Dribs and Drabs

ランダムな読書歴と音楽にまつわる備忘録

文学 Literature

トーマス・C・フォスター『大学教授のように小説を読む方法 増補新版』白水社

池澤夏樹のは作家側からの読解だったが,こちらは批評家側からの読解。合わせて読むと面白い。重なる部分は少ないけれど,その少ない重なった部分が,池澤夏樹が「小説は〈世界〉を描く」といったところ,フォスターが「ストーリーはひとつ」といってところ…

W.S.モーム『世界の十大小説』岩波書店(岩波文庫)

池澤夏樹の本を本屋で目にしたとき,当然思い浮かべたのが,これ。この本自体は福田和也だったかの本で知ったような……。 この中に最初に紹介されてるのがトム・ジョーンズ『ヘンリー・フィールディング』だけど,それを読んでいるのを見た安藤さんが,「おま…

池澤夏樹『世界文学を読みほどく:スタンダールからピンチョンまで』新潮社(新潮選書)

池澤夏樹の小説って読んだことがなかったけど,この本は面白かった。作家という立場から他の小説を読みほどく。場(世界)があって人物があって,それで小説は〈世界〉を描く,という話。作者の視線(神の立場なのか,登場人物たちと同一の地平にいるのか)…

シド・フィールド『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと:シド・フィールドの脚本術』フィルムアート社

映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術作者:シド・フィールドフィルムアート社Amazon この本を読むまでシド・フィールドって名前聞いたこともなかったんだけど,「国際的評価を得る脚本家」らいし。しかもサム・ペキンパ…

ビル・ブライソン『シェイクスピアについて僕らが知りえたすべてのこと』日本放送出版協会

シェイクスピアについて僕らが知りえたすべてのこと作者:ビル ブライソン日本放送出版協会Amazon 『人体大全』のビル・ブライソン*1の著作。やっぱりこの人の本は面白い。 訳者あとがきにあったけれど,とある評論家はビル・ブライソンのことを「彼の才能は…

ジョナサン・カラー『文学理論』岩波書店(1冊でわかる)

文学理論 (〈1冊でわかる〉シリーズ)作者:ジョナサン・カラー岩波書店Amazon 文学理論が語られるのより〈理論〉について語られる方が多いという印象。 こういう〈文学理論〉を理解したいという欲はずっと・常にあるのだけど,いい加減あきらめて〈文学〉その…

ニール・スティーヴンスン『スノウ・クラッシュ』早川書房(ハヤカワ文庫)

スノウ・クラッシュ〔新版〕 上 (ハヤカワ文庫SF)作者:ニール スティーヴンスン早川書房Amazon スノウ・クラッシュ〔新版〕 下 (ハヤカワ文庫SF)作者:ニール スティーヴンスン早川書房Amazon あぁ,自分はもう小説が読めない体になってしまったのか……。最初…

レーモン・クノー『文体練習』朝日出版社

文体練習作者:レーモン・クノー朝日出版社Amazon 久しぶりに読んでみた。気づいたのは,訳者(朝比奈弘治*1)による〈あとがき〉が,本文に勝るとも劣らないぐらい面白いということだ。 すぐれた書物というものは普通,豊かな内容を格調の高い文体で表現した…

橋本陽介『物語論 基礎と応用』講談社(講談社選書メチエ)

物語論 基礎と応用 (講談社選書メチエ)作者:橋本陽介講談社Amazon これまでに読んだこの手の本の中では,いちばん良かった。前半は理論編で,フランス構造主義時代の物語論を紹介。後半は分析編で,具体的な小説や漫画や映画の「おもしろさ」のポイントを分…

斎藤一郎『ゴンクール兄弟とその時代』水声社

ゴンクール兄弟とその時代作者:斎藤一郎水声社Amazon この本は,エドモン・ド・ゴンクールのいう「人を陶然とさせるパリの生活特有のあの熱気」,その風俗,文人,画家たちの野心に満ちた生活,成熟するブルジョア層の活動,娼婦の皆さんの生態,貴婦人を始…

スティーヴン・キング『書くことについて』小学館(小学館文庫)

書くことについて (小学館文庫)作者:スティーヴン キング小学館Amazon 内容を要約すれば,「(いい小説を書きたければ)いっぱい読んで,いっぱい書け。正直に書け。簡素に書け。ドアを閉めて書いて,そしてドアを開けて書け」ということになる。 面白いエピ…

山根明敏『テクスト探究の軌跡:ヘンリー・ジェイムズ、レイモンド・カーヴァー、村上春樹』大阪教育図書

テクスト探究の軌跡―ヘンリー・ジェイムズ、レイモンド・カーヴァー、村上作者:山根明敏大阪教育図書Amazon 図書館の新刊コーナーでたまたま目にしたので読んでみた。序文にある以下の文が気になったからだ: 何故今精読なのか。筆者は過去数十年間にわたる…

ポール・オースター『リヴァイアサン』新潮社(新潮文庫)

リヴァイアサン (新潮文庫)作者:ポール オースター新潮社Amazon 事実と虚構を混ぜ合わせることを/許可してくれたソフィ・カルに感謝する。/――作者 冒頭にの献辞のひとつにこんなものがあるように,「事実と虚構」の混濁はこの小説の大きな特徴であり,それ…

ポール・オースター『偶然の音楽』新潮社(新潮文庫)

偶然の音楽 (新潮文庫)作者:ポール オースター新潮社Amazon 久しぶりにオースターの小説を読んだ。こないだ友人との会話でポーカーの話になり,それで思い出したのだ。 出だしが最高で,すでに破滅の予感に満ちている: まる一年のあいだ,彼はひたすら車を…

R・L・リプレー『世界奇談集:ウソのような本当の話』河出書房新社(河出文庫)

世界奇談集―ウソのような本当の話 (河出文庫)河出書房新社Amazon もともと『「偶然」の統計学』で知ったんだったかな,この本。 ほんとサブタイトルのとおり「ウソのような本当の話」が満載で,暇つぶしで読むにはもってこいである。 934

カフカ『変身』新潮社(新潮文庫)

変身 (新潮文庫)作者:フランツ・カフカ新潮社Amazon 国内線に乗る前に機内で読むものがないのに気づいて,空港内の本屋で買ったんだったっけな。過去に何度か読んでいるはずで,それでいて印象に残っていない,特に結末がどんなか覚えていないし,いま読み直…

保坂和志『考える練習』大和書房

考える練習作者:保坂 和志大和書房Amazon 『ニヒリズムとテクノロジー』を読んで,「大人になったら誰しも自分の好きな哲学者をひとりぐらい持っているもんだと思っていたけどそうじゃないってことに気づいた」みたいなことを保坂さんが言ってたのを思い出し…

ウラジーミル・ナボコフ『ディフェンス』河出書房新社

ディフェンス作者:ウラジーミル・ナボコフ河出書房新社Amazon 「ドストエフスキーの小説は最初の100ページさえ乗り越えればあとは圧倒的に面白い」という経験則が自分の中ではあるんだけど,278ページのこの小説は,半分読んでも(ルージンがトゥラチとの対…

ウンベルト・エーコ『フーコーの振り子』文藝春秋

フーコーの振り子 上 (文春文庫)作者:ウンベルト エーコ文藝春秋Amazon フーコーの振り子 下 (文春文庫)作者:ウンベルト エーコ文藝春秋Amazon 最初の10ページぐらい読んだけど,何も頭に入ってこない。面白いんだろうけど…。 973

ロバート・マッキー『ストーリー:ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』フィルムアート社

もう20年以上も前,大阪・プラネットプラスワンの富岡さんがふとつぶやいた「最近の映画は画面ごとの情報量が少ない」ってぼやいていた言葉の意味,この本を読んでわずかながら理解できるような気がしてきた. ストーリー作者:ロバート・マッキーフィルムア…

レマルク『西部戦線異状なし』新潮社(新潮文庫)

『春の祭典』の中で言及されていたので…。 モードリス・エクスタインズ『春の祭典:第一次世界大戦とモダン・エイジの誕生』みすず書房 - Dribs and Drabs 西部戦線異状なし (新潮文庫)作者:レマルク新潮社Amazon たしかにのっけからメシとクソの話で,そこ…

福田和也『作家の値うち』飛鳥新社

何かの拍子で思い出して,改めて買って眺めてみたけど,今見ても面白いな。 作家の値うち作者:福田 和也飛鳥新社Amazon 作者の切迫感や使命感みたいなものが端的な文章にまとめられていて,なんとも痛快。小説に点数をつけるというアイデア,当時は(そして…

西原理恵子『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』KADOKAWA

どんな層がターゲットなんだ,この本。日本も広いな。 女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと作者:西原 理恵子KADOKAWAAmazon NDC10版による分類だと「159.6」。哲学 > 倫理学・道徳 > 人生訓・教訓 > 女性,ってことになるらしい。哲学の守備範囲…

城山三郎『官僚たちの夏』新潮社(新潮文庫)

面白いから一気に読めた。んだけど,なんだろうこの何とも言えない読後感は。 官僚たちの夏 (新潮文庫)作者:三郎, 城山新潮社Amazon バリバリ働けるのっていいですね/そんなに身を粉にして働いて何になるんですかね 当時の官僚の仕事ってやりがいがありそう…

「また御勉強?」|夏目漱石『明暗』より

「また御勉強?」 細君は時々立ち上がる夫に向かってこう云った.彼女がこういう時には,いつでもその語調のうちに或物足らなさがあるように津田の耳に響いた.ある時の彼は進んでそれに媚びようとした.ある時の彼はかえって反感的にそれから逃れたくなった…