Dribs and Drabs

ランダムな読書歴と音楽にまつわる備忘録

数学 Mathematics

志賀浩二『微分・積分30講』朝倉書店(数学30講シリーズ)

志賀浩二先生の訃報に接し,30講シリーズを改めて眺めてみようと思う。で,シリーズ最初の『微分・積分』。〈数と数直線〉という初歩的なところから始めて,テイラー展開とそのもつ深淵な意味合いを感じさせるところまで持っていってくれる。Tee Timeで述べ…

アダム・クチャルスキー『感染の法則:ウイルス伝染から金融危機、ネットミームの拡散まで』草思社

感染の法則:ウイルス伝染から金融危機、ネットミームの拡散まで作者:アダム・クチャルスキー草思社Amazon 興味深い内容――〈感染〉をキーワードにさまざまなジャンルを横断する――だし,信頼感のある記述――コロナ前に書き始められた(コロナに便乗してない)…

Martin Gardner『ガードナー傑作選集:ゲーム、パズル、マジックで知る娯楽数学の世界:楽しみながら知性の鍛錬』森北出版

楽しみながら知性の鍛錬 ガードナー傑作選集 - ゲーム,パズル,マジックで知る娯楽数学の世界作者:Martin Gardner森北出版Amazon 〈娯楽数学〉を謳うにはレベルが高いなと思うというか,これを〈娯楽〉として楽しめるだけの知性は自分にはありませんって話な…

イアン・ハッキング『数学はなぜ哲学の問題になるのか』森北出版

数学はなぜ哲学の問題になるのか作者:イアン・ハッキング森北出版Amazon ざっと眺めてみたけれど,自分にとってはどうでもいい本だった。訳者のひとりが〈訳者あとがき〉で,本書に対するいくつかの書評――「その評価は思ったほど芳しいものではない」と認め…

竹山美宏『定理のつくりかた』森北出版

定理のつくりかた作者:竹山 美宏森北出版Amazon 本書は高校生を対象にした公開講座の内容をもとにしているだけに,数学的な内容は初等幾何・初等整数論に留まっており,そういう意味では物足りなさがある。意欲的な高校生が大学入試に向けてしっかりとした記…

シャロン・バーチュ・マグレイン『異端の統計学ベイズ』草思社

異端の統計学 ベイズ作者:シャロン・バーチェ・マグレイン草思社Amazon 〈異端の統計学〉ねぇ……。センセーショナルな邦題をつけたかったのかもしれないけど,ちょっと違うと思うんだよな。 原題は "The Theory That Would Not Die: How Bayes' Rule Cracked …

ローレンス・ワインシュタイン, ジョン・A・アダム『フェルミ推定力養成ドリル』草思社(草思社文庫)

文庫 フェルミ推定力養成ドリル (草思社文庫)作者:ワインシュタイン,ローレンス,アダム,ジョン・A.草思社Amazon 自分がコンサルファームの面接を受けているときにこの本が世に存在していたらーーしていたのかもしれないけどーー熟読していたかもしれないし,…

フィリップ・オーディング『1つの定理を証明する99の方法』森北出版

1つの定理を証明する99の方法作者:フィリップ・オーディング森北出版Amazon レイモン・クノー『文体練習』にインスパイアされた作品で,二番煎じで終わるのかなぁと思ったけど,そうでもなかった。 クノーのがひとりの男の物語のバリアントであるのに対して…

小室直樹『数学嫌いな人のための数学:数学原論』東洋経済新報社

数学嫌いな人のための数学―数学原論作者:小室 直樹東洋経済新報社Amazon はいはい,おじいちゃん,いろいろ知っててすごいですねー。 「はじめに」の最初の見開きでいやな予感をさせて,ページが進むにつれてその予感を確信に変えていくスタイル。すごい。 4…

キット・イェーツ『生と死を分ける数学:人生の〈ほぼ〉すべてに数学が関係するわけ』草思社

生と死を分ける数学: 人生の(ほぼ)すべてに数学が関係するわけ作者:キット イェーツ,冨永 星 (翻訳)AudibleAmazon 奇をてらったタイトルだけど,中身はよくある感じ。一般的な読者の情感に訴えたいからか,各トピックをある個人のエピソード――たとえばチェル…

森毅『すうがく博物誌:美しい数学2+3』童話屋

すうがく博物誌 (美しい数学2+3)作者:森 毅童話屋Amazon 自分は何を読まされているんだろう,という気になる。 『悪魔の辞典』風とでもいえばいいのか,あいうえお順に並べられたさまざまな用語・概念・人物――「アキレスと亀」「エントロピー」「Q.E.D.」な…

デイヴィッド・サルツブルグ『「誤差」「大間違い」「ウソ」を見分ける統計学』共立出版

「誤差」「大間違い」「ウソ」を見分ける統計学作者:デイヴィッド・サルツブルグ共立出版Amazon もしかした本書内には統計に関して本質的で有益なものが含まれているのかもしれないけれど,自分のような不真面目な読者――斜め読みをするだけの――はそれを見い…

小笠英志『多様体とは何か:空間と次元から学ぶ現代科学の基礎概念』講談社(ブルーバックス)

多様体とは何か 空間と次元から学ぶ現代科学の基礎概念 (ブルーバックス)作者:小笠英志講談社Amazon この著者近影を見た瞬間に嫌な予感がしたんだけど,数ページ読み進めてその予感が確信に変わった。その数ページの中で「言葉の綾ですのでお気になさらずに…

東京大学教養学部統計学教室『統計学入門』東京大学出版会(基礎統計学, 1)

統計学入門 (基礎統計学Ⅰ)東京大学出版会Amazon アクチュアリー試験1次試験の参考著書として指定されているこの本,東京大学出版会らしいソツのない構成で,王道の入門書である。 417 統計学入門 (東京大学出版会): 1991|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

西成活裕『渋滞学』新潮社(新潮選書)

渋滞学 (新潮選書)作者:西成 活裕新潮社Amazon そうそう,わたしはこういうのが読みたかったんだよ! ↓こういうんじゃななくてね。 トム・ヴァンダービルト『となりの車線はなぜスイスイ進むのか?:交通の科学』早川書房 - Dribs and Drabs 著者がいうには…

小平邦彦『解析入門』岩波書店(岩波基礎数学選書)

解析入門 (岩波基礎数学選書)作者:小平 邦彦岩波書店Amazon のちに出た軽装版じゃなくて,自分にとってはこの基礎数学選書のやつが,小平の『解析入門』。デデキント切断についてこれほどしっかり描かれた日本語の教科書って他にあるんだろうか? まぁ高校生…

田村三郎『パラドックスの世界:星間・逆説の旅』講談社(ブルーバックス)

パラドックスの世界―星間・逆説の旅 (ブルーバックス 467)作者:田村 三郎講談社Amazon 「第一部:星間・逆説の旅――三田太郎の手記」となっていて,これが確か三田太郎という名前の孤児の誘拐されて異星人に数学を教えることになったという寓話で,さすがに子…

ダグラス・R・ホフスタッター『ゲーデル,エッシャー,バッハ:あるいは不思議の環』白揚社

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版作者:ダグラス・R. ホフスタッター白揚社Amazon 30年近くぶりに読み返してみて,この本は「同型対応」と「自己言及/作用」について書いた本なんだなぁと自分なりに思った.その中心はゲーデル…

ダレル・ハフ『統計でウソをつく法:数式を使わない統計学入門』講談社(ブルーバックス)

統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門 (ブルーバックス)作者:ダレル・ハフ講談社Amazon 内容的には標準的だと思うけど,よくぞここまで具体例を集めてきたな,という印象. 統計でウソをつく方法としては, 偏ったサンプルをとる 算術平均をとる(中…

小島寛之『完全独習ベイズ統計学入門』ダイヤモンド社

『シグナル&ノイズ』がベイズ推しだったので,読んでみた. *1 完全独習 ベイズ統計学入門作者:小島 寛之発売日: 2015/11/20メディア: 単行本(ソフトカバー) 数学の/初等確率論・統計学の知識があればサラッと読めるし,最初の数ページ(ベイズの公式を…

ネイト・シルバー『シグナル&ノイズ:天才データアナリストの「予測学」』日経BP社

これまたなんともダサいサブタイトルにしたもんだが(もともとは「why so many predictions fail but some don't」),めっちゃ示唆的。もっと早く読むべきだった。 シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」作者:ネイト・シルバー発売日: 2013/11/…

ジョージ・G・スピーロ『ポアンカレ予想:世紀の謎を掛けた数学者、解き明かした数学者』早川書房(ハヤカワ文庫)

ポアンカレ予想―世紀の謎を掛けた数学者、解き明かした数学者 (ハヤカワ文庫 NF 373 〈数理を愉しむ〉シリーズ)作者:ジョージ G.スピーロ早川書房Amazon ポアンカレ予想に関する本は数多くあって,なんでこれを買ったんだったかな。 ポアンカレ自身のエピソ…

David Joyner『群論の味わい : 置換群で解き明かすルービックキューブと15パズル』共立出版

群論の味わい -置換群で解き明かすルービックキューブと15パズル-作者:David Joyner共立出版Amazon 『ガロア理論の頂(いただき)を踏む』を眺めたあとだと,無味乾燥なテキストブックのようにしか見えなくて……。ルービックキューブの具体的な解法テクニッ…

石井俊全『ガロア理論の頂 (いただき) を踏む』ベレ出版

ガロア理論の頂を踏む作者:石井俊全ベレ出版Amazon いろいろな感想を抱くんだけど, そう,ガロア理論(を理解すること)ってなんとなく憧れるんであって,それを最終目標にして全体を構成するっていうのは,とてもいい という意味では,宮崎駿が『千と千尋…

ジョージ・G・スピーロ『ケプラー予想 : 四百年の難問が解けるまで』新潮社(新潮文庫)

ケプラー予想: 四百年の難問が解けるまで (新潮文庫―Science&History Collection)作者:ジョージ・G. スピーロ新潮社Amazon 「第12章 コンピューターとアルゴリズム」のあたりがいちばん面白かったかな。知らないことが多すぎる……。 410.4

ロビン・ウィルソン『四色問題』新潮社(新潮文庫)

一松信の本*1と読み比べるために,読んでみた。そして,一松信の本より遥かに良い,という印象を得た(全体的に,一松信の本は「可もなく不可もなく」だし「よくまとまっている」けど,面白さはない)。 四色問題 (新潮文庫)作者:ロビン ウィルソン新潮社Ama…

一松信『四色問題 : その誕生から解決まで』講談社(ブルーバックス)

解決までの経緯を過不足なくコンパクトにまとめているけれど,こういう本は早々に挫折する。 四色問題 どう解かれ何をもたらしたのか (ブルーバックス)作者:一松 信講談社Amazon

中村義作『パズルでひらめく補助線の幾何学 : "魔法の補助線"を見つけよう』講談社(ブルーバックス)

暇つぶしというか,頭の体操にはちょうどいい。 パズルでひらめく補助線の幾何学―"魔法の補助線"を見つけよう (ブルーバックス)作者:中村 義作講談社Amazon

エドワード・フレンケル『数学の大統一に挑む』文藝春秋

加藤文元『宇宙と宇宙をつなぐ数学』*1 の中の「ジグソーパズル」の話で登場していたこの本,なんとも面白かった。一般向けの本でここまで遠慮なく専門用語を使って,それでいて何かを感じとらせるのだから,すごい。本人の数学に対する「愛」もさることなが…

加藤文元『宇宙と宇宙をつなぐ数学:IUT理論の衝撃』KADOKAWA

「加藤先生ってば前戯がお上手,んもぉー,早くIUT理論ちょうだーい」,と思って読み進めた割には,肝心のIUT理論の箇所が短小でなんだか拍子抜けしたんですが,まぁしょうがないか。 宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃作者:加藤 文元KADOKAWAAmazon 「…