Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

仲正昌樹『東京80年代から考えるサブカル:ストリート・音楽・ファッション・宗教・現代思想』図書新聞

良くも悪くも〈素人くさい作り〉の本である。

良い意味での〈素人くささ〉,それは内容の雑多さ――サブタイトルに象徴されるように――と,それによって興味深いミクロな話がたまに出てくること。

  • 80年代にDCブランドブームがあったけどそれはメディアが盛り上げてるだけで,大学だとサーファー(の格好をしているやつ)がモテてたとか
  • 人間はどのように新しいものを認識するかというと,一般的なパターンとしては「古いものかエキゾチックなもののどちらか」とか
  • 東京で流行ったものが地方に伝播するときに〈ズレ〉が生じて,それを中心部に持っていくとそこでまた何かに変化するとか
  • セゾン文化は〈後追い〉で,「その前にムーブメントがあって,それを拾って付加価値をつけていく」スタイルだったとか
  • 宮沢章夫が「レコードにポップを付けるのはWAVEから始まった」って書いているけど,WAVEにはそんなにレコードがあったわけじゃないし,ポップなんてどこのレコード屋に行ってもあったとか
  • とんがったことをやろうとするのはインテリで,本当に生活が苦しい人はとんがったこと自体求めようとしない,パンク自体もやらないだろうとか
  • 仲正昌樹は寿司が嫌いとか

悪い意味での〈素人くささ〉,それは主に校正の問題。具体例は細かくあげないけれど,編集者はゲラをちゃんと見てるのか疑問に思わせる箇所が散見される――読点が重なってるとか,ゴシック体にすべきところが明朝体のままとか――のと,本文でも読点の打ち方が下手で読みづらい箇所があるのとか,注釈の付け方に一貫性がないとか,横書きの注釈のページの想定が雑――行間詰まりすぎ――とか。

361.5

東京80年代から考えるサブカル : ストリート・音楽・ファッション・宗教・現代思想 (図書新聞): 2021|書誌詳細|国立国会図書館サーチ