Dribs and Drabs

ランダムな読書歴と音楽にまつわる備忘録

歴史 History

歴史,伝記,地理

西尾幹二「ヨーロッパ像の転換」,『西尾幹二全集 第1巻 ヨーロッパの個人主義』国書刊行会

11月1日に西尾寛治が亡くなったということで,Twitterには西尾に関することがあれこれ流れてきたんだけど,そのうちのひとつがこれ。 このころの朝生はすばらしかったこんな覚悟ある発言をする言論人がいまいるだろうかこれはネトウヨがどうという話ではない…

柳田国男『地名の研究』中央公論新社(中公クラシックス)

地名の研究 (中公クラシックス)作者:柳田 国男中央公論新社Amazon 「過去への道標」を毀損してはならない 今尾恵介 自序 地名の話 申すまでもなく地名は人のつけたものである。日本の地名は日本人のつけたものである。前住民がつけたとしても少なくともわれ…

J. D. ヴァンス『ヒルビリー・エレジー:アメリカの繁栄から取り残された白人たち』光文社

2016年にトランプが勝ってヒラリーが負けたとき、「アメリカ人ってバカなのか?」って思ったのを覚えてるんだけど、アメリカ人(のすべて)がバカなわけではなく、単に自分がアメリカの内実を知らなかっただけだったという。 区の図書館と国会図書館とでつけ…

筒井功『日下を、なぜクサカと読むのか:地名と古代語』

日下を、なぜクサカと読むのか: 地名と古代語作者:筒井 功河出書房新社Amazon はじめに わたしは、大字(おおあざ、幕末から明治時代初めにかけての村の名だと考えてよい)でさえ、地名研究の資料としては広すぎることが珍しくないと思っている。 第一章「日…

E.H.カー『歴史とは何か』岩波書店(岩波新書)

うーむ。読む人が読んだら面白いんだろうな…。 歴史とは何か (岩波新書)作者:E・H・カー岩波書店Amazon はしがき 1961年の1月から3月にかけて,E・H・カーは,ケンブリッジ大学で『歴史とは何か』と題する連続公演を行ない,同年秋,これを書物として出版し…

森功『国商:最後のフィクサー葛西敬之』講談社

国商 最後のフィクサー葛西敬之作者:森功講談社Amazon 国士と政商、あわせて国商。それをタイトルにしておきながら、「その評価はいまだ定っていない」ってなんじゃそりゃ。〈最後のフィクサー〉というフレーズにしたって,本文中にたしか1回しか出てこず,…

君塚直隆『エリザベス女王:史上最長・最強のイギリス君主』中央公論新社(中公新書)

エリザベス女王 史上最長・最強のイギリス君主 (中公新書)作者:君塚直隆中央公論新社Amazon Twitterで〈女王陛下〉として生息している君塚先生である。君塚さんの著作は,ここでもかつて『立憲君主制の現在』について書いている*1し,それと本書とを併せて読…

広瀬佳一『ヨーロッパ分断1943:大国の思惑、小国の構想』中央公論社(中公新書)

ヨーロッパ分断1943―大国の思惑、小国の構想 (中公新書)作者:広瀬 佳一中央公論社Amazon かつてポーランドとチェコスロヴァキアとが連邦/連合を組もうとしていたけれど,日英ソの思惑に振り回されてそれが実現することはなかった,という話。 それ自体は興…

トーマス・L・フリードマン『ベイルートからエルサレムへ:NYタイムズ記者の中東報告』朝日新聞社

ベイルートからエルサレムへ―NYタイムズ記者の中東報告作者:トーマス・L. フリードマン朝日新聞Amazon こんどレバノン人を採用するって言ったら韓国人の同僚から勧められたのが,この本。目からウロコが何枚落ちたことか。 イスラエルとレバノンの共通点は,…

『昭和天皇のゴルフ:昭和史を解く意外な鍵』

昭和天皇のゴルフ―[昭和史を解く意外な鍵]作者:田代 靖尚主婦の友社Amazon (欧米の)近代史を書きたいのか(日本の)昭和史を書きたいのか昭和天皇史を書きたいのかゴルフの黎明期を書きたいのか昭和天皇のゴルフ史を書きたいのか,焦点がよく定まっていな…

ジョン・クラカワー『空へ:悪夢のエヴェレスト1996年5月10日』山と溪谷社(ヤマケイ文庫)

ヤマケイ文庫 空へ-「悪夢のエヴェレスト」1996年5月10日作者:ジョン・クラカワー山と溪谷社Amazon 『多様性の科学』で引用されていた本。1996年5月にエヴェレストで12人と登山者が遭難死した事象を克明に記録したもので,『多様性の科学』では強すぎるリー…

ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史:文明の構造と人類の幸福』河出書房新社

サピエンス全史(下) 文明の構造と人類の幸福 サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福作者:ユヴァル・ノア・ハラリ河出書房新社Amazon サピエンス全史(上) 試し読み増量版 文明の構造と人類の幸福作者:ユヴァル・ノア・ハラリ河出書房新社Amazon サピエン…

アラン・ブーロー『鷲の紋章学:カール大帝からヒトラーまで』平凡社

鷲の紋章学―カール大帝からヒトラーまで作者:アラン ブーロー平凡社Amazon この種の文献がとかく動物のさまざまな象徴的・寓意的意味を列挙するのにとどまるのに対し,本書は,中世初期から現代までの歴史のなかで鷲の形象がどのような政治的機能を帯び,い…

森護『ヨーロッパの紋章:紋章学入門』河出書房新社(シリーズ紋章の世界)

ヨーロッパの紋章―紋章学入門 (シリーズ紋章の世界)作者:森 護河出書房新社Amazon 著者最初の著書であり,本邦最初の本格的西洋紋章学入門書。カバレッジの広さ,記述の深さ,著者の意気込みにおいて,本書を越えるものはないのではないか。惜しむらくは,本…

森護『西洋の紋章とデザイン』ダヴィッド社

西洋の紋章とデザイン作者:森 護ダヴィッド社Amazon これぞまさに自分が求めていた本だ。 「基礎編」では紋章の起原をといたあと,その単語(構成要素)と文法(組み合わせ方)を述べる。「応用編」では,紋章を使用・作成したい日本人に向けて,所有権や著…

森護『紋章学辞典』大修館書店

紋章学辞典作者:森 護大修館書店Amazon 図版が豊富だった「事典」*1 とは対照的に,こちらは本物の「辞典」。なので通読するものではないが,冒頭の「紋章概論」はとても分かりやすく,初学者の一読に値する。 紋章の組み合わせ(marshalling)やディファレ…

スティーヴン・スレイター『〈図説〉紋章学事典』創元社

【図説】紋章学事典作者:スティーヴン・スレイター創元社Amazon 訳者あとがきでこう述べられている: 欧米の書店には紋章(学)のコーナーがあることは常識であるし,日本でも紋章関係の書物が多数上梓されてきた。/本書はそれらの中でも網羅性の点では群を…

大西康之『起業の天才!:江副浩正8兆円企業リクルートをつくった男』東洋経済新報社

起業の天才!: 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男作者:大西 康之東洋経済新報社Amazon 著者の見立てとしては,リクルートを創業した江副浩正は,GoogleやAmazon(AWS)に匹敵する構想を遥か前に構想していたほど先見の明があったものの,お目付け役と…

木村正俊『スコットランド通史:政治・社会・文化』原書房

スコットランド通史:政治・社会・文化作者:木村 正俊原書房Amazon 日本人が書いたスコットランドの歴史を読む意味があるのかとか,この著者が監訳したというT・Cスマウト『スコットランド国民の歴史』(原書房)なる本がある中でこの本の存在意義はどこにあ…

アラン・パジェス『ドレフュス事件:真実と伝説』法政大学出版局(叢書・ウニベルシタス)

ドレフュス事件: 真実と伝説 (叢書・ウニベルシタス)作者:アラン・パジェス法政大学出版局Amazon 初めて『失われた時を求めて』を読んだときから(かれこれ20年ほど前か?),ドレフュス事件についてはいつかちゃんと読みたいと思っていたけど,ついにその時…

朝日新聞取材班『秘録 退位改元:官邸VS.宮内庁の攻防1000日』朝日新聞出版

秘録 退位改元 官邸VS.宮内庁の攻防1000日作者:朝日新聞取材班発売日: 2019/10/18メディア: Kindle版 「退位」と「改元」をめぐる秘話/裏話/攻防/朝日新聞取材班の自分語り. 退位については,当時の天皇陛下,現在の上皇陛下の「ただ『象徴』としてある…

カート・アンダーセン『ファンタジーランド:狂気と幻想のアメリカ500年史』東洋経済新報社

前に上巻の半分ぐらい(つまり全体の1/4とか1/3ぐらい)を読んだだけだったけど,なぜか気になって再読してみた. ファンタジーランド 【合本版】―狂気と幻想のアメリカ500年史作者:カート アンダーセン東洋経済新報社Amazon ファンタジーランド(上): 狂…

松戸清裕『ソ連史』筑摩書房(ちくま新書)

ソ連史作者:松戸清裕筑摩書房Amazon 比較的少ないページ数(253)でソ連の歴史を述べたからなのか,もともとこの筆者がこういう書き方をするからなのか,たまに意味がとても取りにくい文章が出てくる.例えば, 指導者であるレーニンがソヴェト権力樹立を訴…

松崎隆司『ロッテを創った男 重光武雄論』ダイヤモンド社

たまったまこの本の存在を知って,表紙を見て名著の予感しかしなかったんだけど,その予感は的中した。 ロッテを創った男 重光武雄論作者:松崎 隆司発売日: 2020/11/25メディア: Kindle版 いや,ロッテの創業者である重光武雄については何も知らなかったけど…

田澤耕『物語 カタルーニャの歴史:知られざる地中海帝国の興亡』中央公論社(中公新書)

上司がカタルーニャ人だからこの本を手にとってみたのだけど…… 物語 カタルーニャの歴史 増補版-知られざる地中海帝国の興亡 (中公新書)作者:田澤 耕中央公論新社Amazon 著者いわく「(カタルーニャの)中世は,まさに劇場さながらの面白さ」でありながら,…

モードリス・エクスタインズ『春の祭典:第一次世界大戦とモダン・エイジの誕生』みすず書房

何なんだ,この本は。 春の祭典 新版――第一次世界大戦とモダン・エイジの誕生作者:モードリス・エクスタインズみすず書房Amazon というか,そもそもどこでこの本の存在を知ったか覚えてなくて(何か書評で目にしたか,あるいは単に『春の祭典』――僕が子供の…

ミシェル・ヴィノック『ミッテラン : カトリック少年から社会主義者の大統領へ』吉田書店

ミッテラン――カトリック少年から社会主義者の大統領へ作者:ミシェル・ヴィノック吉田書店Amazon そもそも「第五共和政」すら何を指すか分からなかった僕に対しては,とてもいいイントロだった。 文章が簡素にして洗練。翻訳が,そしてきっと原文も。 「後年…

河合秀和『チャーチル : イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版』中央公論社(中公新書)

非常によくまとめられているんだけど,非常によくまとめられているだけに,チャーチルという人間のアラが目について,「それでこの人,何がそんなに凄いんだったっけ」という印象を持つに至るという…。 チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 …

浅見雅男『皇族と天皇』筑摩書房(ちくま新書)

思ってた*1のと違ってたな(というか,そういうの立ち読みするときに確認しろって感じなんですが)。 皇族と天皇 (ちくま新書1224)作者:浅見 雅男筑摩書房Amazon あとがきにあるように「本書は明治以降の皇族の姿を事実に即してながめることを通じ,日本近現…

池上英洋『イタリア 24の都市の物語』光文社(光文社新書)

イタリア 24の都市の物語 (光文社新書)作者:池上 英洋光文社Amazon思ってたのと違うけど,これはこれでいい気がしてきた。というか,読むほどにだんだん惹きつけられていく…。293.7