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1章 文字と発音のしくみ
スペイン語は「ローマ字読み」が基本です。しかも,母音はア,イ,ウ,エ,オの5個だけです。だから,日本語話者にはとても発音しやすい言語です。
スペイン語の発音で大事なことは,それぞれの話のどの部分を強く読むか,言い換えれば,どの部分にアクセントを置くかです。スペイン語はアクセントの位置によって意味を区別することが多いからです。
「母音で終わる語は後ろから2番目の母音にアクセント」が置かれます。それからCarlosのように-sで終わる語と,あと-nで終わる語も同様に後ろから2番目の母音にアクセント」が置かれます。
「-sと-n以外の子音で終わる語は最後の母音にアクセント」が置かれることになります。
Barcelonaにceが出ています。ceというつづりは日本語訳から[セ]という発音だと分かります。ceは「カ行」ではなく,舌を軽く噛んで発音する[セ]で,英語のthinkのthと似た音です。
- 普通のサ行:sa[サ]si[シ]su[ス]se[セ]so[ソ]
- 舌を噛むサ行:za[サ]ci[シ]zu[ス]ce[セ]zo[ソ]
ja [ハ] ji / gi [ヒ] ju[フ] je / ge[ヘ]jo[ホ](jやgは空気を擦り出すハ行)
発音は[セビジャ]で,最初は少し違和感を覚える方が多いかもしれません。lは1個だけなら英語と同じ「ラ行」ですが,Sevillaのように,2個並んだlは「ジャ行音」です。
最江,日本においてもスペイン詰から来たことばを耳にする機会が増えています。例えばサッカーのJリーグのチーム名がそうで,「横浜F・マリノス」「セレッソ大阪」「アビスパ福岡」などはスペイン語です。原語でつづると,マリノス→marinos「船乗り」(ちなみに「海」のことをmarといいます),セレッソ→cerezo「桜」,アビスパ→avispa「蜂」となります。
ボウリング大会でビリから2番目の人がもらえる賞のことを「ブービー賞」といいますね。実はこのboobyという英語もスペイン語のbobo「のろま」から来ています。
現在,世界の中でスペイン語を公用語としている国は20ヶ国あります。ヨーロッパではスペイン,アフリカでは赤道ギニアだけですが,ラテンアメリカでは18ヶ国がそうです。アジアの中ではフィリピンがかつてスペイン領でした。そのため,フィリピンの一部にまだスペイン語が残っています。スペイン語話者の総数は4億人を超えると言われ,これは中国語,英語に次いで世界で第3位です。
ロサンゼルス,ラスベガス,ネバダ,コロラド,フロリダなどの地名はもとはといえばスペイン語です。それぞれの地名には,Los Angeles「天使たち」,Las Vegas「沃野」, Nevada「雪が積もった」,Colorado「紅葉した」,Florida「花が咲いた」。という意味があります。なぜアメリカ合衆国にスペイン語の地名があるかと言えば,現在のアメリカ西部一帯はもともとスペイン領だったからです。
2章 書き方と語のしくみ
スペイン語圏の人名は「個人名+父方姓+母方姓」という順に並んでいます。「エンリケ」は個人名(=洗礼名),「グラナドス」は父親から受け継いだ苗字,「カンビニャ」は母親から受け継いだ苗字というわけです。ただし,普段は母方姓を省略して「エンリケ・グラナドス」のように「個人名+父方姓」だけを名のる人が多くいます。
英語で最後の4文字が-tionで終わる語は,たいていスペイン語で-ciónで終わることになります。
実は英単語の中で最後の2文字が-tyで終わるものの多くは,-tyを取り除いて-dadに変えるとスペイン語になります。
英語で(s+子音)で始まるものはスペイン語で必ずes-で始まっています。
スペイン語にはa-やal-で始まる語もたくさんあります。例えば,パエリャに欠かせない材料といえば,arroz「米」,aceite「油」, azafrán「サフラン」があります。どれもa-で始まっていますね。実はこれらは全部アラビア語起源の語です。パエリャはもともとアラブの料理だったのですね。「砂糖」のことはazúcarといいます。ここから最初のa-を取り,zをs に,をのに,cをgに変えてみてください。英語の sugarになりましたね。azúcar も sugarももとは同じでアラビア語起源の語です。「アルコール」はスペイン語でも英語でも alcoholですが,これももとはアラビア語です。このようにa-やal-で始まる語の多くはアラビア語に由来します(もちろん全部というわけではありません)。
子音で終わる語の次に母音で始まる語が来ると,音が連結することがよくあります。そのため,Buenos Aires はむしろ[ブエノサイれス]のように聞こえます。
「同じスペイン誰でもスペインとラテンアメリカでは違いがあるのですか?」/よく訊かれる質問です。しかし,とても難しい質問でもあります。もしも互いに通じないくらい違っているのなら,それはもはや「スペイン語」ではなく,「メキシコ語」や「アルゼンチン語」などと呼ぶべきでしょう。確かに,発音上の細かい地域差は認められますが,だからといってコミュニケーションに支障をきたすほどのものではありません。ただ,一部の語法に関してはっきりとした違いが見られます。
3章 文のしくみ
スペイン語は「語の並べ方は絶対この順序でなければならない」とは言い切れない言語だということになります。状況次第では語の順序がひっくり返ることだってあり得るのです。おおよその傾向として,聞き手にとって目新しい情報となる語句,言い換えれば,話題の中心となる語句を後回しにすることが多いようです。
スペイン語の特徴を次の3つにまとめてみましょう。
①くっ付く相手によって形が変わる:「きれいな」「新しい」「高い」などを意味する語は,どの語とくっ付くかによって形が変わります。しかも,それが1つか2つ以上かでさらに形が変わります。
②誰がいつするかで形が変わる:「話す」「読む」「作る」など,とにかく動作を表す語は「誰が」「いつ」したのかによって形が変わります。
③「てにをは」によって形が変わる:「私は」と「私に/を」で形が変わります。さらには,「彼」や「彼女」あるいは「彼ら」や「彼女ら」に至っては「~は」と「~に」と「~を」で形が変わります。
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1章 区別のしくみ
muchoという語は形容詞なのに絶対に名詞の前にしか来ないのです。このように名詞の前にしか来ない形容詞だってあります。
「おはよう」や「こんにちは」を複数で表現するのはなぜかスペイン語だけのようです。
名詞という本体の前には冠詞という帽子,後ろには形容詞という衣装といった感じですね。この(冠+名+形)のセットは,決して切り離すことができないまとまりです。発音するときは必ず一息で言います。
スペイン語の複数はいつも「2つ以上のもの」を指すとはかぎらず,状況によっては「男女一対のペア」を指すこともあると柔軟に考えてください。こうしたケースは,男女で意味が対をなす語の男性名詞の複数によく見られます。
casa nuevaは「新しい家」,すなわち「新築の家」のことですが,nueva casaという言い方もあります。ただしこれは「今度住む家」つまり単に「引越し先の家」を指します。だからnueva casaは築10年も経たものかもしれないわけです。
2章 人と時間のしくみ
まず,動詞と呼べる語は例外なく最後の文字が-rで終わっています。そして,その前の文字は-e-,-i-, -a-のいずれかです。つまり,最後の2文字が-er,-ir, -arの3種類しかないのです。
スペイン話は「完結してしまったこと」と「何度となく繰り返し行われたこと」を動調の形で区別するのです。
電話での「もしもし」。さて,どう言うのでしょう。スペイン語では電話を受けた側とかけた側で言い方が異なります。まず,電話を受けた人はDiga. と言い,かけた人はOiga. と言います。digaの基本形はdecir で「言う」の意味,oigaの基本形はoírで「聞く」の意味です。
3章 「てにをは」のしくみ
4章 数のしくみ
- 1 uno ウノ
- 2 dos ドス
- 3 tres トゥれス
- 4 quatro クアトゥろ
- 5 cinco シンコ
- 6 seis セイス
- 7 siete シエテ
- 8 ocho オチョ
- 9 nueve ヌエベ
- 10 diez ディエス
5章 実際のしくみ
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