Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

サイモン・シン『数学者たちの楽園:「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』新潮社(新潮文庫)

サイモン・シンの本にしてはイマイチかな…。『ザ・シンプソンズ』に埋め込まれた数学ネタの解説およびその「中の人」たちの紹介,って感じの本なんだけど,説明のバランスが難しいというか,たとえばフェルマーの定理の説明なんか知ってる人には不要だし,しかし知らない人はこの程度の説明で理解できるかってのが微妙だし。(何年も前に本書の原著を買って眺めたときにも同じことをうっすら思ったけど,翻訳本を眺めてその考えが強化された)

その中で面白いのは「中の人」の考え方。

「数学的な証明のプロセスは,コメディーの脚本を書くプロセスと似たところがある。目的地にたどり着けるという保証がないところも似ているね。」

とか,

「実写ドラマは実験科学に似ている。役者たちは,それぞれの考えに沿って演技する。そうやって撮影されたシーンをつなげて,どうにか作品にするしかないんだ。一方,アニメは純粋数学に似ている。あるセリフにどんなニュアンスを含めるか,セリフ回しをどうするかまで,徹底的にコントロールできる。あらゆることがコントロール可能だ。アニメは数学者の宇宙なんだ」

とか。

778.77