Dribs and Drabs

ランダムな読書歴と音楽にまつわる備忘録

技術 Technology

工学,工業,家政学

福田和也『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである:コロナ禍「名店再訪」から「保守再起動」へ』河出書房新社

さすがに枯れたねぇ,福田和也。「枯れたのがまたいい」とかじゃなくて,ただ枯れてるし,ただもの悲しい。昔取った杵柄で文章書いてるだけ。「男はとんかつだと思っている」と言い切りながら,それを納得させるような文章がひとつも出てこない。「保守を自…

首都高速道路株式会社, 阪神高速道路株式会社 ほか『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』講談社

高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法講談社Amazon まさに〈鑑賞法〉であって,それぞれのジャンクションをどこから見たらいいのか,どうやって写真を撮ったらいいのか,みたいな話。ジャンクションに対するフェティッシュな愛なのだが,一方で(僕がうっすら期…

伊藤亜紗『体はゆく:できるを科学する〈テクノロジー×身体〉』文藝春秋

体はゆく できるを科学する〈テクノロジー×身体〉 (文春e-book)作者:伊藤 亜紗文藝春秋Amazon プロローグ 「できるようになる」の不思議 バーチャル空間で体験したことも,それがいかに現実には「ありえない」ことであったとしても,何ら遜色ない「経験値」…

Bent Flyvbjerg, Dan Gardner『How Big Things Get Done: The Surprising Factors Behind Every Successful Project, from Home Renovations to Space』Macmillan

How Big Things Get Done: The Surprising Factors That Determine the Fate of Every Project, from Home Renovations to Space Exploration and Everything In Between (English Edition)作者:Flyvbjerg, Bent,Gardner, DanCrown CurrencyAmazon ソフトウ…

鷲田清一『モードの迷宮』筑摩書房(ちくま学芸文庫)

モードの迷宮 (ちくま学芸文庫)作者:鷲田 清一筑摩書房Amazon 『東京80年代から考えるサブカル』に出てきていたので読んでみた。昔読んだことがあるかもしれないな……と思いつつ。 〈モード〉をめぐる抽象的でペダンティックな思考を書き連ねたもので,なんと…

池上雅夫『東名高速道路』中央公論社(中公新書)

東名高速道路 (1969年) (中公新書)Amazon こないだ東名高速を走ったので,読んでみた。出版が1969年,東名高速がいよいよ開通するというタイミングで,実際に建築に関わった当本人――日本道路公団東名高速道路部長兼技術部長(当時)――が著した本ということで…

都市建築TOKYO編集委員会『都市建築TOKYO:超高層のあけぼのから都市再生前夜まで』鹿島出版会

都市建築TOKYO――超高層のあけぼのから都市再生前夜まで作者:都市建築TOKYO編集委員会鹿島出版会Amazon 面白そうだなと思って手にとってみたけれど,なんだかよく分からない。いや,その界隈の人にすれば大層価値のある書物なのかもしれないが,門外漢にとっ…

小澤匡行『1995年のエアマックス』中央公論新社(中公新書ラクレ)

1995年のエア マックス (中公新書ラクレ)作者:小澤匡行中央公論新社Amazon 『東京スニーカー史』の著者による,セルフ二番煎じ/セルフ焼き直し/セルフ矮小化にしか思えない。そもそも「AIR MAX 95」に関する記述はごく一部なのに,どうしてこのタイトルに…

藤岡雅『保身:積水ハウス、クーデターの深層』KADOKAWA

保身 積水ハウス、クーデターの深層 (角川書店単行本)作者:藤岡 雅KADOKAWAAmazon 丹念に取材し,熱く綴られている。それだけに,読めば読むほど不可解さが募る。たしかに「保身」という言葉が,この事件の要約としてはいちばんいいのかもしれない。 高齢と…

小澤匡行『東京スニーカー史』リットーミュージック

東京スニーカー史 (立東舎)作者:小澤 匡行立東舎Amazon 「なぜ〈エアマックス95〉に多くの日本人が熱狂したのか」については,誰も言及していない。この一抹の不思議に端を発し,それがこの本の取材の原動力になっている。 Air Max 95 は本書のクライマック…

アシックススポーツ工学研究所『足と靴の科学』日刊工業新聞社(B&Tブックス.おもしろサイエンス)

足と靴の科学 (おもしろサイエンス)作者:(株)アシックス スポーツ工学研究所日刊工業新聞社Amazon 国会図書館は「491.198」で港区図書館は「589.25」と分類が分かれている。しかし「はじめに」では 本書はこのように足の動きをサポートする靴について,足に…

森川潤『グリーン・ジャイアント:脱炭素ビジネスが世界経済を動かす』文藝春秋(文春新書)

グリーン・ジャイアント 脱炭素ビジネスが世界経済を動かす (文春新書)作者:森川 潤文藝春秋Amazon 洋上風力発電とかESG投資とかテスラとか代用肉とか,「脱炭素」をめぐるいまの状況が,バランスよく記述されている。現状のスナップショットを眺めたい人に…

NHKメルトダウン取材班『福島第一原発事故の「真実」』講談社

福島第一原発事故の「真実」作者:NHKメルトダウン取材班講談社Amazon 『失敗の本質』に通ずるものがあると思うけど,あちらはなんとなく「昔の人がやったこと」と切り離して考えがちで,こちらは記憶に新しい事象だけに,リアリティーをもって読めるんじゃな…

鈴木信弘『片づけの解剖図鑑:心地よい住まいをつくりだす仕組み』エクスナレッジ

片づけの解剖図鑑作者:鈴木信弘エクスナレッジAmazon 『住まいの解剖図鑑』の二匹目のドジョウを狙った本かと思うんだけど,違う著者だったんだな。 「片づけの解剖図鑑」とはいうもののコンマリ的な話ではなく,「家の中が片付かないとしたら,それはそれな…

増田奏『住まいの解剖図鑑:心地よい住宅を設計する仕組み』エクスナレッジ

住まいの解剖図鑑作者:増田 奏エクスナレッジAmazon どういうかたちでこの本に出会ったかまったく覚えてないんだけど,でもとても面白いと思ったなぁ(その証拠に今でも保持している)。 「はしがき」で著者が述べているように,本書は「そもそも住宅設計を…

里見真三『すきやばし次郎 旬を握る』文藝春秋

すきやばし次郎 旬を握る (文春文庫)作者:里見 真三文藝春秋Amazon この単行本の初版2刷を持ってる。この本の醍醐味は原寸大のマグロのサクの写真だと思うから,単行本のほうがいいよね。 次郎も何も知らないで買って読んだ本だけど,まぁ面白かったですね。…

北村行孝, 三島勇『日本の原子力施設全データ : 「しくみ」と「リスク」を再確認する』講談社(ブルーバックス)

日本の原子力施設全データ 完全改訂版 「しくみ」と「リスク」を再確認する (ブルーバックス)作者:北村行孝,三島勇講談社Amazon 第1部が「原子力発電の基本を知る」,第2部が「日本の原子力施設データ」,第3部は「原子力事故にどう備えるか:放射線防護から…

CUSTOMIZE KICKS MAGAZINE編集部『HOW TO KICKS RESTORE:スニーカーレストアブック』グラフィック社

HOW TO KICKS RESTORE スニーカーレストアブック作者:CUSTOMIZE KICKS MAGAZINE編集部グラフィック社Amazon ジャンクに近い過去の名作スニーカーを,レストアして甦らせる。「ソールスワップ」といって,古いアッパーに新品のソールを持ってきてそれらを合体…

村尾隆介『ミズノ本:世界で愛される“日本的企業”の秘密』ワニブックス

ミズノ本 - 世界で愛される“日本的企業”の秘密 -作者:村尾 隆介ワニブックスAmazon とにもかくにも,ミズノ本に『ミズノ本』って名前をつけちゃう芸のなさね。 文中に何度も「僕が」が出てくるんだけど,だったら最初にこの著者が何者なのかを記すべきだと思…

木村研, やまねあつし『作って遊ぶ!忍者になるおもちゃ図鑑』講談社ビーシー

作って遊ぶ! 忍者になるおもちゃ図鑑作者:木村 研,やまね あつし講談社ビーシーAmazon 息子が伊賀上野に旅行する前に,「予習」と称して図書館で借りた本。忍者が主人公の漫画仕立てで,その忍者の武器みたいなおもちゃを工作するための作り方がいっぱい載っ…

山田克哉『原子爆弾:その理論と歴史』講談社(ブルーバックス)

原子爆弾―その理論と歴史 (ブルーバックス)作者:山田 克哉講談社Amazon サブタイトル通り「理論と歴史」がみっちりと詰まっており,472ページもあるの飽きさせず読ませる。まさにブルーバックスといったところの本である。 559.7 原子爆弾 : その理論と歴史 …

吉中司『ジェット・エンジンの仕組み:工学から見た原理と仕組み』講談社(ブルーバックス)

ジェット・エンジンの仕組み―工学から見た原理と仕組み (ブルーバックス)作者:吉中 司講談社Amazon 著者いわく ジェット・エンジンに関する本と言えば,熱サイクル的に同じである地上用や船舶用ガスタービンに関するものも含めれば,日本語の書だけでも,今…

小林敏勝『塗料大全』日刊工業新聞社(技術大全シリーズ)

技術大全シリーズ 塗料大全作者:小林敏勝日刊工業新聞社Amazon 『プレス加工大全』がガッツリ物理学だったとすれば,この『塗料大全』はガッツリ化学。一応わたくし,入試で有機化学が有名な大学の理学部に入ったはずなんだけど,もうさっぱり覚えていないと…

吉田弘美『プレス加工大全』日刊工業新聞社(技術大全シリーズ)

プレス加工大全 (技術大全シリーズ)作者:吉田 弘美日刊工業新聞社Amazon 興味本位だけで手に取ったものの,なかなか面白い。 著者のプレス加工にかける熱意,そして本書にかける熱意が最初から感じられて,それは以下の文章に現れていると思う。 これまでプ…

柴田久『土木の仕事ガイドブック:日常をつくるプロフェッショナル』学芸出版社

土木の仕事ガイドブック :日常をつくるプロフェッショナル作者:柴田 久学芸出版社Amazon 自分と「土木」との関わりといえば,1)いまやってる仕事の隣接領域であると同時に,2)抽象的な数字を扱うだけの自分の仕事とは対照的な領域であり,3)在宅勤務して…

三輪修三『工学の歴史:機械工学を中心に』筑摩書房(ちくま学芸文庫)

工学の歴史―機械工学を中心に (ちくま学芸文庫)作者:三輪 修三筑摩書房Amazon 著者が「まえがき」で強調しているように,確かに歴史を学ぶことは有用であり,「工学の成果を鵜呑みにするだけでは創造性は養われない」んだろうけど,では工学の歴史を学ぶにあ…

ニコラス・スミス『スニーカーの文化史:いかにスニーカーはポップカルチャーのアイコンとなったか』フィルムアート社

スニーカーの文化史 いかにスニーカーはポップカルチャーのアイコンとなったか作者:ニコラス・スミスフィルムアート社Amazon イノベーション,スポーツへの貢献,スポーツの大衆化,スニーカーのカルチャー化,スニーカーにまつわる犯罪と労働問題と,話はだ…

Sam Grawe『Nike: Better is Temporary』Phaidon

Nike: Better is Temporary作者:Grawe, SamPhaidon PressAmazon 発売早々Phaidonのサイトで買ったのに,いつのまにかAmazonで買えるようになっていたぜ…。 まさに「Nikeのデザイン哲学に迫るビジュアルブック」*1で,いろんなシューズの写真を眺めているだけ…

関東学院大学材料・表面工学研究所『めっき大全』日刊工業新聞社(技術大全シリーズ)

めっき大全 (技術大全シリーズ)日刊工業新聞社Amazon 近所の図書館の新刊コーナーに置かれていて,「あぁそういえば前に買って眺めていたなぁ」と。ゴルフクラブのめっきについて知りたくて買ったものだったけど,そういう初学者の軽い気持ちを打ち砕くぐら…

フィル・ナイト『SHOE DOGS:靴にすべてを。』東洋経済新報社

SHOE DOG(シュードッグ)―靴にすべてを。作者:フィル・ナイト東洋経済新報社Amazon 圧倒的に面白いんだけど,その反面,人生半ば固まった中年男がこういう本をどういう気持ちで読めばいいんだろう,とも思う。純粋なエンターテインメントとして消化…