文法性がないっていうだけで簡単に思える。エキゾチックなフィンランド語,ちょっとやってみたくなってきた…。
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フィンランド語はお隣のスウェーデン語やロシア語とも,あるいは英語などともまったく違うタイプのことばです。かつては日本語とフィンランド語の間に何か関係があるのではないかと言われたこともありました。そんなフィンランド語は面白さ満載のことばです。フィンランド語のことが少しでも分かれば,きっと「ことば」というものに対する視野も広がってくるはずです。フィンランドの魅力に迫るための出発点になる
1章 文字と発音のしくみ
ご覧のようにフィンランド語では,隣のロシア語で使う文字ではなく,英語などと同じ文字を使いますので,まずは安心してください。でも発音が難しいのだろう,と思いますか。実は,フィンランド語はいわゆる「ローマ字読み」をすれば,まちがいなく理解してもらえるはずです。
フィンランド語の語にはほかよりも強く発音する部分があります。これを「アクセント」と呼んでおきます。アクセントは必ず語の最初の母音に置かれますので,いちいちアクセントを覚えるといった苦労もありません。いつも,語の最初の母音を強めに発音してください。
その Helsinkiに出てくるsiは,日本語の[シ]と英語のsiの間くらいの音ですので[シ]と書くことにします。
フィンランド語では「彼」でも「彼女」でもhanと言うのです.
そもそも「サウナ」ということばがフィンランド語だということはご存知でしたか。フィンランド人たちはサウナで身体がほてると,夏なら湖や海へ飛び込み,冬なら雪の中を転げまわります。そうすると,不思議なことに,身体も心も生まれ変わったようになります。
フィンランド語ではフィンランドのことは「フィンランド」とは言いません。「フィンランド」のことは Suomi[スオミ]と言うのです。
フィンランド語では,外来語の最後にiをつけて母音で終わるようにするのがふつうなのです。
ちなみにフィンランド語とスウェーデン語とはまったく別の言語で,日本語と英語ほど違うかもしれません。
フィンランドには,北部を中心にサーミ人と呼ばれる先住民族が住んでいて,彼らはスウェーデン,ノルウェー,ロシアにも住んでいるのですが,彼らの話す言語がサーミ語です。そのサーミ語とフィンランド語とは遠い親戚の言語です.
2章 書き方と語のしくみ
フィンランドでは,略語などを除けば1文字だけの語はありません。
いっぽう,次に挙げる語がフィンランド語最長の語として,ギネスブックに登録されているそうです。/ lentokonesuihkuturbiinimoottoriapumekaanikkoaliupseerioppilas/61文字もありますが,10個の語を合体させたものです。日本語にすれば「航空機ターボジェットエンジン整備士助手下士官候補生」とでもなるのでしょうか。
3章 文のしくみ
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1章 区別のしくみ
フィンランド語では「持ち主」によって区別をするときに使う形,つまり「…の」に当たる形を作る印は-nという1文字です。簡単に言えば,語に-n をつけてしまえば「…の」という意味になるわけです。
ノルウェー語,デンマーク語,スウェーデン語などの北欧の言語をはじめ,ヨーロッパの多くの言語にある「文法性」というものがフィンランド語にはありません。ですから,名詞の「性」というもので苦労することはありません。/さらに,もうお気づきかもしれませんが,英語のa/anやtheのような「冠詞」と呼ばれるものもフィンランド語にはありません。
フィンランド語では-tをつければ複数形になります。
フィンランド語にはa,o,u,i,e,ä,ö,yの8つの母音があります。この8つの母音のうち,a,o,uのグループとä,ö,yのグループは仲が悪く,同じ語の中に一緒に出てくることはできません。残りのiとeはどちらのグループとも一緒になれます。
2章 人と時間のしくみ
フィンランド語では,辞書に載っている動詞の形は必ず-aか-äのどちらかの音で終わっています。
フィンランド語では未来のことも現在形を使って表現してしまうというわけです。
3章 「てにをは」のしくみ
このsuomeaのように,日本語の「...を」に当たる働きをする話を「目的語」と呼んでいます。つまり,-a/-äという印をつけると目的語になり,日本語の「…を」に当たる働きをするのです。
saunassaでは saunaに-ssaという印がついていますが,この-ssaが日本語の「…に(いる/ある)」とか「…で」に当たる印です。ですから saunassaは「サウナに/で」という意味になるわけです。
お気づきのように,日本語の「…で」に相当する印がフィンランド語にはいくつかあります。「…語で」と言うときには-ksiという印が使えますが,「バスで/列車で」のように交通手段の話をする場合には-ksiは使えません。
フィンランド語では「…を持っている」という意味の動詞はふつう使わず,その代わりに「…には~がある」という表現をします。そして「…には」に当たるのが-lla/-lläの形です。ですから上の例文は「私にはカメラがある」つまり「私はカメラを持っている」という意味になるわけです。
このように,フィンランド語には後置詞や前置詞と呼ばれるものがあります。後置詞や前置詞がこれまで見てきたいろいろな印と力を合わせ,豊かな「てにをは」の世界を作り出していくのがフィンランド語です。
本格的にフィンランド語を学習し始めれば,この「k/t/p 変化」は避けては通れません。でも,「フィンランド語は難しいぞ」などと言おうとしているわけではありません。本書でフィンランド語の大きな「しくみ」を理解したうえで取り組めば,「k/t/p変化」も恐るるに足らずです。とにかく大きな「しくみ」をしっかりとつかんでしまうことが大切です。
この例文は直訳すれば「私の中から教員が出てくる」ですが,フィンランド語ではこの表現で「…が~になる」という意味を表すことがよくあります。/こんなふうに-sta/-stäはとても働き者なので重宝する印です。
4章 数のしくみ
- 1 yksi ユクシ
- 2 kaksi カクシ
- 3 kolme コルメ
- 4 neljä ネルヤ
- 5 viisi ヴィーシ
- 6 kuusi クーシ
- 7 seitsemän セイッツェマン
- 8 kahdeksan カハデクサン
- 9 yhdeksän ユフデクサン
- 10 kymmenen キュンメネン
5章 実際のしくみ
サーミ語によるサービスも少しずつ充実してきて,写真のような移動図昔館が国境をまたいで行き来し,サーミ語の本の貸し出しを行なったりしています。「国境を越える多言語図書館バス」というわけです。北欧の国どうしは,ずっと以前からパスポートなしで行き来ができるようになっていますし,さまざまな分野で協力し合っています。
旅ではフィンランド話を勉強する人々も増えてきたので,フィンランドでもフィンランド語の学習書が多数出版されています。その中で,もはや古典としての地位を築いているのが下の写真の教科書です。/suomea suomeksi
参考図書ガイド
場面ごとに会話例がまとめられていて,内容も非常に充実
イラストいっぱいでとにかく楽しい。フィンランド旅行に必携
本格的な学習書:本腰を入れて勉強するのに最適,「中級編」もある。
初心者用でありながら,内容と解説はかなり本格的な学習書。
日本文化をフィンランド語で紹介するページもあり,なかなかの中身。
フィンランド語文法を31課に分けて解説。学習書としても参考書としても使える。
カラー版でCDもついているし,活字も大きめ。
左ページに文法解説,右ページに練習問題という構成を持つ 90課から成る学習書.
日常会話と文法解説,そして文法問題から構成された入門