「〈チェックリスト〉をビジネスの世界に応用できるかな？」という邪な気持ちで読んでみたけれど，そういう期待は裏切られた。ここに書かれているのは外科手術の話であり，建築現場の話であり，飛行機の操縦の話である。それらに共通するのは〈ひとつのミスが致命的〉という点であり，そういうところで〈チェックリスト〉は非常に有効なのだと思う。慢心を防ぐし，ケアレスミスを防ぐし，そして〈チェックリスト〉を確認することでコミュニケーションがとれてチームとしての統一感が増す。
著者がいうには「チェックリストはマニュアルではない」ということで，つまりそれは作業手順を事細かに記すものではないし，そういうものだと人はどうしても軽んじる（さらに，手術や飛行機の緊急事態のように一刻を争うときに，詳細すぎるものは役に立たないどころか有害だ）。そうではなく，内容を厳選し，常に改訂し，ユーザーがその有益性を本当に感じ取られるものが〈チェックリスト〉たりうるのだと。事実，手術前にチェックリストの使用をうながされた外科医たちは一部で面倒だと思う人がいる反面，実に93％の回答者が「自分が手術を受けるときには執刀医たちにチェックリストを使ってほしい」と答えたのだそうな。
494.2／141.51
