Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

ロバート・マッキー『ストーリー:ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』フィルムアート社

もう20年以上も前,大阪・プラネットプラスワンの富岡さんがふとつぶやいた「最近の映画は画面ごとの情報量が少ない」ってぼやいていた言葉の意味,この本を読んでわずかながら理解できるような気がしてきた.

自分は脚本家ではないし今後も脚本を書くことはないだろうけど,この本は読んでよかったし,もっと早くに読むべき類の本だった.「映画にストーリーなんていらないだろ? 必要なのは映像と音(sight & sound)だけだ」なんて粋がっていたかつての自分を,この本でぶん殴りたい.

  • 脚本家の中には,方法論を学ぶと自然な発想ができなくなることを危惧して,技巧を学ぶことを拒む者もいる.その代わりに,無意識のうちに習慣となった融通のきかない流儀を本能だと思いこんでひた走る.だが,力強く驚きに満ちた独創的な作品を書くという夢がかなうことは,ほとんどない.
  • エンターテインメントとは,暗闇にすわってスクリーンを見つめ,多大な集中力とエネルギーを注いで向き合ってくれる人たちに対して,満足できる意義深い感情的体験を期待どおりに提供する儀式である.
  • 紋切り型のストーリーは停滞をともない,元型的なストーリーは旅をともなう.〔...〕映画界の名匠たちは,われわれが求めるふたつの出会いを提供してくれる.第一は未知の世界の発見だ.〔...〕第二に,いったんこの新奇な世界にはいれば,われわれはそこにいる自分自身を発見する.

901.27