Dribs and Drabs

ランダムな読書歴に成り果てた

落合博満『落合博満バッティングの理屈 : 三冠王が考え抜いた「野球の基本」』ダイヤモンド社

かつて『落合博満の超野球学』というタイトルで出ていたときに読んだことがある。ゴルフの参考にならないかと思い,再度手に取った。

ここに書かれている内容が現代的/科学的な観点からどれだけ有用なのか――特にトレーニングに関して――は分からない。しかし,「常識を疑う」姿勢や「基本に忠実」な姿勢,あるいは「練習では理想を追求する」ことや「本番で見つけた課題を練習で克服する」アプローチなどは,変わらず正しいだろうし,野球以外のどのスポーツ――だけでなく人間の営みのすべて――に当てはまるはずだ。

〈バッティング〉と〈ゴルフスイング〉は,似ている点もあれば違う点もある。違いはもちろん,バッティングが投げられたボールを打ち返すという受動的な動作であるのに対し,ゴルフスイングは止まっている球を打つという能動的な動作ということだ。これに関して落合は,「野球では打つ方が〈攻撃〉と言われるが,実際には投手が〈攻め〉で打者が〈受け〉」だと言っている。野球選手でゴルフをすると野手より投手の方が上手いらしいが,そのことに関係があるのだろうと,落合は述べている。

一方,〈バッティング〉と〈ゴルフスイング〉との類似点に目を向けると,いずれも〈構え〉があって〈トップ〉があって〈インパクト〉があって〈フォロースルー〉がある。落合いわく,正しい〈トップ〉が出来れば〈構え〉はなんでもよく,むしろ個々人の感性でいちばんうまくいくものを探り当てればよい。正しい〈トップ〉とは,投手側の腕(リードアーム)がまっすぐ伸びて捕手側の腕(トレイルアーム)の肘は「体の内側でたたむ」ことが大事だという――この「体の内側でたたむ」がいまいち不明確なのが残念だが。そして「体の中心線を動かさず」に回転し,〈インパクト〉では「ボールを押し込む」――手首をこねない――のが大事。〈フォロースルー〉は――意図的にやるものではないが――結果的にリードアームだけでバットを振りぬくかたちになるべきだと,落合はいう。

スイング修正のあるべきやり方について,落合はこう述べている:

  1. ある欠点を修正することで,現状より悪い形にしてはいけない
  2. 修正するのがたった1カ所だとしてもその修正方法は何通りも考えられる
  3. 修正する場合は,なるべくシンプルな方法が望ましい
  4. 変える前の形,変えたあとの形をしっかりと把握するために,できるだけ指導者と二人三脚で取り組むべき
  5. 修正後の”物足りなさ”に負けてはならない

783.7

落合博満バッティングの理屈 : 三冠王が考え抜いた「野球の基本」 (ダイヤモンド社): 2015|書誌詳細|国立国会図書館サーチ