非常に示唆的な本であった。
ざっくり言えば,マルチレベル選択――グループ内では利己的行動が生存戦略的に有利だが,グループ間では利他的行動が有利――をいろいろなレベルとケースに当てはめるというものだが,実践的な面に多く紙面が割かれているのが特徴的だ。
個人的にはその中で,成功するグループに当てはまる「八つの中核設計原理(Core Design Principles: CDPs)」に特に興味を惹かれた:
- 強いグループアイデンティティと目的の理解。グループメンバーは,リソースの限界や,あるいはグループの一員であることで与えられる権利と義務について熟知している。
- 利益とコストの比例的公正。メンバーの誰もが公正な分け前を手にしている。同時に,リーダーに特権が耐えられるのは,事後の説明が問われる特別な責任が課されるからである。
- 全員による公正な意思決定。多数決ではないにしても,公正と認識されるプロセスを通じて,誰もが意思決定に参加している。
- 合意された行動の監視。過失や違反の検知システム。
- 段階的な制裁。誰かが自分の仕事をしていない場合,通常は友好的注意を発する。だが必要とあれば,処罰や排除などのより厳しい処置をとる。
- もめごとの迅速で公正な解決。関係者全員が公正と見なす方法で,もめごとを解決する手段を持つ。
- 局所的な自律性。ひとつのグループがより大きな社会の内部に包摂されている場合,そのグループには上記のように,それ自体が社会的組織を形成し,独自の意思決定を下すに十分な権威が与えられなければならない。
- 多中心性ガバナンス。多数のグループからなる大規模社会では,グループ間の関係は,グループに所属するメンバー間の関係を統制するものと同じ規律に従わなければならない。これは,CDPがスケールに依存しないものでなければならないことを意味する。
子育てにも活かせるものがあって,それは
- いい行ないは褒める
- 悪い行ないは無視する
- さらに悪い行ないは罰する
というもの。
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