Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

ニコラス・スミス『スニーカーの文化史:いかにスニーカーはポップカルチャーのアイコンとなったか』フィルムアート社

イノベーション,スポーツへの貢献,スポーツの大衆化,スニーカーのカルチャー化,スニーカーにまつわる犯罪と労働問題と,話はだんだん暗くなっていくんだけど,こりゃまたいい本に出会えたものだ……。『SHOE DOG』のあとに読むものとしては最高。

本の序盤は「文化史」前史というか,グッドイヤー氏のゴムの開発みたいな話から始まって,各メーカーが立ち上がるまで。アディとルドルフのダスラー兄弟が仲違いしてアディダスとプーマに分かれたのは知ってたけど,その引き金が戦争だったとは知らなかった。

ナイキに関してはナイトというよりバウワーマンの方により焦点が当てられている。ナイトのイントロダクションはこんな感じ。

二四歳の若者の多くがそうだろうが,フィル・ナイトは人生をどう歩むべきかわからずにいた。百科事典を売り歩いたこともあった。会計士として働いたこともあった。不本意ながら臨んだある企業の採用面接では,ポケットにハンカチと間違えて靴下を入れていて,面接中にそれを出して鼻をかんでしまい,散々な結果に終わった。何をすべきかとくに思いつかず,父親に金を借りて世界旅行へ出ることにした。

『SHOE DOG』では半ばロマンチックに描かれていた「ナイキ前夜」のナイトが,こんな感じで描かれる。(いいまとめだと思う)

ニューヨーカーが「スーツにスニーカー」で出勤するのは,1980年の交通局のストライキで地下鉄やバスの運行が停止したのがきっかけっていうのも興味深い。フィットネスブーム(特に女性の)をリーボックがうまく捉えたのに対してナイキはあくまでそれを無視しようとしたとは,『SHOE DOG』には絶対書かれないようなエピソードもたくさん出てくる。

本書の邦題はどうかと思うんだけど,「文化史」っぽくなってくるのは,このへんからかな。


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本書で言及されるCMとかがYouTubeでたくさん見つかるのは,なんともありがたい。


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