『シグナル&ノイズ』がベイズ推しだったので,読んでみた.

- 作者:小島 寛之
- 発売日: 2015/11/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
数学の/初等確率論・統計学の知識があればサラッと読めるし,最初の数ページ(ベイズの公式を面積図で図解する)を読めば,ベイズ統計学の本質は理解できる.
そういう意味では「小島さんうまいこと書きましたね」って感じなんだけど,初学者向けにできるだけ平易に書こうとしているだけに,首をひねらざるをえない記述が散見されるのも事実.
スタンダードな統計的推定では,一定のリスクを踏まえたうえで「**である」のような形式で結論を1つにしぼる.ベイズ推定では,「どちらもありいるが,**の可能性の方が高い」のような形式で,二股をかけた結論を導く.
とか.ここでは有意水準のことを「一定のリスク」って言ってるんだけど,ちょっと引っかかる.
あと終盤で天下り的にベータ分布を導入して,それをあとで「事前分布にベータ分布を設定すれば,事後分布もベータ分布になって好都合だから」と言ってるんだけど(事後分布と事前分布とが同じ分布になるような事前分布を「共役事前分布」と呼ぶ),
ベイズ推定では,推定したい確率モデルの共役事前分布を事前分布に使うのが通例となっている.
っていうのはめっちゃご都合主義的に思えるんだけど,それはいいとして,その理由として「2つが想像される」と筆者は述べてる.それは,
理由その1:事前分布と事後分布が同じ分布になれば,計算が著しく簡便になる.
理由その2:事前分布と事後分布が異なってしまうのは,哲学的に考えておかしいと思える.
って書いてて,確かに計算は簡単.期待値とか分散とかの公式が同じだから,パラメーターの値を変えればいいだけだし.しかし「その2」の方を「哲学的に」って言うのは乱暴な気がして,そもそも何らかの自称に対して何らかの確率分布が当てはまるって考えること自体おこがましいというか,この本でさんざん敵対的に語っているネイマン・ピアソン統計学的な考え方に思えるんだよね.
ということで,ベイズ統計学の意味合いを直感的に理解されてくれたことに対してこの本には一定の感謝をしつつ,ちゃんとした本を読みたくなった.

- 作者:イツァーク・ギルボア
- 発売日: 2012/06/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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