これぞまさに自分が求めていた本だ。
「基礎編」では紋章の起原をといたあと,その単語(構成要素)と文法(組み合わせ方)を述べる。「応用編」では,紋章を使用・作成したい日本人に向けて,所有権や著作権,タブー,作画の発想を解説する。
著者による前書『ヨーロッパの紋章』は,「日本で初めての西洋紋章学文献」ということで関心を呼」び,同書に示された関心のなかで「各方面のデザイナーからのものが圧倒的に多かった」という。しかし同書は「紋章をデザインするという立場から見ると,具体的に何がタブーであり,どこに注意するかについては充分に応えるものではなかった」というのが,本書を著した背景だという。ということで,本書の特に「応用編」は,本書を実務的かつ独特なものにしている。
最近は紋章を模した日本のデザインはあまり見ない気がするけれど,本書が出た当時(1982年)はまだまだ西洋への憧れが強かったということなのだろうか。
288.6