Dribs and Drabs

ランダムな読書歴と音楽にまつわる備忘録

歴史的・地域的論述

三輪修三『工学の歴史:機械工学を中心に』筑摩書房(ちくま学芸文庫)

工学の歴史―機械工学を中心に (ちくま学芸文庫)作者:三輪 修三筑摩書房Amazon 著者が「まえがき」で強調しているように,確かに歴史を学ぶことは有用であり,「工学の成果を鵜呑みにするだけでは創造性は養われない」んだろうけど,では工学の歴史を学ぶにあ…

佐道明広『自衛隊史:防衛政策の七〇年』筑摩書房(ちくま新書)

自衛隊史: 防衛政策の七〇年 (ちくま新書)作者:佐道 明広筑摩書房Amazon 教義の自衛隊史にとどまらず,日本の安全保障,日米関係(安保),本土と沖縄との関係,そして民主主義というものを俯瞰し,そしてそれらについて考えさせられるという,非常に骨太な…

中澤渉『日本の公教育:学力・コスト・民主主義』中央公論社(中公新書)

日本の公教育 - 学力・コスト・民主主義 (中公新書)作者:中澤 渉中央公論新社Amazon 内容的にちょっと肩透かし....むしろ「日本の公教育を検討・分析するためのフレームワーク」といったところで,概念的な話が多かった. 話としては,教育には正の外部性が…

吉田敦『アフリカ経済の真実:資源開発と紛争の論理』筑摩書房(ちくま新書)

Twitterで見かけたので読んでみた. アフリカ経済の真実 ──資源開発と紛争の論理 (ちくま新書)作者:吉田敦筑摩書房Amazon 先進国が「開発」という名のもとで結果的にアフリカの人々を不幸にしている,アフリカにはダイヤモンドなどや石油などの資源が豊富に…

渡辺将人『メディアが動かすアメリカ:民主政治とジャーナリズム』筑摩書房(ちくま新書)

『ファンタジーランド』の流れで読んでみたけど,これはこれで濃密な本だった. メディアが動かすアメリカ ――民主政治とジャーナリズム (ちくま新書)作者:将人, 渡辺筑摩書房Amazon 本当はもっと軽い感じの(テレビがトランプ大統領を生んだとか,右メディア…

スイス政府『民間防衛:あらゆる危険から身を守る』原書房

Bookishなら必ずその存在を知っているであろうこの本。ようやく手にとってみた。 民間防衛ーあらゆる危険から身をまもる原書房Amazon 思っていたのとちょっと違っていたというか,最初は結構なページを割いて「精神論」を語っていて,たとえば われわれは,…

伊東順子『韓国 現地からの報告:セウォル号事件から文在寅政権まで』筑摩書房(ちくま新書)

韓国 現地からの報告 (ちくま新書)作者:伊東 順子筑摩書房Amazon 面白くて一気に読んでしまった。 本当にタイトル通りで「韓国,現地からの報告」だし,それがカバーするのは「セウォル号事件から文在寅政権」までの時期(つまりはここ6-7年)だし。 何が面…

深尾京司『世界経済史から見た日本の成長と停滞:1868-2018』岩波書店

何を思ったか妻が買ってた(知人に勧められたらしい)。 世界経済史から見た日本の成長と停滞――1868-2018 (一橋大学経済研究叢書 67)作者:深尾 京司岩波書店Amazon 著者が「はしがき」で述べるように,「本書の目的は,このような日本の経済発展を,長期的な…

清水唯一朗『近代日本の官僚:維新官僚から学歴エリートへ』中央公論社(中公新書)

近代日本の官僚 - 維新官僚から学歴エリートへ (中公新書)作者:清水 唯一朗中央公論新社Amazon 思ってたのと違ってた…。この「思ってたのと違ってた」感,この本のときと同じだ。 浅見雅男『皇族と天皇』筑摩書房(ちくま新書) - Dribs and Drabs 原題の官…

福田和也『作家の値うち』飛鳥新社

何かの拍子で思い出して,改めて買って眺めてみたけど,今見ても面白いな。 作家の値うち作者:福田 和也飛鳥新社Amazon 作者の切迫感や使命感みたいなものが端的な文章にまとめられていて,なんとも痛快。小説に点数をつけるというアイデア,当時は(そして…

ルイス・ウォルパート, アリスン・リチャーズ 著, 青木薫, 近藤修 訳『科学者の熱い心 : その知られざる素顔』講談社(ブルーバックス)

科学者の熱い心―その知られざる素顔 (ブルーバックス)作者:ウォルパート,ルイス,リチャーズ,アリスン講談社Amazon これ,名著じゃん。 BBCの番組がもとになっているみたいだけど,さすがBBC。 402.8

松岡亮二『教育格差 : 階層・地域・学歴』筑摩書房(ちくま新書)

Twitterだけ見てるとすごい流行ってるし大名著みたいに見えるんですけど, 教育格差 ──階層・地域・学歴 (ちくま新書)作者:松岡亮二筑摩書房Amazon まぁ確かに「教育格差」を生んでいる構造を丁寧・丹念に記述しているのはそうなんだけど,穿った見方をすれ…

朱建栄『江沢民の中国:内側から見た「ポスト鄧小平」時代』中央公論社(中公新書)

1994年に出版されたこの本。「過渡期の中国を分析するこの本の寿命は二・三年かも」と謙遜しているが,なかなかどうして,今(2020年)に読んでも十分に面白かった。 江沢民の中国―内側から見た「ポスト〓@68B0小平」時代 (中公新書)作者:朱 建栄中央公論社A…

小熊英二『日本社会のしくみ:雇用・教育・福祉の歴史社会学』講談社(講談社現代新書)

小熊英二が現代的(と思えた)テーマに取り組んだのは意外に思えたけど,序章を読んだらやっぱりこれは小熊英二による小熊英二らしい本なんだなと思えた。あいかわらず「真面目」で「膨大」である。 日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社…

藤原正彦『遥かなるケンブリッジ:一数学者のイギリス』新潮社(新潮文庫)

遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス (新潮文庫)作者:正彦, 藤原新潮社Amazon藤原正彦に関してはこれまで「その顔と髪で<品格>とか語るなよ」と思ってたし*1,そもそも数学者としての実績ってどうなのよと思ってたけど,このケンブリッジ滞在記は面白…

日本再建イニシアチブ『民主党政権失敗の検証:日本政治は何を活かすか』中央公論社(中公新書)

『現代日本の地政学』に続いて,日本再建イニシアチブの書いたものを読んでみました。民主党政権 失敗の検証 - 日本政治は何を活かすか (中公新書)作者:日本再建イニシアティブ中央公論新社Amazonこの本が出版されたのが2013年9月。そこから民主党は民進党へ…

清水真人『財務省と政治:「最強官庁」の虚像と実像』中央公論社(中公新書)

財務省の文書改竄事件で盛り上がる今,読むべき本はこれでしょうと思って手に取りました。そういう意味で期待していた内容とは違っていたのですが,まぁそうじゃなくても面白かった。そのタイトル通り,財務省(あるいは旧大蔵省)が政治のプロセスにいかに…

近藤康史『分解するイギリス:民主主義モデルの漂流』筑摩書房(ちくま新書)

2年3ヶ月間のイギリス滞在中に,スコットランド独立とEU離脱とふたつのレファレンダムを目の当たりにすると,否が応でもイギリスの政治あるいはそのシステムに興味を持たざるをえなかったわけで,改めてこんな本を手に取ってみました。 分解するイギリス: 民…

田崎史郎『安倍官邸の正体』講談社(講談社現代新書)

安倍官邸の正体 (講談社現代新書) 作者: 田崎史郎 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2014/12/17 メディア: 新書 この商品を含むブログ (5件) を見る 財務官僚は極めて優秀であり,議員会館を回って議員とよく話している。その優秀さと熱心さにおいて,他の省…

中国の保険業界事情と規制(C-ROSS)について

中国保険業界事情と規制 CASから2ヶ月に1冊届けられる『actuarial review』という冊子に,中国の保険業界事情と規制(C-ROSS)について書かれていた論考があった。 著者は,Bo Huang。FCASで,KPMGチャイナのシニア・アクチュアリアル・マネージャー。北京を…

イギリスでのアクチュアリーの労働市場

小ネタ。イギリスでのアクチュアリーの労働市場がどんなものか,簡単に調べてみます。見たのは以下のサイト。 Actuarial Jobs in Londonhttp://www.theactuaryjobs.com/jobs/greater-london/ たとえば,こんなポジション Capital Modeling Actuary Sector Li…

寺澤辰磨「中南米経済の真実」

抜粋 一方のアルゼンチンは,現在急激な通貨切り下げ圧力を受け経済は停滞しているのに対し,コロンビアの通貨は安定し経済も良好に推移しています。 両国の経済政策の結果を比較するには,まず,第2次世界大戦後の国連ラテンアメリカ経済委員会(ECLAC)が…

柯隆「習近平政権下の中国経済」

抜粋 2013年6月と8月に中国に出張し,景気は経済統計より悪くなっていると実感した。その根拠として,広州から深圳までの間で見かけたコンテナトラックの数が1,2年前に比べて激減している。数%という減り方ではなく何分の1という感じである。広州−深圳高速…