本書の核となるのは失敗の物語である。それは世界を屈服させ,資本主義の本質に疑問を投げかけた失敗だった。〔中略〕つまるところ,これは人間のドラマであり,自分たちは大きくてつぶれない(トゥ・ビッグ・トゥ・フェイル)と信じていた人々のあやまちの物語である。
プレーヤーが多いし,リーマンの上の人間たちについてはどいつもこいつもって感じがするし,AIGは「ウォール街の仲間入りをしたい(狭義には,投資銀行のように連銀の貸出枠を使えるようになること),勘違いした田舎者」って感じがして苦笑を禁じえない。
リーマンご一行が韓国のKDBとの交渉のためソウルに乗り込んだものの
会合で食事がでなかったので,リーマンの一行はホテルに戻るころには腹ぺこだった。なのに,ホテルで食べるものはたいてい不味かった。メニューでどうにか口に合うのはマグロだけで,滞在中ほとんど全員が毎日それを食べていた。
なんていうのは哀れさが見事に凝縮された秀逸なエピソードだし,
「リチャード・ファルドはリーマン,リーマンはリチャード・ファルド」サンダーズ・モリス・ハリス・グループのジョージ・ボールが言った。「会社のロゴを胸につけた経営者がいるとき……被害は甚大なものになります」
なんて名台詞も飛び出すし,
そのころオニール(注:スタンレー・オニール会長兼CEO)は気が滅入って引きこもることが多くなり,サウサンプトンのシネコック・ヒルズなどの有名ゴルフクラブで,平日,それもたいていひとりで一三ラウンドをまわるようになっていた。
なんてエピソードも面白いし,もう面白くて読むのやめられないですね。
338.253