Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

保坂和志『考える練習』大和書房

『ニヒリズムとテクノロジー』を読んで,「大人になったら誰しも自分の好きな哲学者をひとりぐらい持っているもんだと思っていたけどそうじゃないってことに気づいた」みたいなことを保坂さんが言ってたのを思い出して,それで保坂さんの本を久しぶりに読みたくなってこれを手に取ってみたんだけど,ガッカリしたな。

そもそもこの本の担当編集者であり保坂にインタビューをしている三浦岳氏が

たとえば3.11の後,エネルギー問題についていろいろな議論がありました。こんな悲惨な事故があった後では,原発なんて撤廃すべきだと思うのですが,テレビやネットで専門家の方が,「自然エネルギーだけでやっていけるなどと言っている人はまったく現実がわかてない」なんて言ってるのを見ると,そうなのかな,と思ってしまったりします。

という程度の人間で,それに対して保坂さんも

原発,是か非かっていうのは非に決まってるんだけど,そんな非に決まっていることを非だと言うのって,言えば言うほど,頭を使わなくなるような気がする。原発は非なんだけど,じゃあどうやって脱原発を実現させる流れを作るかって考えることは,原発は是か非かと考えることとは次元が違う。

なんて言ってて,これってこの本でいう「考える」の姿勢とは対極の位置にあるし,ただの盲目的な自己肯定にしか思えないんだよな。「特定のイデオロギーに凝り固まった,ある世代から上によくあるタイプ」にしか見えない。

読めば読むほど悲しくなる。

914.6

考える練習 (大和書房): 2013|書誌詳細|国立国会図書館サーチ