハワード・スティーヴン・フリードマン『命に〈価格〉をつけられるのか』慶應義塾大学出版会

命に〈価格〉をつけられるのか作者:ハワード・スティーヴン・フリードマン,Howard Steven Friedman慶應義塾大学出版会Amazon 私たちの多くは,常に自分の命に価格がつけられていることに気づかずに暮らしている。私たちの重要な決定の多くが,命の価値の計算…

伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』光文社(光文社新書)

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)作者:伊藤 亜紗光文社Amazon はじめに,この本の存在を教えてくれた同僚YKに感謝。とっても面白かった。 分類的には「視覚障害者」にフォーカスした「社会福祉」の本ってことになるのかもしれないけど,…

テロ対策を考える会『[テロ対策]入門:遍在する危機への対処法』亜紀書房

テロ対策入門: 遍在する危機への対処法作者:テロ対策を考える会亜紀書房Amazon この手の「なんちゃらの会」が書いた包括的で概説的な入門書にありがちだけど,門外漢にとっては面白くない。 その中でも面白いと思えたのは, 宮坂直史も,テロリストの目的,…

森功『地面師:他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』講談社

地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団作者:森功講談社Amazon 積水ハウスの件で興味を持って読んでみた. 積水ハウスの「海喜館」地面師事件、発端は社内政治と「保身 積水ハウス、クーデターの深層」(藤岡雅)が指摘 : 市況かぶ全力2階建 が,積水ハ…

細野豪志『東電福島原発事故自己調査報告:深層証言&福島復興提言 2011+10』徳間書店

東電福島原発事故 自己調査報告 深層証言&福島復興提言:2011+10作者:細野豪志発売日: 2021/02/27メディア: Kindle版 この本にいろいろとケチをつけるのは簡単で,それは編者解題で開沼博が述べているように,「それは結局,自分(細野豪志)の功績強調・…

リチャード・ホーフスタッター『アメリカの反知性主義』みすず書房

アメリカの反知性主義作者:リチャード・ホーフスタッターみすず書房Amazon 描きたいものは『ファンタジーランド』と同じなんだけど,だからこそ,この2段組で生真面目でサービス精神のかけらもないような本文を追いかけることはできなかった...(それこそが…

山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学:データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』光文社(光文社新書)

「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実 (光文社新書)作者:山口 慎太郎光文社Amazon 第41回サントリー学芸賞受賞作。 第41回サントリー学芸賞決定 - Dribs and Drabs なんだけど,著者が中で何度も強調しているように,当たり…

澤田晃宏『ルポ 技能実習生』筑摩書房(ちくま新書)

このテーマに特段の興味を持っていたわけではないけれど,買って読んでみた。 ルポ 技能実習生 (ちくま新書)作者:澤田晃宏筑摩書房Amazon このテーマにまつわる状況が冷静にバランス良くまとめられていた。最後に韓国の状況についてまとめられていたのも良か…

宮本みち子『若者が無縁化する:仕事・福祉・コミュニティでつなぐ』筑摩書房(ちくま新書)

タイトル通り,無煙化する若者ついて,さまざまな角度から丁寧に描写した本ではあるが,自分にとっては「だから何」という感じだった。 若者が無縁化する―仕事・福祉・コミュニティでつなぐ (ちくま新書)作者:宮本 みち子筑摩書房Amazon

三浦展『下流社会:新たな階層集団の出現』光文社(光文社新書)

マーケティングの本だった。その背景や経緯をたどって深く掘り下げるというよりは,現代社会の表層のスナップショットを切り取るって感じの。 下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)作者:三浦 展光文社Amazon 361.8 下流社会 : 新たな階層集団の出現 (…

小熊英二『日本社会のしくみ:雇用・教育・福祉の歴史社会学』講談社(講談社現代新書)

小熊英二が現代的(と思えた)テーマに取り組んだのは意外に思えたけど,序章を読んだらやっぱりこれは小熊英二による小熊英二らしい本なんだなと思えた。あいかわらず「真面目」で「膨大」である。 日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社…

逢阪まさよし, DEEP案内編集部『「東京DEEP案内」が選ぶ 首都圏住みたくない街』駒草出版

これもたしかTwitterでその存在を知った本です。いやー,世の中に知らないことっていっぱいあるんですね……。ボリュームが大きいので一字一句は読んでないですが,眺めるだけでもお腹いっぱい,土地を見る目が変わりました。 「東京DEEP案内」が選ぶ 首都圏住…

[論文]高スキル労働者の転職行動|日銀

永沼早央梨「高スキル労働者の転職行動」http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2014/wp14j03.htm/ 要旨 本稿では、高スキル労働者として「技術職」、「専門職」、「管理職」の3職種に着目し、近年の転職動向について事実整理を行った上で、転職パター…