1994年に出版されたこの本。「過渡期の中国を分析するこの本の寿命は二・三年かも」と謙遜しているが,なかなかどうして,今(2020年)に読んでも十分に面白かった。
実際,江沢民そのもの,あるいは鄧小平から江沢民への権力が移行する「過渡期」の状況を分析したのは半分もなくて,大半は,中国という国はどういう国で――鄧小平に次ぐ者として江沢民を選ぶようなバランス感覚を持った国でもある――,今後どうなっていくか,というところが記述されている。「1994年」というのもなかなか絶妙で,香港の中国返還を目前に控え,北朝鮮が核兵器不拡散条約(NPT)を脱退したばかり,といったように,東アジア地域全体の不透明さが増す状況なだけに,この本としてもやりがいがあると言うものだ。
しかしまぁ,この当時は「米中の橋渡し役として日本の存在意義がうんたら」という言われ方をしてたのだけど,日本の国力・経済力の低下によってそれもすっかり夢物語のように思えてしまうのが,なんとも悲しい。