Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史:文明の構造と人類の幸福』河出書房新社

「全史」といいつつ全史な感じがしない。

確かに「約200年前から1万年前ごろまで,この世界にはいくつかの人類種が存在し」,その中で「ホモ・サピエンスがほかのホモなんちゃら(ネアンデルターレンシスとかエレクトスとか)を征服した」というくだりは面白いんだけど,「その答えは『虚構』にある」と言い切られると,そんなに単純化していいのかよという気になる(他の進化心理学とか行動生態学とか道徳心理学とかの本と比較すると)。

キリスト教や民主主義,資本主義といった想像上の秩序の存在を人々に信じさせるにはどうしたらいいのか? まずその秩序が想像上のものだとは,けっして認めてはならない。

というような記述も,乱暴に思える。

原註に参考文献のようなものは挙げられているが,それも圧倒的に足りなく感じるんだよな。

一方で面白かったのは,サピエンスが狩猟から農耕生活にかわってハッピーになったかというとそうじゃない,という話。逆に労働時間は増えて,飢餓になるケースも増えた。要は「小麦に人間が飼われている」状態になった,というくだり。

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サピエンス全史 : 文明の構造と人類の幸福 (河出書房新社): 2016|書誌詳細|国立国会図書館サーチ