Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

アンドリュー・ロス・ソーキン『リーマン・ショック・コンフィデンシャル 下:倒れゆくウォール街の巨人』早川書房(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

下巻で特に印象に残ったのは,ブリカス(イギリス政府及びバークレイズ,彼らの煮え切らなさで,リーマン破綻に向けた週末の奮闘が無に帰した)と,クリストファー・フラワーズ(有能かもしれないけど人間性に難あり),そして最後にひょこっと表れてモルガン・スタンレーを救った三菱UFJであった。

本書の原題の『too big to fail』,これってリーマンじゃなくてAIGのことだったじゃんって感じだけど,いやリーマンも本当はそうだったからこそ,「リーマン・ショック」と呼ばれる金融危機が発生したのかも。

んで,「リーマン・ショック」って結局なんだんだ?っていう問いには,エピローグがまとめて答えてくれる。

たった数か月のあいだに,ウォール街とグローバル金融システムは,すっかり様変わりした。かつての五大投資銀行は,それぞれ破産したり,身売りしたり,銀行持株会社に変わったりした。住宅ローンの二大企業と,世界最大の保険会社が政府の管理下に置かれた。そして一〇月初めには,大統領のペンが動き,財務省が――ひいてはアメリカの納税者が――かつて国の誇りだった金融機関の一部を所有することになった。ほんの数ヵ月前には,想定することすらむずかしい救済策だった。

「ショック」の一端は,「一貫性のなさ」だという。

たしかに,もし政府が何もせず,破産申請をする金融の巨人たちのパレードを眺めていたとしたら,実際よりはるかにひどい市場の大変動が起きたことだろう。一方で,連邦政府の官僚――ポールソンやバーナンキやガイトナーたち――の一貫性のない決断が,市場の混乱の原因となったことは否めない。ベア・スターンズにはセイフティネットを提供し,ファニーとフレディも救い,リーマンは破産させておいて,結局すぐあとでAIGを救済した。定型はあるのだろうか。規則は何なのか。何かあるようには思えず,投資家が混乱したとき――この会社は救済されるのか,そのまま破綻させられるのか,それとも国有化されるのか――当然ながら,パニックが生じた。

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