レイモン・クノー『文体練習』にインスパイアされた作品で,二番煎じで終わるのかなぁと思ったけど,そうでもなかった。
クノーのがひとりの男の物語のバリアントであるのに対して,こっちは三次方程式の解法のバリアント。そのテーマが上手いこと選ばれてるなぁというのが,じわじわ感じとられてくる。中には「色による」なんて意表をつかれるものもあるし,「モンテカルロ法による」というものもあるし,「表による」というのもあるし,「静電気力学による」というのもある。著者の知的な工夫がうかがえる。
ベースになる三次方程式は,「クノーの『文体練習』のベースになっているものがたりを代数幾何的に解読した結果に基づいて選ばれた」のだそうだ。
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