Twitterで〈女王陛下〉として生息している君塚先生である。君塚さんの著作は,ここでもかつて『立憲君主制の現在』について書いている*1し,それと本書とを併せて読めば,立憲君主制のもつパワー・意義が,エリザベス女王(正確にはエリザベス2世だが)で見事に体現されているのがよく分かる。
本書で特に印象的だったのは,コモンウェルスに対するエリザベス女王の想いと,歴代首相との関係性。トニー・ブレアは現実主義者として女王との関わりについても淡々と記しているらしいが,サッチャーとは完全にウマが合ったというわけではないにしろ,お互いがお互いをリスペクトしている様がよく分かった。
日本の皇室との繋がりも深く長い。しかも「ガーター勲章六七〇年の歴史のなかで,一度剥奪された名誉が復活した事例は,この昭和天皇ただひとり」なんだとか。
エリザベスにとってかけがえのない伴侶だったフィリップ(エディンバラ公)。
「女王の夫」というものは大変な職務である。「国王」(キング)の妻であれば「王妃」(クイーン)として夫と対等の関係に位置づけられ,尊称も「陛下」(マジェスティ)である。しかし「女王」(クイーン)の夫は「王配」(プリンス)にすぎず,尊称も「殿下」(ハイネス)と一段下になってしまう。
しかしフィリップはそれを甘受し,「つねに女王の後ろに立ち,彼女を支えることに徹してきたのである」。フィリップといえば数々の失言の印象しかなかったけれど,なかなかの男前だ。
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