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ランダムな読書歴に成り果てた

野間幹晴『退職給付に係る負債と企業行動:内部負債の実証分析』中央経済社

いつもの図書館に行ったらたまたま目に入って…。

退職給付に係る負債が企業行動に与えるさまざまな影響とは。退職給付に係る負債の観点から日本企業がリスク回避的あるいは保守的であることを実証的に提示したうえで、企業年金制度とその経済的帰結について考察する。

ということなんだけど,本題のところはよくわからない(というか読み飛ばした)けど,日米の制度の比較というかアメリカの制度について知れたのは良かった。

  • 日本の企業年金には,アメリカのPBGCのような支払保証制度が存在しないのである。ただし,企業年金には年金資産が積み立てられているので,事実上,論点となるのは未積立の企業年金,すなわち退職給付債務と企業年金資産の差額である退職給付に係る負債である。したがって,他の債権者よりも優先される可能性はあるものの,従業員の受給権は外部の債権者と同じような利害を持つ。すなわち,日本企業を分析対象とする際に,倒産手続き等において論点になるのは未積立部分のみである。この未積立部分について,従業員は外部の債権者と類似したインセンティブを持つのである。
  • 破産法,民事再生法,会社更生法に基づく法的整理では,それぞれ企業年金に関する取扱いが異なる。
  • アメリカの場合,PBGCが加入者や受給権者に対し,支払保証事業を行っている。こうした支払保証制度は,アメリカ以外にも,カナダ,イギリス,ドイツ,スウェーデンなど,先進主要国では整備されている。
  • アメリカのPBGCは,政府機関であり,破綻した企業年金が積立不足の場合,加入者に対し,将来約束された年金給付を一定の上限まで保証している。一方,連合会の場合,保証要件が厳しく,保証の給付を受けづらいとの指摘があった。
  • 受給権保護を日米の法制度には大きな違いがある。すなわち,日本では一括拠出規定などを通じて受給権者保護が意図されているものの,必ずしも給付されるとは限らない。また,破綻時には債務者である企業にとって不利な制度となっている。一方,アメリカではPBGCの支払保証制度を通じて受給権が保護されている。破綻時においても債務者である企業にとって有利な制度であるといえよう。
  • 企業の年金に関するリスク回避行動について,確定拠出型やハイブリッド型への移行の他に,2012年より年金のバイアウトを行う事例が増えている。たとえば,GM,フォード,ベライゾン,モトローラ,フェデックスなどが挙げられる。バイアウトとは,年金給付の支払義務を資産とともに第三者に移転することであり,2000年代にイギリスで開始された。アメリカでは,年金債務の管理手法として保険会社に年金支給義務を移転することが多く,一時金支給により精算することもある。

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参考