Dribs and Drabs

ランダムな読書歴と音楽にまつわる備忘録

自然科学 Natural scicences

数学,理学,医学

高橋雅紀『分水嶺の謎:峠は海から生まれた』技術評論社

今年の夏に北海道に行ったときに観光ガイドから分水嶺の話を聞いたもので、それでこの本を読んでみた。 そんな軽い興味で読むには深すぎる内容だったというか、自分はそこまで〈地形〉に興味が(今のところは)ないんだなってことが分かったけれど、著者のパ…

中野珠実『顔に取り憑かれた脳』講談社(講談社現代新書)

帯にこの著者(美人)の顔写真が載っている時点で勝ちじゃないかな,この本。中身的にはそれほど個性的なものはないというか,テーマに沿って研究結果を紹介していくというかたち。 顔に取り憑かれた脳 (講談社現代新書 2731)作者:中野 珠実講談社Amazon は…

志賀浩二『微分・積分30講』朝倉書店(数学30講シリーズ)

志賀浩二先生の訃報に接し,30講シリーズを改めて眺めてみようと思う。で,シリーズ最初の『微分・積分』。〈数と数直線〉という初歩的なところから始めて,テイラー展開とそのもつ深淵な意味合いを感じさせるところまで持っていってくれる。Tee Timeで述べ…

ハーマン・ポンツァー『運動しても瘦せないのはなぜか:代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」』草思社

昔々,BRUTUSのムックか何かで「ジョギングで痩せる」みたいなやつがあって,それはつまり 摂取エネルギーより消費エネルギーが多ければ痩せる 運動すれば消費エネルギーが増やせる だからジョギングすれば痩せる というロジックに基づいた内容だった。 それ…

マシュー・ホンゴルツ・ヘトリング『リバタリアンとトンデモ医療が反ワクチンで手を結ぶ話:コロナ禍に向かうアメリカ、医療の自由の最果ての旅』原書房

タイトル(だけ)につられて読んでみようと思った私が悪うございました。 いや,タイトルだけ見たら,なにか今日的で普遍的な現象とか課題とかが書かれているもんだと思ったんだけど,実際は過去の個別の人物の物語だったという。 リバタリアンとトンデモ医…

マルチェッロ・マッスィミーニ, ジュリオ・トノーニ『意識はいつ生まれるのか:脳の謎に挑む統合情報理論』亜紀書房

いろんな意味でユニーク。「中央の章を挟んで云々」はさておき,「医学生が実際に脳を触った」という実体験がベースにあってその事実に根ざしているのもそうだし,「意識を〇〇と定義して,実物の脳がその理論に合致してるかどうかを検証している」という点…

アダム・クチャルスキー『感染の法則:ウイルス伝染から金融危機、ネットミームの拡散まで』草思社

感染の法則:ウイルス伝染から金融危機、ネットミームの拡散まで作者:アダム・クチャルスキー草思社Amazon 興味深い内容――〈感染〉をキーワードにさまざまなジャンルを横断する――だし,信頼感のある記述――コロナ前に書き始められた(コロナに便乗してない)…

佐藤俊哉『宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ』岩波書店(岩波科学ライブラリー)

宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ (岩波科学ライブラリー)作者:佐藤 俊哉岩波書店Amazon Twitterでこの本の存在をたまたま知ったけど,非常に幸運だった。内容はコンパクトで例もシンプルでありながら,医療統計がどんなものかというエッセンスがしっかりと…

Martin Gardner『ガードナー傑作選集:ゲーム、パズル、マジックで知る娯楽数学の世界:楽しみながら知性の鍛錬』森北出版

楽しみながら知性の鍛錬 ガードナー傑作選集 - ゲーム,パズル,マジックで知る娯楽数学の世界作者:Martin Gardner森北出版Amazon 〈娯楽数学〉を謳うにはレベルが高いなと思うというか,これを〈娯楽〉として楽しめるだけの知性は自分にはありませんって話な…

イアン・ハッキング『数学はなぜ哲学の問題になるのか』森北出版

数学はなぜ哲学の問題になるのか作者:イアン・ハッキング森北出版Amazon ざっと眺めてみたけれど,自分にとってはどうでもいい本だった。訳者のひとりが〈訳者あとがき〉で,本書に対するいくつかの書評――「その評価は思ったほど芳しいものではない」と認め…

竹山美宏『定理のつくりかた』森北出版

定理のつくりかた作者:竹山 美宏森北出版Amazon 本書は高校生を対象にした公開講座の内容をもとにしているだけに,数学的な内容は初等幾何・初等整数論に留まっており,そういう意味では物足りなさがある。意欲的な高校生が大学入試に向けてしっかりとした記…

ビル・ブライソン『人類が知っていることすべての短い歴史』日本放送出版協会

人類が知っていることすべての短い歴史(上)(新潮文庫)作者:ビル・ブライソン新潮社Amazon 人類が知っていることすべての短い歴史(下)(新潮文庫)作者:ビル・ブライソン新潮社Amazon 人類が知っていることすべての短い歴史作者:ビル ブライソン日本放…

ビル・ブライソン『人体大全:なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか』新潮社

人体大全―なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか―作者:ビル・ブライソン新潮社Amazon めっちゃ面白いですね,これ。図書館で人気なのもよく分かるわ。人体についてのありとあらゆることが書かれている。事実と歴史とが膨大に詰め込まれてい…

アンドレ・ルロア=グーラン『身ぶりと言葉』筑摩書房(ちくま学芸文庫)

身ぶりと言葉 (ちくま学芸文庫 ル 6-1)作者:アンドレ ルロワ=グーラン筑摩書房Amazon これもなんでこの本の存在を知ったのか覚えてないんだけど……。要するに進化論の話で,その内容は裏表紙が見事に要約している: 人類の進化の本質とは,突き詰めてみれば何…

ジャック・チャロナー『ATOM:世界で一番美しい原子事典』SBクリエイティブ

ATOM 世界で一番美しい原子事典作者:ジャック・チャロナーSBクリエイティブAmazon たしかにビジュアルがふんだんに使われてはいるけれど,〈世界で一番美しい〉は言いすぎじゃない? というか,本のタイトルには景表法が適用されないんですね。 429.1 ATOM :…

シャロン・バーチュ・マグレイン『異端の統計学ベイズ』草思社

異端の統計学 ベイズ作者:シャロン・バーチェ・マグレイン草思社Amazon 〈異端の統計学〉ねぇ……。センセーショナルな邦題をつけたかったのかもしれないけど,ちょっと違うと思うんだよな。 原題は "The Theory That Would Not Die: How Bayes' Rule Cracked …

ローレンス・ワインシュタイン, ジョン・A・アダム『フェルミ推定力養成ドリル』草思社(草思社文庫)

文庫 フェルミ推定力養成ドリル (草思社文庫 ワ 1-1)作者:ローレンス・ワインシュタイン,ジョン・A・アダム草思社Amazon 自分がコンサルファームの面接を受けているときにこの本が世に存在していたら――していたのかもしれないけど――熟読していたかもしれない…

フィリップ・オーディング『1つの定理を証明する99の方法』森北出版

1つの定理を証明する99の方法作者:フィリップ・オーディング森北出版Amazon レイモン・クノー『文体練習』にインスパイアされた作品で,二番煎じで終わるのかなぁと思ったけど,そうでもなかった。 クノーのがひとりの男の物語のバリアントであるのに対して…

ジョセフ・ヘンリック『文化がヒトを進化させた:人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉』白揚社

文化がヒトを進化させた作者:ジョセフ・ヘンリック,今西康子白揚社Amazon 原題は『The Secret of Our Success: How Culture Is Driving Human Evolution, Domesticating Our Species, and Making Us Smarter』。ここで〈文化〉といっているのは音楽とか芸術…

デイヴィッド・スローン・ウィルソン『みんなの進化論』日本放送出版協会

みんなの進化論作者:デイヴィッド スローン ウィルソン日本放送出版協会Amazon 装丁も文章も翻訳もちゃんとしてて,参考文献もボリュームしっかりしているのに,なんだか物足りない。進化論にまつわる興味深いエピソード――しかしどこかで聞いたことがあるよ…

大栗博司『探究する精神:職業としての基礎科学』幻冬舎(幻冬舎新書)

探究する精神 職業としての基礎科学 (幻冬舎新書)作者:大栗博司幻冬舎Amazon 明らかにマックス・ヴェーバーを意識しただろう大業なサブタイトルとは裏腹に,本書の大部分は大栗先生の自分語り――子供のころから今に至るまで何を見て何を読んで何を考えてどう…

チャールズ・ダーウィン『種の起原』朝倉書店

種の起原 (原書第6版)作者:チャールズ・ダーウィン朝倉書店Amazon いつかは原典にあたりたいと思って読んでみたけど,すいません,気持ちが続きませんでした。2段組で500ページ近い濃密な紙面。それでいて図がひとつしか登場しないというのが,時代の違い…

Nicholas B.Davies, John R.Krebs, Stuart A.West『デイビス・クレブス・ウェスト行動生態学』共立出版

デイビス・クレブス・ウェスト 行動生態学 原著第4版作者:N.B.Davies,J.R.Krebs,S.A.West共立出版Amazon たしかにこれはすごい本だ。このテーマに関することならなんでもこの本に書かれているだろうと思わせる,包括的で決定的な教科書だ。 Tinbergenの4つの…

北村雄一『大人の恐竜図鑑』筑摩書房(ちくま新書)

大人の恐竜図鑑 (ちくま新書)作者:雄一, 北村筑摩書房Amazon 「恐竜に興味を持った子供に対抗するためにこの本で知識をつけよう」と思ったけど,もしかしたら対象読者はもうちょっと狭くて,「子供のころに恐竜少年だった大人が,知識を深化/アップデートさ…

アントニオ・R・ダマシオ『デカルトの誤り:情動、理性、人間の脳』筑摩書房(ちくま学芸文庫)

デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳 (ちくま学芸文庫)作者:アントニオ・R・ダマシオ筑摩書房Amazon よく知られるフィネアス・ゲージの話――鉄道施設現場で事故が起き,鉄棒が前頭部を貫通,それによって性格と行動が一変した――の出どころ。いろんな本で目にし…

小室直樹『数学嫌いな人のための数学:数学原論』東洋経済新報社

数学嫌いな人のための数学―数学原論作者:小室 直樹東洋経済新報社Amazon はいはい,おじいちゃん,いろいろ知っててすごいですねー。 「はじめに」の最初の見開きでいやな予感をさせて,ページが進むにつれてその予感を確信に変えていくスタイル。すごい。 4…

キット・イェーツ『生と死を分ける数学:人生の〈ほぼ〉すべてに数学が関係するわけ』草思社

生と死を分ける数学: 人生の(ほぼ)すべてに数学が関係するわけ作者:キット イェーツ,冨永 星 (翻訳)AudibleAmazon 奇をてらったタイトルだけど,中身はよくある感じ。一般的な読者の情感に訴えたいからか,各トピックをある個人のエピソード――たとえばチェル…

森毅『すうがく博物誌:美しい数学2+3』童話屋

すうがく博物誌 (美しい数学2+3)作者:森 毅童話屋Amazon 自分は何を読まされているんだろう,という気になる。 『悪魔の辞典』風とでもいえばいいのか,あいうえお順に並べられたさまざまな用語・概念・人物――「アキレスと亀」「エントロピー」「Q.E.D.」な…

デイヴィッド・サルツブルグ『「誤差」「大間違い」「ウソ」を見分ける統計学』共立出版

「誤差」「大間違い」「ウソ」を見分ける統計学作者:デイヴィッド・サルツブルグ共立出版Amazon もしかした本書内には統計に関して本質的で有益なものが含まれているのかもしれないけれど,自分のような不真面目な読者――斜め読みをするだけの――はそれを見い…

大栗博司『強い力と弱い力:ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く』幻冬舎(幻冬舎新書)

強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く (幻冬舎新書)作者:大栗博司幻冬舎Amazon 『重力とは何か』はいまいちピンとこなかったけど,こっちは面白く読めた。自分にとって知らない話が多いからかもしれない。 ヒッグス粒子の意義を理解するには…