Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

マイケル・ポランニー『暗黙知の次元』筑摩書房(ちくま学芸文庫)

概念的な話が延々とつづくんだけど,ポランニーに興味を持ってない自分が読むべき本ではなかった。

いちばん面白かったのは,冒頭のここ:

私が哲学の諸問題に目覚めるきっかけになったのは,スターリン時代のソビエト・イデオロギーにつまづいたことである。そのイデオロギーは,科学的探求に正当性を認めていなかった。私は,一九三五年,モスクワでブハーリンと交わした会話をいつまでもおぼえている。当時彼は,失脚と三年後の処刑に向かって崖を転がり落ちようとしていたのだが,依然として共産党の理論派を指導する立場に踏みとどまっていた。私がソビエト・ロシアにおける純粋科学について質問すると,彼は,純粋科学は階級社会の病的兆候なのだと言う。つまりブハーリンは,社会科学のもとでは,純粋科学,すなわち自己目的化された科学という概念などは消えてなくなるだろう,なぜなら科学者の関心は目下五カ年計画が抱える諸問題へと自発的に振り向けられるだろうから,と述べたのだ。

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暗黙知の次元 (筑摩書房): 2003|書誌詳細|国立国会図書館サーチ