Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

政治 Political science

池内恵『サイクス=ピコ協定百年の呪縛:中東大混迷を解く』新潮社(新潮選書)

【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)作者:池内 恵新潮社Amazon 池内センセいわく,中東の今の混乱の原因をサイクス=ピコ協定(だけ)に求める単純が言説が流布しているけれど,実際はそんな簡単なもんじゃない,ということで,本…

リチャード・ニクソン『指導者とは』文藝春秋(文春学藝ライブラリー)

指導者とは (文春学藝ライブラリー)作者:リチャード ニクソン文藝春秋Amazon どうしたことか「ニクソンがビジネスリーダーの資格について書いたもの」という先入観があって,しかし読んでみたら全然違うことが分かり――チャーチルとかドゴールとかマッカーサ…

前田健太郎『市民を雇わない国家:日本が公務員の少ない国へと至った道』東京大学出版会

市民を雇わない国家: 日本が公務員の少ない国へと至った道作者:前田 健太郎東京大学出版会Amazon 2015年のサントリー学芸賞〔政治・経済部門〕受賞*1で,非常にまっとうな学術書。「博士論文…に大幅な加筆・修正を施したもの」というだけで,どのような本か…

小泉悠『「帝国」ロシアの地政学:「勢力圏」で読むユーラシア戦略』東京堂出版

「帝国」ロシアの地政学 (「勢力圏」で読むユーラシア戦略)作者:小泉 悠東京堂出版Amazon ちくま新書の『現代ロシアの軍事戦略』は,著者のオタク的興味関心が詰まったーーそういう意味では好みが分かれるーー本であったのに対して,こちらはしかめつらしい…

ケネス・ウォルツ『人間・国家・戦争:国際政治の3つのイメージ』勁草書房

人間・国家・戦争: 国際政治の3つのイメージ作者:ケネス ウォルツ勁草書房Amazon 『国際紛争』*1で引用されていたやつ。戦争の原因を〈個人〉〈国家〉〈国際システム〉という3つの〈イメージ〉に体系化して考えようというのを主張したもの。含蓄深い・味わい…

クライブ・ハミルトン『目に見えぬ侵略:中国のオーストラリア支配計画』飛鳥新社

目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画作者:クライブ・ハミルトン,山岡鉄秀飛鳥新社Amazon 『侵食される民主主義』*1 *2で紹介されていた本。 著者が熱意を込めて本書を著したというのはよく分かる。相当なページ数で,二段組。取材が丹念で,情報が…

ラリー・ダイアモンド『侵食される民主主義:内部からの崩壊と専制国家の攻撃 下』勁草書房

侵食される民主主義 下: 内部からの崩壊と専制国家の攻撃作者:ラリー・ダイアモンド勁草書房Amazon 下巻も読了。上巻はビッグピクチャーを描いていたのに対して,下巻は細かい処方箋――特にアメリカにおいて民主主義を回復するための――といった様相を呈してく…

ドン・マントン, デイヴィッド・A・ウェルチ『キューバ危機:ミラー・イメージングの罠』中央公論新社

キューバ危機 - ミラー・イメージングの罠作者:デイヴィッド・A・ウェルチ中央公論新社Amazon 『国際紛争』で存在を知ったこの本。 本書を執筆した動機には,一九六二年のキューバ・ミサイル危機を扱った著作のうち国際関係論の入門的な授業で使え,読みやす…

ラリー・ダイアモンド『侵食される民主主義:内部からの崩壊と専制国家の攻撃 上』勁草書房

侵食される民主主義 上: 内部からの崩壊と専制国家の攻撃作者:ラリー・ダイアモンド勁草書房Amazon とりあえず上巻を読了。 サブタイトルで〈内部からの崩壊〉っていってるのの最たる例はドナルド・トランプ(を大統領に選出するに至ったアメリカの分断・選…

ジョセフ・S・ナイ・ジュニア, デイヴィッド・A・ウェルチ『国際紛争:理論と歴史』有斐閣

国際紛争 -- 理論と歴史 原書第10版作者:ジョセフ・S.ナイ ジュニア,デイヴィッド・A. ウェルチ有斐閣Amazon 今だから言えますが、1章、5章、10章の下訳をしたのは私です。7章には関わっておりませんが。 https://t.co/2yWaOeFKu1— Tetsuo Kotani / 小谷哲男…

ローレンス・ライト『倒壊する巨塔:アルカイダと「9.11」への道 下』白水社

倒壊する巨塔〈下〉―アルカイダと「9・11」への道作者:ローレンス ライト白水社Amazon 下巻になってアメリカ側が出てくる。その中心はジョン・オニール*1。FBI捜査官で,対テロ作戦部長で,早くからビンラディンに注目しており,しかしFBIをやめたあとはワー…

ローレンス・ライト『倒壊する巨塔:アルカイダと「9.11」への道 上』白水社

倒壊する巨塔〈上〉―アルカイダと「9・11」への道作者:ローレンス ライト白水社Amazon とりあえず上巻だけ。 ものすごい本である。「講釈師,見てきたような嘘をつき」というフレーズがあるけれど,この著者はまさに〈見てきたような〉臨場感とリアリティー…

トクヴィル『アメリカにおけるデモクラシーについて』中央公論新社(中公クラシックス)

アメリカにおけるデモクラシーについて (中公クラシックス)作者:トクヴィル中央公論新社Amazon 本書を開いて初めて分かったけれど,これはトクヴィルの原書の一部――「序」および第二部の第六章から第九章まで――を訳したにすぎないんだな。全訳は岩波文庫から…

君塚直隆『立憲君主制の現在:日本人は「象徴天皇」を維持できるか』新潮社(新潮選書)

立憲君主制の現在: 日本人は「象徴天皇」を維持できるか (新潮選書)作者:君塚 直隆新潮社Amazon 『社会はどう進化するのか』*1の訳者あとがきで訳者がこの本を紹介していた。「棚から牡丹餅」な良書だった。 本書は「イギリスで徐々に立憲君主制が形作られて…

宇野重規『民主主義とは何か』講談社(講談社現代新書)

民主主義とは何か (講談社現代新書)作者:宇野重規講談社Amazon (この書影の中の帯,ひでぇな) Twitterで見かけたので読んでみた。著者が「おわりに」でこう述べてる。 民主主義について過不足のない本を書いてみたい,そう思ってこの本を執筆しました。何…

牧野雅彦『精読アレント『全体主義の起源』』講談社(講談社選書メチエ)

精読 アレント『全体主義の起源』 (講談社選書メチエ)作者:牧野 雅彦講談社Amazon アレントの本を読む前にこちらで準備しておこうと思ったが,まったく頭に入ってこない。エキサイティングな感じがしない。アレントの本に問題があるのか,この本に問題がある…

羅芝賢『番号を創る権力:日本における番号制度の成立と展開』東京大学出版会

番号を創る権力: 日本における番号制度の成立と展開作者:羅 芝賢東京大学出版会Amazon 交換留学生として韓国から日本に2005年に初めてやってきたという著者の博士学位取得論文に加筆訂正を行なったものという本書。「あとがき」には,2013年に区役所で転入届…

バラク・オバマ『約束の地 下:大統領回顧録 1』集英社

約束の地 大統領回顧録 I 下作者:バラク・オバマ集英社Amazon オバマケアとかパリ協定とかギリシャ危機とかメキシコ湾原油流出とか中東問題とかビン・ラディン殺害とか,次から次へと難題に対処していくオバマの活劇といったところ。相変わらず緩急(ハード…

大嶽秀夫『ニクソンとキッシンジャー:現実主義外交とは何か』中央公論社(中公新書)

ニクソンとキッシンジャー 現実主義外交とは何か (中公新書)作者:大嶽秀夫中央公論新社Amazon 「現実主義外交とは何か」について,著者は冒頭でこう要約する. 国際政治については日本人も,それが熾烈な競争の場であり,各国が自らの利益を追求する中で諸外…

バラク・オバマ『約束の地 上:大統領回顧録 1』集英社

約束の地 大統領回顧録1 上 (集英社学芸単行本)作者:バラク・オバマ集英社Amazon 本を読むのは他人の人生を体験することだ,みたいなことを誰かが言ってたと思うけど,アメリカ合衆国大統領という唯一無二の職についた人間が書いた自叙伝には,さまざまな「…

パスカル・ボニファス『最新世界情勢地図』ディスカヴァー・トゥエンティワン

増補改訂版 最新 世界情勢地図作者:パスカル・ボニファス,ユベール・ヴェドリーヌディスカヴァー・トゥエンティワンAmazon 装丁は綺麗になされているし,多く掲載されている地図も眺めていて楽しいんだけど,各項目に対する文章は「キャプション」程度の量し…

原彬久『戦後史のなかの日本社会党:その理想主義とは何であったのか』中央公論社(中公新書)

戦後史のなかの日本社会党 その理想主義とは何であったのか (中公新書)作者:原彬久中央公論新社Amazon 読んだのに記録してなかったな. 牧久『昭和解体 : 国鉄分割・民営化30年目の真実』講談社 - Dribs and Drabs これを読んだあとで,こんどは社会党の側か…

デイヴィッド・ライアン『監視文化の誕生:社会に監視される時代から、ひとびとが進んで監視する時代へ』青土社

どこでこの本の存在を知ったんだっけ? そもそも自分は「監視」なんかに興味あったんだっけ? 監視文化の誕生 社会に監視される時代から、ひとびとが進んで監視する時代へ作者:デイヴィッド・ライアン青土社Amazon しかし「監視文化」を考える際に,『一九八…

清水唯一朗『近代日本の官僚:維新官僚から学歴エリートへ』中央公論社(中公新書)

近代日本の官僚 - 維新官僚から学歴エリートへ (中公新書)作者:清水 唯一朗中央公論新社Amazon 思ってたのと違ってた…。この「思ってたのと違ってた」感,この本のときと同じだ。 浅見雅男『皇族と天皇』筑摩書房(ちくま新書) - Dribs and Drabs 原題の官…

善教将大『維新支持の分析:ポピュリズムか,有権者の合理性か』有斐閣

維新支持の分析 -- ポピュリズムか,有権者の合理性か作者:善教 将大有斐閣Amazon サントリー学芸賞政治・経済部門受賞作。 第41回サントリー学芸賞決定 - Dribs and Drabs なんだけど,同じような話がつづく印象,というか,構成に違和感あるというか。 あと…

朱建栄『江沢民の中国:内側から見た「ポスト鄧小平」時代』中央公論社(中公新書)

1994年に出版されたこの本。「過渡期の中国を分析するこの本の寿命は二・三年かも」と謙遜しているが,なかなかどうして,今(2020年)に読んでも十分に面白かった。 江沢民の中国―内側から見た「ポスト〓@68B0小平」時代 (中公新書)作者:朱 建栄中央公論社A…

細谷雄一『国際秩序:18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ』中央公論社(中公新書)

国際秩序 - 18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ (中公新書)作者:細谷 雄一中央公論新社Amazon細谷雄一らしい,参考文献が懇切に付与され,そして丁寧が議論がなされている本でありました。ただ,サブタイトルにある「18世紀ヨーロッパ」に関する記述が厚く…

鈴木美勝 『日本の戦略外交』筑摩書房(ちくま新書)

日本の戦略外交 (ちくま新書 1236)作者:鈴木 美勝筑摩書房Amazon高坂正堯『国際政治 - 恐怖と希望』中公新書のような「一般的」な本も面白いのであるが,あるいは福永文夫『日本占領史1945-1952 - 東京・ワシントン・沖縄』中公新書のような本で過去を知るの…

高坂正堯『国際政治:恐怖と希望』中央公論社(中公新書)

ここ(最近の読書を通じて思ったこと|主に「反権力の権力化」ついて - Dribs and Drabs)で書いた『外交感覚』の高坂正堯が,国際政治に関する自らの考えを「改めて」「一般的に」考えてまとめたのが,この『国際政治』であります。国際政治 - 恐怖と希望 (…

細谷雄一『安保論争』筑摩書房(ちくま新書)

「安保論争」といって,「1960年代の」ではなく「2015年の」,である。「集団的自衛権」という言葉だけが独り歩きした感のある2015年の「安全保障関連法」に関して肯定的な評価をする著者が,その必要性について,歴史的・現代的な背景を踏まえながら,丁寧…