この〈しくみ〉シリーズ,読み終わったあとはその言語をやりたい気持ちが多かれ少なかれ出てくるのだけど,インドネシア語はそれがなかった……すまない……。
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1章 文字と発音のしくみ
インドネシア語はラテン文字(いわゆるアルファベット)を使って書き表すのです。なんでですかって? 歴史的な経緯など,話せば長くなるのでこの点については別のところに譲ります。
インドネシア語には母音が6つあります。ということは,この6つの母音を書き表すのに文字が一つ足りません。「基本的にローマ字読み」と言っておきながら困ったことになりました。でも,実はそんなに難しいことはありません。
lは英語でおなじみ(?)舌の先を上の歯または歯茎あたりにくっつける音です。(…)これに対しrは,いわゆる巻き舌の音です。威勢のいい「べらんめえ口調」に出てきそうな,舌がブルルルとふるえるやつです。特にkamar「部屋」やbesar「大きい」にあるような語の最後のrは気持ちいいぐらいによくふるえます。
インドネシア語では語の終わり(語末といいます)のm,n,ngの3つを区別します。
某社の旅行情報誌『じゃらん』は jalan「道」,ウルトラマンティガのテイガは tiga「(数字の)3」など,ネーミングの際に時々インドネシア話を用いることがあるようです。
インドネシアはかってオランダの植民地だったので,オランダ語の語彙がたくさん残っています。
2章 書き方と語のしくみ
国際的には「姓」を書き込む書類が多くありますが,インドネシア人はしばしばこの形式に頭を悩ませられます。2つでも3つでもすべて「自分個人の名前」であって「姓」には当てはまらないのですから,日本人にとっては姓があって当たり前ですが,姓がなくて当たり前のところもあるのです。
3章 文のしくみ
最初に出てきたiniは「これ」という語で,そのあとに orang utan 「オランウータン」が続いています。文と言っておきながらたったこれだけで,日本語の「は」や「です」にあたるものが見あたりません。「それでいいの?」と不安に思う人もいるかもしれませんが,これだけでれっきとした文になっているんです。/それじゃ「は」や「です」にあたるものは全然ないのかというと,文字で書くときには表れなくても,話すときにはイントネーションとして出てきます。
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1章 区別のしくみ
「この料理」とインドネシア語で言おうとするとき,日本語とは語順が逆だから,ええと,まず後ろにある「料理」を前に持ってきて,先にあった「この」を……といったぐあいに考えようとするかもしれませんが,それは面倒で頭の中がグチャグチャになってしまいそうです。それより,次のような発想をする,と考えてみてはどうでしょうか。/目の前に料理があったら,まず"大きな枠”すなわち「料理」と言っておき,それがどの料理かというと「これ」なんだよ,と。/このような順番を,文法的には《被修飾語一修飾語》の語順と言ったりしますが,それよりも"大きな枠”を先に言うんだ,と考えればいいでしよう。ちなみに,「この」の「の」と同じ働きは,このような語の並び方が果たしているといえます。
2章 “部品”のしくみ
3章 「てにをは」のしくみ
4章 数のしくみ
- 1 satu サトゥ
- 2 dua ドゥア
- 3 tiga ティガ
- 4 empat ゥンパッ(ㇳ)
- 5 lima りマ
- 6 enam ゥナム
- 7 tujuh トゥジュ(ㇷ)
- 8 delapan デゥらパン
- 9 sembilan スンビらン
5章 実際のしくみ
参考図書ガイド
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『インドネシア 島々に織り込まれた歴史と文化』小池続,三倍社,1998年,
一地方からの視点を手がかりにインドネシアの歴史・文化を読み解く。
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手前味噌のようで恐縮ですが……。