Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

池上雅夫『東名高速道路』中央公論社(中公新書)

こないだ東名高速を走ったので,読んでみた。出版が1969年,東名高速がいよいよ開通するというタイミングで,実際に建築に関わった当本人――日本道路公団東名高速道路部長兼技術部長(当時)――が著した本ということで,何よりもまずその高揚感・達成感・瑞々しさが伝わってくる。

東名高速道路は,難工事のために残っていた大井松田‐御殿場間二五・八キロメートルの完成を最後として,昭和四十四年五月二十六日,いよいよ全線が開通する。これによって名神高速道路と直結し,東京‐西宮間五三六・4キロメートルがつながり,日本経済の中枢部,東海道メガロポリスを貫く新しい交通動脈が誕生することになる。第一次施工命令が下ってからちょうど満七年,戦前,弾丸道路の高層が生まれてから数えるとほぼ三十年の歳月をけみした。

全体にわたって東名高速道路に関する技術的な説明であるが,高速道路は果たしてどのようなものか/どのようなものであるべきか,それを支える構造はどのようなものかといったことが,丁寧にかつ本気で説明されている。ルート選定に関する思索と検討,橋(構造物)やトンネルにまつわる難工事,透明の名所ともいえる浜名湖サービスエリアなどについても記されており,建設に関わったすべての関係者に頭が下がる思いであると同時に,こういったかたちに残る/実際に人々の役に立つものを建設した人々を尊敬する。

514.7

東名高速道路 (中央公論社): 1969|書誌詳細|国立国会図書館サーチ