Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

哲学 Philosophy

哲学,心理学,倫理学,宗教

鈴木正崇『山岳信仰:日本文化の根底を探る』中央公論新社(中公新書)

山岳信仰 - 日本文化の根底を探る (中公新書)作者:鈴木 正崇中央公論新社Amazon 鳥海山西方こ遊佐の海岸では(冬のあいだに降り積もった雪が)海底湧水となって牡蠣をはじめ海の幸を育てる。 最澄と空海が導入した山林仏教,特に密教と山岳信仰の融合が,仏…

坂本尚志『バカロレアの哲学:「思考の型」で自ら考え、書く』日本実業出版社

バカロレアの哲学 「思考の型」で自ら考え、書く作者:坂本尚志日本実業出版社Amazon プロローグ バカロレアの哲学試験は「自由な思考」ができるかどうかを見る試験ではありません。 実際にバカロレア試験が試すのは,「思考の型」がマスターされているかどう…

鈴木宏昭『私たちはどう学んでいるのか:創発から見る認知の変化』筑摩書房(ちくまプリマー新書)

表面をひっかく程度の記述しかないが,新書という形式上しょうがない。そのかわり,各章末に参考文献が紹介されている。 〈練習による上達〉と〈発達〉と〈ひらめき〉とが,同じメカニズムで捉えられているのが興味深い。 私たちはどう学んでいるのか ――創発…

下条信輔『サブリミナル・マインド:潜在的人間観のゆくえ』中央公論社(中公新書)

サブリミナル・マインド 潜在的人間観のゆくえ (中公新書)作者:下條信輔中央公論新社Amazon 現代の心理学のセントラルドグマ(中心教義)「人間は自分で思っているほど,自分の心の動きをわかってはいない」 心の動き=知覚 情動 行動の本当の理由 本当とは…

A.R.ルリヤ『偉大な記憶力の物語:ある記憶術者の精神生活』岩波書店(岩波現代文庫)

偉大な記憶力の物語――ある記憶術者の精神生活 (岩波現代文庫)作者:A.R.ルリヤ岩波書店Amazon 面白いは面白いんだけど……「だから何?」という感覚はどこまでもついてまわる。 141.34 : 普通心理学.心理各論 偉大な記憶力の物語 : ある記憶術者の精神生活 (岩…

マイケル・ポランニー『暗黙知の次元』筑摩書房(ちくま学芸文庫)

暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫)作者:マイケル ポランニー筑摩書房Amazon 概念的な話が延々とつづくんだけど,ポランニーに興味を持ってない自分が読むべき本ではなかった。 いちばん面白かったのは,冒頭のここ: 私が哲学の諸問題に目覚めるきっかけになっ…

マーヴィン・ミンスキー『心の社会』産業図書

心の社会作者:Marvin Minsky,マーヴィン・ミンスキー産業図書Amazon ミンスキーによる「ぼくのかんがえたさいきょうのこころのりろん」ってところ。訳者あとがきによれば, ミンスキー教授の示す理論は,society of mind(心の社会)という考え方を軸として…

キャロル・S・ドゥエック『マインドセット:「やればできる!」の研究』草思社

マインドセット「やればできる! 」の研究作者:キャロル・S・ドゥエック草思社Amazon 要するにマインドセットには二種類あって,「硬直マインドセット=fixed mindset」と「しなやかマインドセット=growth mindset」。 硬直マインドセットの人は,人間の才能…

大貫隆『聖書の読み方』岩波書店(岩波新書)

聖書の読み方 (岩波新書)作者:大貫 隆岩波書店Amazon 〈聖書の読み方〉といいつつも〈聖書の読みにくさ〉に焦点を当てている,ユニークな本。著者の言葉を借りれば,他の本は〈聖書という電車に乗った人〉がその面白さを述べているのに対して,本書は〈聖書…

千葉雅也『現代思想入門』講談社(講談社現代新書)

現代思想入門 (講談社現代新書)作者:千葉雅也講談社Amazon ここで言う「現代思想」とは,一九六〇年代から九〇年代を中心に,主にフランスで展開された「ポスト構造主義」の哲学を指しています。フランスを中心としたものなのですが,日本ではしばしば,それ…

ダニエル・カーネマン, オリヴィエ・シボニー, キャス・R・サンスティーン『NOISE:組織はなぜ判断を誤るのか? 上』早川書房

NOISE 上 組織はなぜ判断を誤るのか?作者:ダニエル カーネマン,オリヴィエ シボニー,キャス R サンスティーン早川書房Amazon 「人間の判断にはノイズとバイアスがある」ということで,そのノイズに焦点を当てた本。冒頭に例として出てくるのは,裁判…

ニコラス・ハンフリー『喪失と獲得:進化心理学から見た心と体』紀伊國屋書店

喪失と獲得―進化心理学から見た心と体作者:ニコラス ハンフリー紀伊國屋書店Amazon どうしてこの本を読もうと思ったのか覚えてないし,読んだあともこれが何だったのかよく分からない。進化心理学者が心と体とかについて書いたエッセイを集めたものなんだけ…

中村圭志『教養としての宗教入門:基礎から学べる信仰と文化』中央公論新社(中公新書)

教養としての宗教入門 - 基礎から学べる信仰と文化 (中公新書)作者:中村 圭志中央公論新社Amazon 包括的でコンパクト。冷めた視線で宗教を熱く見る。まさにこんな本を読みたかった,という感じ。 本書が想定している読者は,宗教に関心はあるのだが,別に信…

マルコム・グラッドウェル『天才!成功する人々の法則』講談社

天才! 成功する人々の法則作者:マルコム・グラッドウェル講談社Amazon 〈天才〉についての話だけが出てくるわけではないし,〈成功する人々〉の話だけが出てくるわけでもない。そういう意味でこの邦題は徹頭徹尾ずれているけれど,原題も『Outliers: The Sto…

J.J.ギブソン『生態学的知覚システム:感性をとらえなおす』東京大学出版会

生態学的知覚システム―感性をとらえなおす作者:ギブソン,ジェームズ・J.,J. J. ギブソン東京大学出版会Amazon ギブソンが〈アフォーダンス〉という語を最初に用いたのがこの本らしいんだけど,「何なんだろう,この本は?」という印象しか持たない。〈完成を…

アトゥール・ガワンデ『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?:重大な局面で"正しい決断"をする方法』晋遊舎

アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】作者:アトゥール ガワンデ晋遊舎Amazon 「〈チェックリスト〉をビジネスの世界に応用できるかな?」という邪な気持ちで読んでみたけれど,そういう期待は裏切られ…

戸田山和久『哲学入門』筑摩書房(ちくま新書)

哲学入門 (ちくま新書)作者:戸田山 和久筑摩書房Amazon どこで本書の存在を知ったか忘れたけれど,いやーいいものを読んだ。自然科学的世界像の中に哲学を埋めこもうとする試み。自分にとってまったく知らなかった世界で,スリリング。〈こころ〉の世界にと…

トッド・ローズ『平均思考は捨てなさい : 出る杭を伸ばす個の科学』早川書房

平均思考は捨てなさい──出る杭を伸ばす個の科学 (早川書房)作者:トッド ローズ早川書房Amazon 〈平均思考〉を批評し〈個性学〉を推進する著者。それがよくあるエリートな経歴であれば説得力も半減するところだが, 私はユタ州のオグデンで大学生活を始めたと…

ピエール・テイヤール・ド・シャルダン『現象としての人間』みすず書房

現象としての人間【新版】 新装版作者:ピエール・テイヤール・ド・シャルダンみすず書房Amazon たしか『多様性の科学』の中で言及されていた本だと思うけど,どういう文脈でだったか忘れてしまった。そしてその文脈が頭にないと,なかなか頭に入ってこない――…

アダム・ガリンスキー, モーリス・シュヴァイツァー『競争と協調のレッスン:コロンビア×ウォートン流組織を生き抜く行動心理学』TAC出版

競争と協調のレッスン コロンビア×ウォートン流 組織を生き抜く行動心理学 (T's BUSINESS DESIGN)作者:アダム・ガリンスキー,モーリス・シュヴァイツァーTAC出版Amazon それなりに面白い内容だけど,本としての〈底の浅さ〉をどうしても感じてしまう。考えら…

マシュー・サイド『多様性の科学:画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織』ディスカヴァー・トゥエンティワン

多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織作者:マシュー・サイドディスカヴァー・トゥエンティワンAmazon 非常に示唆的であった。「なぜ多様性が重要かというと,多様性のあるチームの方がいいチームになりうるから」ということが…

入不二基義『哲学の誤読:入試現代文で哲学する!』筑摩書房(ちくま新書)

哲学の誤読 ―入試現代文で哲学する! (ちくま新書)作者:入不二 基義筑摩書房Amazon 刺激的な本である。ユニークな知的刺激が得られる。これを読み終えたからといって日常生活やら仕事やらに一切のメリットはないはずだけど,でもこういう本を「理解できるよ…

D・カーネギー『人を動かす』創元社

人を動かす 文庫版作者:D・カーネギー創元社Amazon とにかく読み物として面白い。エピソードが満載なのだが,それもそのはず,「彼は,新聞,雑誌,裁判記録をはじめ,心理学書,哲学書,その他,人間関係の問題に関連のある書物を片っ端から調べ上げ,助手…

深井智朗『プロテスタンティズム:宗教改革から現代政治まで』中央公論新社(中公新書)

プロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで (中公新書)作者:深井 智朗中央公論新社Amazon 本書を読むのは2回目だ。再び読もうと思ったのは,カート・アンダーセン『ファンタジーランド』*1の影響だと思う――そこではアメリカを創ったプロテスタントが…

大田俊寛『オウム真理教の精神史:ロマン主義・全体主義・原理主義』春秋社

オウム真理教の精神史―ロマン主義・全体主義・原理主義作者:大田 俊寛春秋社Amazon ずっと読みたかった本,ようやく読んだ。著者のいうように,「本書はおそらく,オウム論としてはかなり異色のものになるのではないだろうか。オウムに直接関係していること…

スーザン・ケイン『内向型人間の時代 : 社会を変える静かな人の力』講談社

内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力作者:スーザン・ケイン講談社Amazon 流し読みした印象では,本書は「外向型であることが強迫観念になっている国」の人向けに書かれたものだということ。本書のメッセージとしては「内向型であることはネガティブな…

ジョナサン・ハイト『社会はなぜ左と右にわかれるのか:対立を超えるための道徳心理学』紀伊國屋書店

社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学作者:ジョナサン・ハイト紀伊國屋書店Amazon タイトルで損してないか? 「左と右」なので政治の話がメインに思ったけど,実際には深くて広い道徳心理学の話だった――政治における「左と右の対立…

E.P.サンダース『パウロ』教文館(コンパクト評伝シリーズ)

パウロ作者:E.P.サンダース教文館Amazon 岩波新書の『パウロ:十字架の使徒』を読んでいたおかげで,この本に何が書かれているかは分かるようになったが,それでもこの本が何を言いたいのかは分からなかった(内容が専門的で)。 著者E.P.サンダースは,「初…

青野太潮『パウロ:十字架の使徒』岩波書店(岩波新書)

パウロ 十字架の使徒 (岩波新書)作者:青野 太潮岩波書店Amazon なんでパウロについて読もうと思ったかというと,竹田青嗣『ニーチェ入門』に以下のような記述があったから。 ルサンチマンから発した「善悪」という「僧侶的評価様式」をはじめに作り出したの…

M. ヘンゲル『イエスとパウロの間』教文館(聖書の研究シリーズ)

イエスとパウロの間 (聖書の研究シリーズ)作者:マルティン ヘンゲル教文館Amazon 原初キリスト教をパウロがいかに世界宗教に広めたかってことを知りたくて手当たり次第に本を手に取ってみたけど,こいつは専門的すぎた…。 キリスト教は、なぜ瞬く間に世界的…