Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

Corrigan, "Advancements in Implementing Operational Risk, Stress Testing and Risk Appetite for ORSA"

日本アクチュアリー会 平成25年度例会 第6回
2014年3月5日
"Advancements in Implementing Operational Risk, Stress Testing and Risk Appetite for ORSA"
Joshua Corrigan, Principal, Milliman
(IAJの会員はここからダウンロード可能)

概要
  • ERMは,個別にリスクを分析する黎明期,ALMやバランスシート(しかしその大部分はファイナンシャルリスク)が意識されたERM1.0の時代を経て(ここまで Prediction の時代),現在はリスクを包括的にとらえるERM2.0の時代にいる.そして次のフェーズは,リスク文化とResilience(回復力)が意識されるERM3.0の時代となるだろう.
  • ORSAはグローバルスタンダードになりつつある.
    • リスクとソルベンシーの自己評価が,ビジネスディシジョンに結びついているか?
  • バランスシート上のリスクは相互に関連している.
    • リスクアペタイトをどのように細分化・具体化(cascade)し,意味のあるリスクリミットにつなげるか.
  • PLの構成要素を上から分解し(Sales, Distribution Costs, ,,, & Operating Profit Margins),それぞれに付随するリスクを把握する.
  • Prediction(複雑なモデルを構築して数字を作る)≠Explanation(リスクのドライバーは何で,結果に影響を与えるのは何か?)
  • "World Economic Forum; Global Risks Map 2013"
    • 複雑な体系を見るとき,各パーツを積み上げて検証したところで,全体を理解したことにはならない.
    • リスクと要因,そして結果のあいだには,動的な関連がある.線形相関のような(依存関係をはかる)単純な指標は,ミスリーディングになりうる.
  • ERM2.0とERM3.0が取り組む課題
  • リスクとは氷山のようなもの.目に見える部分には(その発現として)CrisisやEventsがあるが,見えない部分にはPatternsやSystem Structureがある.目に見える部分は伝統的なリスク管理フレームワークで対応できるが,目に見えない部分は「複雑系」として対応する.
  • Data is only part of the information set
    • 時に十分なデータがそろわない場合がある.その時は,expert judgement が必要.
  • Cognitive Analysis
    • リスクのドライバーとその結果との関係性を可視化
    • もっとも重要な要素を探す(東京の地下鉄で最も重要な駅を探すように)
  • 点推定を越えたデータの活用.
    • 従来型の点推定(e.g. ヒートマップ)ではなく,分布で考える.
  • Causal Modelling with Bayesian Inference
  • All scientific fields use Bayesian statistics, so why don’t we!
  • Causal Model とは何か?
    • 要素間の関係性を可視化.Causal facotrs はビジネス用語で表現される.
  • Unsupervised vs Supervised Techniques
    • データが潤沢にある場合と,そうではない場合.
  • データはソリューションの一部でしかない.分析することで価値が増える.
  • 線形相関(係数)は非線形関係を捕捉できないが,mutual information sharingなら可能.
余談

プレゼン終了後,周りにいた人たちの会話を耳にするに,「オペレーショナル・リスクまわりで何か話が聞けると思って来たけど,そうでもなかった」「図とかグラフとかいっぱいあったけど,何を意味するのかよく分からなかった」という感想を持つ人がいた.