Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

矢野龍彦, 金田伸夫, 織田淳太郎『ナンバ走り:古武術の動きを実践する』光文社(光文社新書)

これも懐かしくて,図書館で借りて再読してみた。出版時(2003年)は自分も古武術的な身体運用法,特に甲野善紀がいうような予備動作のない動き,「捻らず」「うねらず」「踏ん張らない」みたいな動き*1に興味を持っていた時期で,これも面白く読んだと思うけど,いま読むと懐疑的にならざるをえない。

それはまぁ冒頭で著者のひとりである織田が紹介している通り,古武術の動きそのものってよりはそれが持つ要素をいかに個々のスポーツに応用するできるかという発想が大事なわけで,しかもこういう本を読む程度の表層的な知識なんかすぐに「応用」できるわけもないというね。あと「応用」できたとしても,それが通用しやすい競技とそうじゃない競技があるわけで,この本で紹介されているバスケットボールなんかは「気配を消す」とか「スタミナを温存できるナンバ走り」といったものが応用しやすいと思うんだけど,止まっているボールを打つゴルフなんか別に気配を消す必要なんかないわけで。

そのゴルフ,本書の中で「中嶋常幸を復活させた名コーチ」として紹介されている石渡俊彦が「体を捻じらずに打つ」というのを提唱しているらいんだけど,記述を読んでもいまいち意味不明。

あと,「どうやったら速く走れるか」と問われたマイケル・ジョンソンのコメントが引用されてるんだけど,「いかに強く蹴るかではなく,次の足をいかに速く出すかだ」ってやつ,これ別に「ナンバ走り」のフレームワークじゃなくても出てくることというか,普通の運動生理学的なフレームワークの分析結果で出てくることだと思うので,こうやって引用さているのが違和感いだくんだよな。

まぁ所詮は教科書じゃないから……っていうと元も子もないんだけど,この新書レベルで包括的・体系的・科学的なことを求める方がおかしな話なのだけど,話半分ぐらいにとどめておくべきものかと。

780.1

ナンバ走り : 古武術の動きを実践する (光文社): 2003|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

*1:これ,いま見ると「脱がない」「舐めない」「触られない」みたいだな