Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

前田健太郎『市民を雇わない国家:日本が公務員の少ない国へと至った道』東京大学出版会

2015年のサントリー学芸賞〔政治・経済部門〕受賞*1で,非常にまっとうな学術書。「博士論文…に大幅な加筆・修正を施したもの」というだけで,どのような本かは想像できるだろうけど。まっとうすぎるので,僕のような薄っぺらい読者には面白みが感じられない。

本書の主張は「結論」の冒頭部分にまとめられているので,そこだけ引用しておく:

日本の公務員数が欧米先進国に比べて少ないのは,経済発展の早い段階で行政改革を開始し,その増加に歯止めをかけた結果である。そのような選択が行われた重要な理由として,本書は日本の政府が公務員の給与を抑制するための制度的な手段を欠いていたことに注目した。人事院勧告に基づく給与制度は,公務員の労働基本権に対する制約の代償として,その給与を保護する役割を果たす一方で,同時に財政的な制約に直面する政府の手を縛り,公務員を抑制するための行政改革に乗り出すことを早くから促したというのが本書の主張である。/この知見を念頭に置くならば,日本の公務員数が少ない理由を行政組織の効率性の高さに求める従来の見解は修正されなければならない。日本の公務員数が少ないのは,人員を増やす必要がなかったからではなく,むしろ必要な人員を増やさなかったからであるという可能性を本書は示唆しているからである。

あと日本の公務員数は本当に少ないらしい。〈公務員〉をどう定義するかーー政府系企業や外郭団体の職員まで含めるかどうかーーは難しい問題であり国際比較も困難だが,どう計算しても人口あたりの公務員数は日本は少ないんだってさ。

317.3

市民を雇わない国家 : 日本が公務員の少ない国へと至った道 (東京大学出版会): 2014|書誌詳細|国立国会図書館サーチ