Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

カート・アンダーセン『ファンタジーランド:狂気と幻想のアメリカ500年史』東洋経済新報社

前に上巻の半分ぐらい(つまり全体の1/4とか1/3ぐらい)を読んだだけだったけど,なぜか気になって再読してみた.

やがて私は,アメリカのこの厄介な傾向が,数十年どころか,数世紀にわたって形成されてきたことに気づいた.あらゆるタイプの幻想を好むこの国民性を理解するには,もっと遠い昔,アメリカのそもそもの始まりにまで時代をさかのぼる必要がある.

建国からかよ! ということで「500年史」になるわけだけど,たしかに少し読めば,著者が建国から書きたくなるのは理解できるとういか,そうするしか方法がない.なぜなら,「トクヴィルの言葉に従えば,新世界に来た最初のイングランド人の性質や行動が,生まれたばかりのアメリカ,揺籃期のわが国を形作ったと考えられる」からだ.

その「最初のイングランド人の性質」には「プロテスタントであること」も含まれるんだが,そのプロテスタント,あるいはルターは,「宗教的な権利を一般大衆に譲り渡すことで,決定的に個人の自由を広めた.そして,もう一つ重要な思想として,聖書に記されたイエスに関する超自然的な物語を信じられるかどうかが,立派なキリスト教徒になるための唯一の条件だと訴えた」のである.

ということで,

アメリカの歴史をレシピ風に説明するとこうなる.壮大な個人主義を極端な宗教と混ぜ合わせる.また,ショービジネスをほかのあらゆるものと混ぜ合わせる.その二つを鍋に入れて数世紀の間煮込む.そしてそれを,何でもありの1960年代とインターネット時代にくぐらせる.こうしてできたのが,私たちが現在暮らしているアメリカだ.そこでは,現実と幻想が危険なほどあいまいになり,異様な形で入り交じっている.

ということになるんだそうな.

なんかもう奇妙奇天烈なエピソードの連発でゲップが出そうになるというか,これらのエピソードが本当だとしても,それがアメリカ史の中でどれぐらいの位置づけなのか(決定的な位置を占めるのか,あるいは周辺的なエピソードを著者が恣意的に拾い上げているのか)が分からないので少し困惑するんだけど,まぁとにもかくにも圧倒的.

で,最後の章はドナルド・トランプで終わるわけだけど,まぁこれがこの本の執筆に至ったモチベーションというか,つまりは「ファンタジーランドの集大成としてのトランプ大統領選出」ってことになるんだろうけれど,著者としては当然このような状況を良いとは思っていなくて,それに対する抵抗方法を最後に提示し,そしてこれ以上状況が悪くならないようにという微かな(しかし力強い)希望をもって,本書は締められるのである.

いやー,恐ろしいわ.

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