Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

Nicholas B.Davies, John R.Krebs, Stuart A.West『デイビス・クレブス・ウェスト行動生態学』共立出版

たしかにこれはすごい本だ。このテーマに関することならなんでもこの本に書かれているだろうと思わせる,包括的で決定的な教科書だ。

Tinbergenの4つの「なぜ」について本書内の早い段階で触れられていた。行動についての「なぜ」という疑問に対して4つの異なる答え方があるとTinbergenは主張したとのことで,例えば「なぜホシムクドリの雄は春にさえずるのか」という疑問に対して,

  1. 直接的原因からの答え。ホシムクドリがさえずるのは,日長が長くなったため体内ホルモンの変化が引き起こされるから。あるいは空気が発声器を通って声帯を震わせるから。
  2. 行動の発達あるいは個体発生からの答え。ホシムクドリは両親や周りの個体からさえずり方を学び,また同種のさえずりを学ぶような遺伝的傾向を持っている。そのため彼らはさえずる。
  3. 適応的利点あるいは機能からの答え。ホシムクドリは繁殖のため配偶者を引きつけようとしてさえずる。そのためさえずりは雄の繁殖成功を増加させる。
  4. 進化史あるいは系統発生からの答え。この答えは,今日のホシムクドリのさえずりは祖先からいかにして進化してきたかというもの。最も原始的な現存の鳥は非常に簡単な音を出すだけなので,ホシムクドリや他の鳥の複雑なさえずりは,より単純な祖先種の鳴き声から進化したと仮定してよいだろう。

と記されている。

481.7

デイビス・クレブス・ウェスト行動生態学 (共立出版): 2015|書誌詳細|国立国会図書館サーチ